復興庁は、被災者支援総合交付金実施要綱(平成28年復本第437号等)、被災者支援総合交付金交付要綱(平成28年復本第436号)等に基づき、東日本大震災の被災者を取り巻く環境の変化に対応することなどにより、被災者の心身の健康の維持向上、生活の安定等に寄与することを目的として、都道府県、市町村その他法人等の被災者支援事業計画の作成主体に対して、同計画に基づく被災者支援総合事業に要する経費を対象に、被災者支援総合交付金(以下「交付金」という。)を交付している。被災者支援総合事業には、東日本大震災の被災地域における被災者支援の新たな活動主体の参画、支援者間の連携強化等を図る取組等を実施する被災者支援コーディネート事業(以下「コーディネート事業」という。)等がある。
被災者支援総合交付金交付要綱によれば、交付金の交付対象経費である賃金及び報酬(以下「賃金等」という。)について、コーディネート事業等の交付対象事業だけでなく他の業務にも充てられている部分があれば、交付対象事業に係る分のみを案分するなどして計上することとされている。そして、復興庁は、コーディネート事業に係る賃金等の額について、コーディネート事業に従事する者(以下「従事者」という。)が事業主体と締結した雇用契約において定められた基本給等の額に基づく時間単価(以下「給与単価」という。)を用いて、給与単価にコーディネート事業に従事した時間数を乗じて算定するなどすることにしている。
一般社団法人みやぎ連携復興センター(以下「法人」という。)は、自らの活動の一環として平成28年度から30年度までの間にコーディネート事業を事業費計62,488,998円(交付対象事業費計62,468,998円)で実施したとする実績報告書等を復興庁に提出し、同庁はこれらを審査して、額の確定を行い、交付金計61,369,000円を交付している。
本院は、合規性等の観点から、交付金の交付額の算定が適正に行われているかなどに着眼して、法人が実施したコーディネート事業について、法人において交付金の交付申請書、実績報告書、雇用契約書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
法人は、コーディネート事業に係る28年度から30年度までの賃金等の額について、外部の者から事業を受託するなどした場合に適用する謝金等に係る内部規程に基づく時間単価(以下「謝金単価」という。)にコーディネート事業に従事した時間数を乗じて算定し、復興庁に提出した実績報告書等に従事者延べ30人分計39,585,952円を計上していた。
しかし、上記従事者の中には雇用契約等に基づき基本給等を支払っている者がおり、これらに係る賃金等の額については、自らの活動の一環として実施しているコーディネート事業に係る経費であることから、給与単価を用いるべきであったのに、法人は誤って謝金単価を用いて算定していた。また、従事者のうち委託契約に基づき委託費を支払っている者に係る賃金の額については、その者がコーディネート事業以外の業務にも従事していたことから、委託費の支払額をコーディネート事業に従事した時間数に基づく割合で案分すべきであったのに、誤って謝金単価にコーディネート事業に従事した時間数を乗じて算定していた。
したがって、雇用契約等に基づき基本給等を支払っている者については給与単価を用いることにより、また、委託契約に基づき委託費を支払っている者についてはコーディネート事業に従事した時間数に基づく割合で案分することにより賃金等の額を算定して、適正な交付対象事業費を算定すると計45,203,626円となり、前記の交付対象事業費62,468,998円との差額17,265,372円が過大に精算されていて、これに係る交付金相当額計16,167,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、法人においてコーディネート事業に係る交付金の交付額の算定についての理解が十分でなかったこと、復興庁において実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。