私立高等学校等経常費助成費補助金(教育改革推進特別経費)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)等に基づき、私立学校の健全な発達に資することを目的として、都道府県が私立学校における教育に必要な経常的経費について補助する場合に国がその一部を補助するものである。
私立高等学校等経常費助成費補助金(幼稚園等特別支援教育経費・過疎高等学校特別経費・教育改革推進特別経費・授業料減免事業等支援特別経費)交付要綱(平成11年文部大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等によれば、同補助金の補助の対象となる事業には、預かり保育推進事業(以下、当該事業に係る同補助金を「預かり保育補助金」という。)等がある。
預かり保育推進事業については、交付要綱等によれば、私立の幼稚園又は幼保連携型認定こども園(以下、これらを合わせて「私立幼稚園等」という。)において、教育課程に係る教育時間の終了後等に希望する者を対象に行う教育活動(以下「預かり保育」という。)の実態があり、都道府県がその状況を確認した上で、当該私立幼稚園等に対して預かり保育に係る補助を実施していることが、都道府県に対する預かり保育補助金の交付要件とされている。
また、交付要綱等によれば、預かり保育補助金の交付額は、都道府県が預かり保育に係る補助を実施した私立幼稚園等を対象として次のア及びイに基づくなどして算定することとされている。
ア 実際に園児を受け入れ預かり保育を実施した日の1日当たりの保育を実施した時間(以下「保育実施時間」という。)や1日当たりの預かり保育担当者数等に基づいて設けられた区分ごとに、該当する私立幼稚園等の数を算出する。
イ 私立幼稚園等が年間計画等において、1日当たり2時間以上の預かり保育を開園日の半分以上で実施することにしていることなどを要件とする基礎単価に、加算単価を加えた額を国庫補助単価とし、上記の各区分に該当する私立幼稚園等の数を乗じて得た額とする。
そして、上記の加算単価については、通常の預かり保育及び長期休業日等預かり保育の別に①6月及び10月における保育実施時間を合計した時間数を当該預かり保育を実施した日数の合計で除した時間(以下「1日平均実績時間」という。)の時間数や、②6月及び10月(通常の預かり保育及び休業日)並びに夏季休業日(長期休業日)において実際に園児を受け入れ預かり保育を実施した日の預かり保育担当者数を合計した数を当該預かり保育を実施した日の日数の合計で除した数(以下「1日平均実績担当者数」という。)の人数に基づき区分することとされており、表1及び表2のとおりとなっている。
表1 通常の預かり保育の加算単価の区分(平成29年度)
区分 | 1日平均実績時間が5時間未満の私立幼稚園等 | 1日平均実績時間が5時間以上6時間未満の私立幼稚園等 | 1日平均実績時間が6時間以上7時間未満の私立幼稚園等 | 1日平均実績時間が7時間以上の私立幼稚園等 |
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1日平均実績担当者数が1人の私立幼稚園等 | 100,000円 | 200,000円 | 300,000円 | |
1日平均実績担当者数が2人の私立幼稚園等 | 250,000円 | 450,000円 | 650,000円 | 800,000円 |
1日平均実績担当者数が3人以上の私立幼稚園等 | 500,000円 | 750,000円 | 1,050,000円 | 1,250,000円 |
表2 長期休業日等預かり保育の加算単価の区分(平成29年度)
区分 | 長期休業日 | 休業日 |
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1日平均実績担当者数が2人の私立幼稚園等 | 60,000円 | 90,000円 |
1日平均実績担当者数が3人以上の私立幼稚園等 | 120,000円 | 180,000円 |
内閣府等は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号。以下「支援法」という。)等に基づき、平成27年度から子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)を実施している。それに伴い、内閣府等は、幼保連携型認定こども園、幼稚園等に対する財源支援を共通化した施設型給付等を創設し、施設型給付等に要する費用の一部を国の負担金(以下「給付費国庫負担金」という。)として市町村(特別区、一部事務組合を含む。以下同じ。)に交付している。
新制度においては、支援法に基づき、市町村が、新制度へ移行するなどした私立幼稚園等(以下「新制度園」という。)に在籍する園児を、家庭において必要な保育を受けることが困難であると認定をした園児(以下「保育認定園児」という。)とそれ以外の園児(以下「保育認定外園児」という。)とに区分することとされている。そして、保育認定園児は、保育認定外園児を対象に預かり保育が実施されている時間についても、給付費国庫負担金等の交付の対象となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性等の観点から、預かり保育の実施状況に照らして、預かり保育補助金の交付額の算定の基礎となる1日平均実績時間や1日平均実績担当者数の算出方法及びこれらに係る園児(以下「補助対象園児」という。)の範囲は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、12道県(注1)に対して、27年度から29年度までの間に交付された預かり保育補助金計45億5507万余円(27年度15億1335万余円、28年度15億1048万余円、29年度15億3122万余円)を対象として、文部科学本省及び12道県において、預かり保育補助金の実績報告書、私立幼稚園等の保育日誌等の関係書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた((1)から(3)までの事態には重複しているものがある。)。
7道県(注2)は、27年度から29年度までの間に、1日平均実績時間の区分に応じて算出された加算単価による預かり保育補助金の補助対象となった私立幼稚園等(国庫補助金相当額計4億1988万余円)について、道県における私立幼稚園等に対する補助金の算定方法によるなどして、預かり保育の準備時間等であって、預かり保育の対象となる園児が当該時間に私立幼稚園等におらず預かり保育を実施していない時間を保育実施時間に含めるなどして1日平均実績時間を算出することにしていた。そして、これにより、一部の私立幼稚園等については、実際に園児を受け入れた時間で1日平均実績時間を算出するよりも加算単価の区分が大きくなる事態が見受けられた。
3県(注3)は、27年度から29年度までの間に、1日平均実績担当者数の区分に応じて算出された加算単価による預かり保育補助金の補助対象となった私立幼稚園等(国庫補助金相当額計9億2846万余円)について、1日の預かり保育の時間内で複数の預かり保育担当者が短時間で逐次交代するなどしていたのに、県における私立幼稚園等に対する補助金の算定方法によるなどして、各預かり保育担当者の従事時間の長短を考慮せずに従事者全員の人数を計上した延べ人数により1日平均実績担当者数を算出することにしていた。そして、これにより、一部の私立幼稚園等については、各預かり保育担当者の従事時間の長短を考慮して1日平均実績担当者数を算出するよりも加算単価の区分が大きくなる事態が見受けられた。
前記のとおり、保育認定園児は、保育認定外園児を対象に預かり保育が実施されている時間についても給付費国庫負担金等の交付の対象となっている。しかし、5道県(注4)は、27年度から29年度までの間に、加算単価による預かり保育補助金の補助対象となった保育認定園児が在籍する新制度園(国庫補助金相当額計2億7436万円)について、道県における私立幼稚園等に対する補助金の算定方法によるなどして、補助対象園児から、預かり保育が実施されている時間についても給付費国庫負担金等の交付の対象とされている保育認定園児を除かずに1日平均実績時間や1日平均実績担当者数を算出することにしていた。そして、これにより、一部の新制度園においては、保育認定園児を除いて1日平均実績時間や1日平均実績担当者数を算出するよりも加算単価の区分が大きくなる事態が見受けられた。
このように、預かり保育を実施していない時間を保育実施時間に含めるなどして1日平均実績時間を算出することにしていたり、預かり保育担当者が短時間で逐次交代するなどしていたのに、従事者全員の人数を計上した延べ人数により1日平均実績担当者数を算出することにしていたり、保育認定園児は、保育認定外園児を対象に預かり保育を実施している時間についても給付費国庫負担金等の交付の対象となっているのに、補助対象園児から保育認定園児を除かずに1日平均実績時間や1日平均実績担当者数を算出することにしていたりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、文部科学省において、1日平均実績時間及び1日平均実績担当者数の算出方法を具体的に示していなかったこと、補助対象園児の範囲についての検討が十分ではなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省は、令和元年12月及び2年8月に都道府県に対して通知等を発するなどして、次のような処置を講じた。
ア 1日平均実績時間の算出において預かり保育の準備時間等の預かり保育を実施していない時間を保育実施時間に含めないこと、1日平均実績担当者数の算出において預かり保育担当者の従事時間の長短を考慮した算出方法にすること及び補助対象園児から保育認定園児を除くことを具体的に示して周知徹底を図り、2年度以降の補助事業から適用することとした。
イ 都道府県に当該算出方法等に基づき交付額を算定したことなどを確認するためのチェックリストを作成させ、これを実績報告書とともに提出させることとした。