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(7) 義務教育費国庫負担金が過大に交付されていたもの[5府県](37)―(41)


5件 不当と認める国庫補助金 65,543,237円

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県又は政令指定都市(平成28年度以前は都道府県。以下「都道府県等」という。)に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県等の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書及び第三条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。28年度以前は「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県等ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。

算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部(以下「小中学部」という。)の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。

このうち、算定基礎定数は、都道府県等ごとに当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注1)等を基礎として教職員の定数を算定し、更に「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)により臨時的に任用される者等の実数を加えるなどして算定することとなっている。

また、特別支援学校については、義務教育である小中学部のほかに幼稚部と高等部を置く学校があるため、特別支援学校に勤務する全ての教職員の給与及び報酬等に要する経費を算定し、これに義務制率(注2)を乗ずるなどして小中学部に係る実支出額を算定することとなっている。

(注1)
標準学級数  標準法に規定する学級編制の標準により算定した学級数
(注2)
義務制率  「小中学部の標準学級数の合計」を「小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計」で除して求めた率

本院が、14府県及び5政令指定都市において会計実地検査を行ったところ、5府県において、算定総額の算定に当たり算定基礎定数の算定が過大となっていたり、実支出額の算定が過大となっていたりしていた。これらの結果、負担金計65,543,237円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5府県において、算定基礎定数及び義務制率の算定方法についての理解並びに算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。

ア 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの

算定基礎定数の算定に必要な小中学校の標準学級数については、小学校の引き続く二つの学年の児童数の合計数が16人以下である場合若しくは児童の在籍しない学年の前後の学年の児童数がいずれも8人以下である場合(いずれも第1学年を含む場合を除く。)、又は中学校の引き続く二つの学年の生徒数の合計数が8人以下である場合は、当該二つの学年の児童生徒を1学級に編制して算定することとなっている。また、算定基礎定数の算定に必要な特別支援学校の標準学級数については、児童生徒が、文部科学大臣の定める障害(以下「障害」という。)を二つ以上併せ有しているか否かにより、当該児童生徒を単一障害学級(注3)又は重複障害学級(注4)の対象児童生徒として整理した上で、重複障害学級に編制する二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が3人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定することとなっている。

4府県において、算定基礎定数の算定に当たり、次の①から③までの事態により、算定総額が過大に算定されていた。

  • ① 小中学校の標準学級数の算定において、小学校の引き続く二つの学年の児童数の合計数が16人以下であったり、児童の在籍しない学年の前後の学年の児童数がいずれも8人以下(いずれも第1学年を含む場合を除く。)であったり、中学校の引き続く二つの学年の生徒数の合計数が8人以下であったりしているのに当該二つの学年の児童生徒を1学級に編制しておらず、標準学級数を1学級とすべきところを2学級に編制していた事態 2県
  • ② 特別支援学校の標準学級数の算定において、児童生徒が障害を二つ以上併せ有しているのに単一障害学級の対象児童生徒として整理したり、二つ以上併せ有しないのに重複障害学級の対象児童生徒として整理したりなどしていた事態 1県
  • ③ 特別支援学校の重複障害学級の標準学級数の算定において、重複障害学級に編制する二つ以上の学年の児童数の合計数が3人以下であるのに当該複数学年の児童を1学級に編制しておらず、標準学級数を1学級とすべきところを2学級に編制するなどしていた事態 1府
(注3)
単一障害学級  障害を二つ以上併せ有しない児童生徒で編制する学級
(注4)
重複障害学級  障害を二つ以上併せ有する児童生徒で編制する学級

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例(②の事態)

秋田県は、平成24年度において、教職員の算定基礎定数を小中学校6,322人、特別支援学校の小中学部617人とし、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に15,169,665,000円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同県は、上記算定基礎定数の算定に当たり、特別支援学校の小中学部の標準学級数を218学級とすべきところ、児童生徒が障害を二つ以上併せ有しているか否かの判断を誤り、児童生徒が障害を二つ以上併せ有しているのに単一障害学級の対象児童生徒として整理したり、二つ以上併せ有しないのに重複障害学級の対象児童生徒として整理したりなどしていたため、220学級と算定していた。

したがって、適正な標準学級数により適正な算定基礎定数を算定すると特別支援学校の小中学部は603人となり、これに基づき適正な負担金の額を算定すると15,141,970,639円となることから、27,694,361円が過大に交付されていた。

また、27、28両年度においても同様の事態が見受けられた。

イ 実支出額の算定が過大となっていたもの

1県において、特別支援学校の小中学部の実支出額の算定に当たり、「小中学部の標準学級数の合計」を「小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計」で除すべきところ、「小中学部の実学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計」で除していたため、義務制率が過大に算定され、実支出額が過大に算定されていた。

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
算定総額又は実支出額 左に対する負担金交付額 不当と認める算定総額又は実支出額 不当と認める負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(37)
秋田県
秋田県
24、
27、28
132,857,845 44,285,878 113,738 37,912 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(ア②の事態)
(38)
茨城県
茨城県
29 116,965,811 38,988,603 13,118 4,372 同(ア①の事態)
(39)
千葉県
千葉県
29 170,435,501 56,811,833 43,515 14,505 同(ア①の事態)
(40)
京都府
京都府
29 46,525,079 15,508,359 5,869 1,956 同(ア③の事態)
(41)
徳島県
徳島県
29 34,709,462 11,569,116 20,388 6,796 実支出額の算定が過大となっていたもの(イの事態)
(37)―(41)の計 501,493,700 167,163,793 196,629 65,543