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  • 令和元年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府(内閣府本府)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

遺棄化学兵器処理事業の委託費の精算に当たり、委託業務に従事した者の勤務実態を的確に反映した業務実施報告書に基づき委託費が算出されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)遺棄化学兵器廃棄処理事業費
部局等
内閣府本府
契約の概要
中国国内に遺棄されたままとなっている化学兵器の発掘・回収、廃棄処理等に係る各種の業務を実施するもの
契約の相手方
9会社等
検査の対象とした委託契約の件数及び委託費の支払額
66契約 526億1833万余円(平成26年度~30年度)
誤った業務実施報告書を基に精算された委託契約の件数及び委託費の支払額
36契約 137億1412万余円(平成26年度~30年度)
上記のうち過大となっていた支払額
2583万円

1 遺棄化学兵器処理事業の概要等

(1) 遺棄化学兵器処理事業の概要

内閣府本府は、「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」(我が国は平成7年9月に批准、9年4月に発効)、「日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」(両国政府が11年7月に署名)等に基づき、中華人民共和国(以下「中国」という。)において、中国政府の協力の下で、旧日本軍が第二次世界大戦終了時までに中国国内に持ち込み、戦後も遺棄されたままとなっているびらん剤や嘔吐剤を含む砲弾等の化学兵器(以下「遺棄化学兵器」という。)の発掘・回収、廃棄処理等を行う遺棄化学兵器処理事業を実施している。

そして、内閣府本府は、日本国内の企業等(以下「受託者」という。)と契約を締結し、遺棄化学兵器の発掘・回収、廃棄処理等の業務を委託している(以下、委託した業務を「委託業務」という。)。

(2) 委託契約の精算

委託契約書によれば、受託者は、委託業務の完了後又は四半期ごとに、業務実施報告書、領収書等を添付した支出状況報告書等を内閣府本府に提出することなどとされており、内閣府本府は、提出された支出状況報告書等を審査した上で支払額を確定して、委託費の精算を行うこととされている。

内閣府本府及び受託者は、委託業務に要した経費を、委託業務に従事した者(以下「従事者」という。)に係る人件費、人件費に一定の率を乗ずるなどして算出する一般管理費等に区分することにしており、このうち、人件費については、従事者ごとに定められた日額単価に、従事者が委託業務に従事した日数(以下「従事日数」という。)を乗ずるなどして算出された額で精算することにしている。

そして、業務実施報告書には、従事者ごと及び月ごとに、委託業務に従事した業務実施日、業務内容等の勤務実績を記載することになっており、これらの記載内容に基づき、各従事者の月ごとの従事日数を算出することにしている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、委託費の精算は従事者の勤務実態を反映した適正なものになっているかなどに着眼して、委託契約のうち、26年度から30年度までの5年間に委託費の支払額が計5億円以上となっている9受託者(注1)との委託契約66契約(支払額計526億1833万余円)を対象として、内閣府本府及び9受託者において、委託業務の実態を聴取するとともに、会計帳簿、支出状況報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(注1)
9受託者  ユーロフィン日本環境株式会社、株式会社本間組、松花江(佳木斯地区)試掘事業のうち水中金属物探査に係る調査業務コンソーシアム、日本エマージェンシーアシスタンス株式会社、フジミコンサルタント株式会社、株式会社神戸製鋼所、株式会社JPM(平成28年6月23日以前は株式会社ジェイピーエム)、川崎重工業株式会社、一般社団法人シーソック

(検査の結果)

業務実施報告書に記載された従事者ごとの業務実施日及び業務内容について、従事者の出勤状況に関する書類等を基に検査したところ、26年度から30年度までの間に7受託者(注2)と締結した委託契約36契約(支払額計137億1412万余円)において、受託者は、従事者が休暇を取得したり、委託業務以外の用務に従事したりするなどしていて、実際には委託業務に従事していないにもかかわらず、誤って業務実施報告書にこれらの日を業務実施日として記載していた。

そして、内閣府本府は、業務実施報告書に従事者の出勤状況に関する書類を添付させておらず、従事者が休暇を取得するなどしていて委託業務に従事していないのに業務実施日とした誤った業務実施報告書を基に算出された従事日数により委託費を精算していた。このため、委託費計2583万余円が過大に支払われていた。

(注2)
7受託者  ユーロフィン日本環境株式会社、株式会社本間組、松花江(佳木斯地区)試掘事業のうち水中金属物探査に係る調査業務コンソーシアム、日本エマージェンシーアシスタンス株式会社、フジミコンサルタント株式会社、株式会社神戸製鋼所、株式会社JPM(平成28年6月23日以前は株式会社ジェイピーエム)

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

内閣府本府は、平成27年4月に、「中国遺棄化学兵器の発掘・回収及び廃棄処理事業に伴うモニタリング・分析に関する技術的支援等業務に関する業務委託契約」をA社と締結している。A社は、委託費の精算に当たり、従事者ごとの日額単価に業務実施報告書から算出した従事日数を乗ずるなどして人件費を算出し、当該人件費等に一定の率を乗じて算出した間接費等を加えた額を支出状況報告書に記載し、内閣府本府へ提出していた。そして、内閣府本府は、提出を受けた支出状況報告書等を審査し、委託費1億5256万余円を支払っていた。

しかし、A社は、従事者が休暇を取得したり、委託業務以外の用務に従事したりしていて委託業務に従事していないにもかかわらず、これら37日分を業務実施日として誤って業務実施報告書に記載していた。そして、内閣府本府は、業務実施報告書に従事者の出勤状況に関する書類を添付させておらず、誤った業務実施報告書から算出された従事日数を基に委託費を精算していた。

したがって、従事者の勤務実態を反映した適切な業務実施報告書から算出された従事日数を基に委託費を算定すると1億4964万余円となり、委託費291万余円が過大に支払われていた。

このように、業務実施報告書が従事者の勤務実態を反映したものとなっておらず、委託費が過大に支払われていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、受託者において業務実施報告書が勤務実態を的確に反映したものとなっているかについての確認が十分でなかったこと、また、内閣府本府において受託者に、業務実施報告書の提出に当たって、業務実施報告書に従事者の出勤状況に関する書類を添付させておらず、委託費の額の確定に係る審査が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、内閣府本府は、令和2年9月に、7受託者から過大となっていた委託費を返還させた。また、同年4月に、受託者に対して文書を発して、業務実施報告書の提出に当たっては、業務実施報告書と従事者の出勤状況に関する書類との照合を確実に行うことを周知徹底するとともに、業務実施報告書に従事者の出勤状況に関する書類を添付させるなどして、業務実施報告書を十分に確認することとする処置を講じた。