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(3) 後期高齢者医療制度の財政調整交付金が過大に交付されていたもの[長崎県](63)


1件 不当と認める国庫補助金 104,490,000円

後期高齢者医療制度は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づき、都道府県の区域ごとに当該区域の全ての市町村(特別区を含む。以下同じ。)が加入して設ける後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)が、当該区域内に住所を有する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。)を被保険者として、その疾病、負傷又は死亡に関して、療養の給付、葬祭費の支給等を行うものである。

後期高齢者医療制度については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、同法に基づき、広域連合に対して財政調整交付金が交付されている。財政調整交付金には、被保険者に係る所得の広域連合間の差異による後期高齢者医療の財政の不均衡を是正するために交付される普通調整交付金と、広域連合について特別の事情がある場合に、その事情を考慮して交付される特別調整交付金がある。

このうち、特別調整交付金には、結核性疾病及び精神病に係る医療給付費(注1)が多額である場合に交付される特別調整交付金(以下「結核・精神病特別交付金」という。)や、その経過措置として交付される特別調整交付金(以下「結核・精神病特別交付金(経過措置分)」という。)等がある。

(注1)
医療給付費  療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合計額

このうち、結核・精神病特別交付金(経過措置分)は、平成20年度に、結核・精神病特別交付金が結核性疾病又は精神病が主要疾病である場合のみを交付対象とすることとされたことにより、歳入不足が見込まれる広域連合に対して、経過措置として、国民健康保険の財政調整交付金における結核性疾病及び精神病に係る特別調整交付金(以下「国民健康保険の結核・精神病特別交付金」という。)と同様の基準を用いて交付額を算定し、影響額の一部を補塡するために設けられたものである。

結核・精神病特別交付金(経過措置分)の額は、「後期高齢者医療の調整交付金の交付額の算定に関する省令」(平成19年厚生労働省令第141号)等によれば、次のとおり算定することなどとされている。

① 広域連合を組織する市町村(以下「構成市町村」という。)ごとに、当該構成市町村の被保険者に係る医療給付費に所定の率を乗ずるなどして得た額(以下「調整前調整対象需要額」という。)のうち結核性疾病又は精神病に係る額(以下「結核・精神病に係る額」という。)の占める割合(以下「結核・精神病に係る額の割合」という。)を算定する。

② 結核・精神病に係る額の割合が100分の15を超える構成市町村について、当該構成市町村ごとに、調整前調整対象需要額に、結核・精神病に係る額の割合から100分の15を控除した割合を乗じて得た額の10分の8以内の額を算定し、その合計額を結核・精神病特別交付金(経過措置分)の額とする。

そして、国民健康保険の結核・精神病特別交付金と同様に、結核・精神病に係る額は、傷病名欄に結核性疾病又は精神病の記載がある診療報酬請求明細書(以下「レセプト」という。)等のうち、結核性疾病又は精神病を主要疾病とするレセプト等に係る医療給付費と、結核性疾病又は精神病を主要疾病としないレセプト等の入院基本料等に係る医療給付費の合計額に基づいて算定することとされている。

厚生労働省は、主要疾病の判定については、レセプト等の記載内容により客観的に判断することが可能であるとして、「国民健康保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令の施行等について」(昭和38年厚生省発保第31号)において、レセプト等に記載のある診療の対象となった疾病のうち診療報酬等の点数が最大であるものを主要疾病とし、点数の大小によって判定が困難な場合は、診療の対象となった疾病のうち最も重篤であるものを主要疾病とすることとしている。

財政調整交付金の交付手続において、都道府県は、広域連合が提出する交付申請書及び事業実績報告書について、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査し確認した上で厚生労働省に提出することとなっている。

本院が、5県(注2)の5広域連合において会計実地検査を行ったところ、1広域連合において次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

(注2)
5県  山形、茨城、山口、佐賀、長崎各県
 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付金の種類
年度
交付金交付額 左のうち不当と認める額
          千円 千円
(63)
長崎県
長崎県後期高齢者医療広域連合
特別調整交付金
(結核・精神病
特別交付金(経
過措置分))
27~30 97,934,587 104,490

長崎県後期高齢者医療広域連合(以下「長崎県広域連合」という。)は、27年度から30年度までの結核・精神病特別交付金(経過措置分)の算定に当たり、主要疾病の判定については、前記のとおり、レセプト等に記載のある診療の対象となった疾病のうち診療報酬等の点数が最大であるものを主要疾病とすることなどとされているのに、点数の大小を比較することなく、レセプト等に結核性疾病又は精神病と認められる傷病名とこれに関連する薬剤の記載がある場合等には結核性疾病又は精神病が最も重篤である疾病に当たるとして、結核性疾病又は精神病を主要疾病と判定しており、これに基づいて結核・精神病に係る額を算定していた。

したがって、改めて主要疾病を診療報酬等の点数の大小により判定するなどして適正な結核・精神病に係る額を算定し、これに基づくなどして財政調整交付金の額を算定すると、計104,490,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、長崎県広域連合において財政調整交付金の交付額の算定に当たり制度の理解が十分でなかったこと、長崎県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。