総務省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)に基づき、普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があるなどの地方団体に特別交付税を交付している。
特別交付税の額の算定方法は、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号。以下「省令」という。)において、特別の財政需要として算定の対象となる事項(以下「算定事項」という。)ごとに定められている。算定事項には、地方バス路線の運行維持に要する経費(以下「バス経費」という。)、集落対策に要する経費(以下「集落経費」という。)、地方創生の推進に要する経費(以下「地方創生経費」という。)等がある。
地方交付税法等に基づき、市町村は、当該市町村に該当する算定事項ごとに、特別交付税の額の算定に用いる資料等(以下「算定資料」という。)を作成して、都道府県に提出することとなっており、都道府県は、管内市町村から提出された算定資料について、審査を行い総務省に送付するとともに、各市町村に交付すべき特別交付税の額を算定して、当該算定額を総務省に報告することとなっている。そして、総務省は、都道府県から報告を受け、各地方団体に交付すべき特別交付税の額を算定して決定し、交付することとなっている。
省令、算定資料の記載要領等(以下「省令等」という。)によれば、特別交付税の額の算定は、市町村が負担する額に基づくこととされ、国庫補助金等の特定財源は控除することなどとされている(以下、市町村が負担する額として算定資料に記載され、特別交付税の額の算定対象になる経費を「市町村負担額」という。)。市町村負担額のうち、地方創生経費に係るものについては、他の算定事項において特別交付税が措置される経費を除外することとされている。
そして、総務省は、鹿児島県鹿児島市に対して、平成28年度2,304,525,000円、29年度2,376,876,000円、計4,681,401,000円の特別交付税を交付している。
本院は、合規性等の観点から、特別交付税の額が適正に算定されているかなどに着眼して、総務本省、鹿児島県及び鹿児島市において、28、29両年度に同市に交付された特別交付税を対象として、算定資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、鹿児島市は、バス経費及び集落経費に係る算定資料の作成に当たり、バス経費に係る市町村負担額を28年度203,504,000円、29年度212,450,000円、集落経費に係る市町村負担額を28年度48,711,000円、29年度54,658,000円としていた。そして、同市は、これらの市町村負担額に、同市が路線バス事業者等に対して路線ごとに支出する補助金等の経費の額及び地域連携コーディネーターを設置するために支出する報酬等の経費の額(以下、これらを合わせて「両支出額」という。)をそれぞれ含めていた。
しかし、同市は、内閣府の国庫補助金である地方創生推進交付金の交付対象事業費にも、両支出額の一部を含めており、これに係る交付金相当額として、28年度66,013,000円、29年度15,164,000円の交付決定をそれぞれ受けていたのに、特定財源として控除すべき当該交付金相当額(28年度はバス経費に係る54,103,000円及び集落経費に係る11,910,000円の計66,013,000円、29年度は集落経費に係る15,164,000円)を控除していなかった。
また、同市は、地方創生経費に係る算定資料の作成に当たり、市町村負担額を28年度69,598,000円、29年度33,286,000円としていたが、両支出額から上記の交付金相当額を除いた額については、バス経費又は集落経費の市町村負担額に含まれているのに、これらを地方創生経費の市町村負担額にも重複して含めるなどしており、市町村負担額が28年度66,013,000円、29年度18,279,000円過大となっていた。
したがって、前記の控除していなかった特定財源の額及び上記の過大となっていた額を市町村負担額から除くなどして適正な特別交付税の額を算定すると、28年度2,213,950,000円、29年度2,352,207,000円となり、それぞれ前記の特別交付税交付額との差額90,575,000円及び24,669,000円、両年度計115,244,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において省令等の理解及び算定資料の確認が十分でなかったこと、同県において算定資料の審査が十分でなかったことなどによると認められる。