1件 不当と認める国庫補助金 5,758,031円
国民健康保険(前掲の「国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの」参照)については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)等が行う国民健康保険の財政基盤の安定に資することなどを目的として、国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「法」という。)に基づき保険基盤安定負担金(以下「負担金」という。)が交付されている。
法第72条の4の規定によれば、市町村は、一般会計から、所得の少ない者の数に応じて国民健康保険の財政の状況その他の事情を勘案して算定した額を当該市町村の国民健康保険に関する特別会計に繰り入れなければならないこととされている(以下、これにより繰り入れる金額を「繰入金額」という。)。また、国は、繰入金額の2分の1に相当する額を負担金として負担することとされている。
負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。
① 市町村において当該年度に納付すべきとして賦課した一般被保険者(退職被保険者及びその被扶養者以外の被保険者をいう。以下同じ。)に係る保険料(保険税を含む。以下同じ。)の総額(以下「保険料算定額」という。)を当該市町村における一般被保険者の総数で除して一般被保険者の一人当たり平均保険料算定額(以下「平均保険料算定額」という。)を算定する。
② 平均保険料算定額に、所得が一定額に満たないため保険料が軽減された世帯に属する一般被保険者の数を乗ずるなどして得た額を繰入金額とする。
③ ②の繰入金額を国庫負担対象事業費として、これに2分の1を乗じて得た額を交付額とする。
そして、一般被保険者に係る保険料は、所得割額、資産割額、被保険者均等割額及び世帯別平等割額のうちから、法等に基づき、市町村が条例等で定めて賦課することとなっており、市町村が、保険料として世帯別平等割額を賦課する場合、特定世帯及び特定継続世帯(注)等に係る世帯別平等割額については、その一定割合を減額した額を賦課することとなっている。
負担金の交付手続については、都道府県は、市町村が提出する交付申請書及び事業実績報告書について、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査し確認した上で厚生労働省に提出することとなっている。
本院が、茨城県の22市町において会計実地検査を行ったところ、1市において次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
部局等 |
補助事業者
(事業主体) |
年度 |
国庫負担対象事業費 | 左に対する国庫負担金交付額 | 不当と認める国庫負担対象事業費 | 不当と認める国庫負担金交付額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||
(62) | 茨城県 |
水戸市 |
28~30 | 1,587,710 | 793,855 | 11,516 | 5,758 |
水戸市は、保険料として、所得割額、被保険者均等割額及び世帯別平等割額を賦課しているが、平成28年度から30年度までの負担金の交付額の算定に当たり、誤って、特定世帯及び特定継続世帯に係る世帯別平等割額の減額分を保険料算定額に含めるなどしていたため、保険料算定額を過大に算定していた。
この結果、国庫負担対象事業費が計11,516,064円過大に算定されており、これに係る負担金計5,758,031円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において負担金の交付額の算定に当たり制度の理解が十分でなかったこと、茨城県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。