3件 不当と認める国庫補助金 20,349,000円
学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。
交付金の交付額は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等によれば、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額の合計額と、交付対象事業に要する経費の額(以下「交付対象工事費」という。)に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することとされている。このうち、配分基礎額については、配分基礎額を算定する際の基礎となる面積(以下「配分基礎面積」という。)を算定して、これに交付対象事業の種別に応じて定められた単価を乗ずるなどの方法により算定することとされている。
交付要綱によれば、交付対象事業は、小学校、中学校等の建物で構造上危険な状態にあるもの(危険建物)の改築事業(以下「危険改築事業」という。)、教育を行うのに著しく不適当な小学校、中学校等の建物で特別の事情のあるもの(不適格建物)の改築事業(以下「不適格改築事業」という。)、小学校、中学校等の建物等の大規模改造で、教育内容及び方法の多様化等に適合させるための建物の内部改造に係る工事等の質的整備を行う事業(以下「大規模改造(質的整備)事業」という。)等とされている。
交付対象事業のうち、危険改築事業及び不適格改築事業について、「学校施設環境改善交付金の配分基礎額の算定方法等について」(平成27年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等(以下「27年通知等」という。)によると、改築事業等に併せて施設の解体及び撤去事業を実施する場合には、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算することとなっている。そして、交付申請時に配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時に契約後の金額により再計算することとなっている。
交付対象事業のうち、大規模改造(質的整備)事業について、27年通知等によると、自動ドア、スロープ等の障害児等対策施設整備工事の配分基礎額は、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定することとなっており、交付申請時に算定した配分基礎額については、実績報告時に契約後の金額により再計算することとなっている。また、27年通知等によると、トイレ改修工事の配分基礎額は、改修工事を実施する部分の床面積に基づき算定した配分基礎面積にトイレ改修工事に係る単価を乗じて算定することとなっていて、配分基礎面積は、同大臣から内定を受けた施設整備計画における事業全体面積のうちの交付対象面積とすることなどとなっている。そして、「学校施設環境改善交付金に係る施設整備計画の様式について」(平成27年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によれば、事業全体面積から交付対象面積を差し引いた残りの面積を交付対象外面積とすることとされており、工事費についても、面積の考え方と同様の取扱いをすることなどとされている。したがって、トイレ改修工事を実施する場合、配分基礎面積を超える面積分の工事費については、交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外して交付対象工事費を算定する必要がある。
本院が、13府県及び113市町村の計126地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、3府県の3市において、施設の解体及び撤去費等を契約後の金額により再計算せずに配分基礎額を算定したり、配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定したりしていたため、配分基礎額又は交付対象工事費が過大に算定されており、交付金計20,349,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、3市において交付金の交付額の算定方法についての理解が十分でなかったこと、3府県において3市から提出された実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
茨城県常陸大宮市は、平成27、28両年度に、美和小学校の不適格改築事業等3事業を実施して、交付金計266,703,000円の交付を受けていた。
同市は、同小学校の不適格改築事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去事業を併せて実施することから、交付申請時に、業者から提出された見積金額に基づき算定した施設の解体及び撤去費42,660,000円を配分基礎額に加算しており、実績報告時も同様としていた。
しかし、配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時に、契約後の金額により再計算する必要があった。
そこで、前記の施設の解体及び撤去費を契約後の金額により再計算すると38,865,000円となる。
したがって、配分基礎額に加算する施設の解体及び撤去費を38,865,000円に修正するとともに他の2事業において見受けられた同様の誤りを修正して交付金の交付額を算定すると計258,657,000円となることから、交付金計8,046,000円が過大に交付されていた。
<事例2>
佐賀県鳥栖市は、平成28年度に、田代中学校の大規模改造(質的整備)事業等3事業を実施して、交付金68,238,000円の交付を受けていた。
同市は、同中学校の大規模改造(質的整備)事業の実施に当たり、実績報告時に、事業全体面積189m2分に係るトイレ改修工事に要した経費38,286,000円を交付対象工事費に計上していた。
しかし、施設整備計画における交付対象面積とされている配分基礎面積51m2を超える面積138m2分の工事費については、交付対象外工事費として、事業全体の工事費から除外して交付対象工事費を算定する必要があった。
したがって、当該交付対象外工事費を除外して配分基礎面積51m2に基づく適正な交付対象工事費10,331,000円により交付金の交付額を算定すると58,826,000円となることから、交付金9,412,000円が過大に交付されていた。
以上を部局等別に示すと次のとおりである。
部局等 |
補助事業者 (事業主体) |
交付対象事業の種別 |
年度 |
交付金の交付額
|
不当と認める交付金の交付額 |
摘要 |
|
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千円 | 千円 | ||||||
(33) | 茨城県 |
常陸大宮市 | 危険改築事
業、不適格改築事業 |
27、28 | 266,703 | 8,046 | 施設の解体及び撤去費を契約後の金額により再計算せずに配分基礎額を算定していたもの |
(34) | 京都府 |
八幡市 |
大規模改造
(質的整備)事業 |
28、29 | 39,687 | 2,891 | 障害児等対策施設整備工事に要した経費を契約後の金額により再計算せずに配分基礎額を算定していたもの |
(35) | 佐賀県 |
鳥栖市 |
同 | 28 | 68,238 | 9,412 | 配分基礎面積を超える面積分の工事費を事業全体の工事費から除外せずに交付対象工事費を算定していたもの |
(33)―(35)の計 | 374,628 | 20,349 |