1件 不当と認める国庫補助金 28,887,672円
生活扶助費等負担金(保護施設事務費負担金に係る分。以下「負担金」という。)(生活扶助費等負担金の概要については、前掲167ページの「生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの」参照)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が、身体上又は精神上著しい障害があるため日常生活を営むことが困難な被保護者等について、社会福祉法人等が設置する救護施設等の保護施設(以下「保護施設」という。)に入所を委託するなどしたことに伴い必要な保護施設の事務費(以下「施設事務費」という。)を支弁した場合に、その一部(4分の3)を国が負担するものである。
施設事務費の月額は、施設事務費支弁基準額(以下「基準額」という。)に各月初日の入所実人員を乗ずるなどして算定することとなっている。
基準額は、入所者1人当たりの月額単価であり、保護施設ごとに保護施設を管轄する都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市の市長(以下「都道府県知事等」という。)が、保護施設の所在する地域区分、取扱定員ごとに定められた一般事務費単価に、保護施設から受理した申請書の内容を審査して認定した指導員加算、看護師加算(以下、これらを「指導員等加算」という。)等の所定の単価を加算して設定することとなっている。そして、事業主体の長が保護施設に入所を委託するなどした場合、事業主体は当該保護施設を管轄する都道府県知事等が設定した基準額に基づき施設事務費を支弁することになる。
指導員等加算は、指導員又は看護師の増員が必要と認定される場合に算定される加算であり、「生活保護法による保護施設事務費及び委託事務費の取扱いについて」(昭和63年社施第85号)に定める保護施設職員職種別配置基準表(以下「職員配置基準」という。)による職員数が充足され、かつ、各月初日時点において、加算配置数として規定された指導員又は看護師が配置されていることなどの要件を全て満たす場合に加算されることとなっている。
また、「救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する最低基準の施行について」(昭和41年社施第335号)等により、職員配置基準による職員数及び加算配置数は、常時勤務する者(常勤職員)で確保することが原則とされているが、常勤職員に代えて非常勤職員を充てる場合の勤務時間(所定労働時間)数が常勤職員を充てる場合の勤務時間を上回る場合等の条件を満たす場合には、その一部に非常勤職員を充てても差し支えないこととなっている。
本院が、6都県及び5市において会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
部局等 |
基準額の設定者 |
補助事業者 (事業主体) |
年度 |
国庫負担対象事業費 | 左に対する国庫負担金交付額 | 不当と認める国庫負担対象事業費 | 不当と認める国庫負担金交付額 | 摘要 |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(92) | 茨城県、東京都 |
茨城県 |
38事業主
体 |
27~30 | 1,176,287 | 882,215 | 38,516 | 28,887 | 加算の要件を満たしていなかったものなど |
茨城県は、管轄する2救護施設について、加算配置数として規定された指導員を配置していなかったり、配置されていた非常勤職員である看護師の所定労働時間が常勤職員である看護師の所定労働時間を下回っていたりして、指導員等加算の要件を満たしていないのに、一般事務費単価に指導員等加算の単価を加算するなどして当該救護施設に係る基準額を設定していた。そして、38事業主体(注)は、当該基準額に基づき、施設事務費を支弁していたため、適正な基準額に基づく施設事務費との差額に係る負担金計28,887,672円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、当該救護施設において制度に対する理解が十分でなかったことにもよるが、同県において基準額の設定に当たり加算の認定に係る審査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
茨城県は、管轄する救護施設Aについて、平成27年8月から31年3月までの施設事務費に関して、職員配置基準で定める1名に加算配置数1名を加えた2名以上の指導員が配置されているなどの指導員加算の要件を満たしているとして、一般事務費単価に指導員加算の単価を加算するなどして当該救護施設に係る基準額(27年8月から28年3月まで179,750円、同年4月184,270円、同年5月から29年3月まで181,530円、同年4月188,970円、同年5月から30年3月まで186,170円、同年4月192,470円、同年5月から31年3月まで189,650円)を設定していた。
そして、31事業主体(注)は、同県が設定した基準額に基づき、施設事務費として計775,191,101円を支弁して、これに係る負担金計581,393,298円の交付を受けていた。
しかし、救護施設Aは、指導員を1名しか配置していなかったことから、前記指導員加算の要件を満たしていないのに、同県は、前記のとおり、当該加算の単価を加算するなどして基準額を設定していた。
したがって、適正な基準額(27年8月から28年3月まで174,290円、同年4月178,720円、同年5月から29年3月まで175,980円、同年4月183,320円、同年5月から30年3月まで180,520円、同年4月186,650円、同年5月から31年3月まで183,840円)により施設事務費を算定すると計751,338,789円となり、支弁された施設事務費との差額23,852,312円が過大に支弁されていた。そして、適正な施設事務費に基づき負担金を算定すると計563,504,061円となり、交付額との差額17,889,237円が過大に交付されていた。