1件 不当と認める国庫補助金 17,690,000円
先進的情報通信技術実用化支援事業費補助金(以下「補助金」という。)は、先進的情報通信技術実用化支援事業費補助金交付要綱(平成26年総国技第68号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、情報通信分野における民間の事業化ノウハウ等の活用による事業育成支援と研究開発支援を一体的に推進することにより、研究開発成果の具現化を促進し、もって新事業の創出に資することを目的として、事業化に向けた実証のための研究開発等を行う事業主体に対して、事業の実施に要する経費の全部又は一部を国が補助するものである。そして、交付要綱によれば、補助金の交付の対象は、物品費、通信運搬費等の経費で事業に直接必要なものに限ることなどとされている。
本院が8会社において会計実地検査を行ったところ、1会社において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 |
補助事業者 (事業主体) |
補助事業 |
年度 |
補助対象事業費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象事業費 | 不当と認める国庫補助金相当額 | 摘要 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(16) | 総務本省 |
株式会社
Liquid |
ICTイノベ
ーション創出チャレンジプログラム |
26 | 52,467 | 34,978 | 26,535 | 17,690 | 過大交付 |
この補助事業は、株式会社Liquid(令和2年3月2日以降は株式会社ELEMENTS。以下「会社」という。)が、1000万人規模の多人数の本人認証を指紋情報のみで高速に行える指紋認証エンジンの研究開発を目的として、国内のテーマパークや海外のホテル等において、指紋認証により料金の決済を行うなどの実証実験等を行うための機器を購入するなどしたものである。
会社は、実証実験に係る計画において、平成27年度に飲食店のレジやホテルの客室等に指紋認証装置を設置することなどとして、26年度に指紋認証装置2,000台(購入金額29,000,000円)を購入していた。
しかし、会社は、指紋認証装置の購入前に上記実証実験の実現可能性等に関して費用面や実施環境面での検討等を十分に行っておらず、同装置の購入後に、国内のテーマパークにおいて指紋認証装置の設置に多額の費用が発生することや、実証実験の予定国において指紋認証により料金の決済を行うのに必要な環境が十分に整っていないことなどが判明するなどした。このため、会社は、実証実験の規模を大幅に縮小しており、その結果、実証実験で使用されるなどしていた指紋認証装置は、2,000台のうち、実証実験箇所数等に照らして最大でも170台であり、残りの1,830台は使用されていなかったと認められた。
したがって、上記の指紋認証装置1,830台(購入金額26,535,000円)については、実証実験等において使用されておらず、これに係る国庫補助金相当額17,690,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、会社において実証実験の実施に関する検討等が十分でなかったこと、総務本省において会社に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。