1件 不当と認める国庫補助金 1,024,218,637円
地域医療再生臨時特例交付金(以下「交付金」という。)は、平成23年度地域医療再生臨時特例交付金交付要綱、平成24年度地域医療再生臨時特例交付金交付要綱等に基づき、東日本大震災により被災した岩手県、宮城県、福島県及び茨城県(以下「被災県」という。)のうち甚大な被害を受けた地域における医療提供体制の再構築に向けて策定する医療の復興計画及び地域医療再生計画に基づく事業等を支援するために、都道府県に設置する基金の造成に必要な経費を国が交付するものである(以下、造成された基金を「地域医療再生基金」という。)。
都道府県は、厚生労働省が定めた「地域医療再生基金管理運営要領」(以下「管理要領」という。)に基づき、医療の復興計画等の範囲内で、必要に応じて、地域医療再生基金を活用して行われる事業(以下「基金事業」という。)に必要な経費を地域医療再生基金から取り崩すなどして、基金事業を実施する事業主体に対して助成している(以下、地域医療再生基金から取り崩すなどして助成したものを「助成金」という。)。
そして、厚生労働省は、管理要領により、被災県における基金事業のうち、地域の医療提供体制の再構築のために、医療の復興計画等に基づき実施する事業については、完了期限を平成27年度末までとしていたが、その後見直しを行い、「地域医療再生基金(復興分)事業の延長実施等にかかる方針について」(平成27年医政地発1127第1号)により、基金事業の完了期限を、27年度末までに開始した設備整備及びソフト事業については、最大で29年度末までに延長するなどしている。また、管理要領によれば、都道府県は、事業主体が行う基金事業に係る助成金の交付申請及び交付決定の事務に係る手続等に関する助成要綱を定めることとされており、このうち宮城県が制定した地域医療復興事業補助金交付要綱等によれば、事業主体が事業を完了したときは知事に実績報告書を提出しなければならないことなどとされている。
本院が、5県(注)において、助成金の交付を受けた21事業主体が実施した基金事業を対象に会計実地検査を行ったところ、1県の1事業主体が実施した基金事業において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 |
補助事業者 |
間接補助事業者等
(事業主
体) |
補助事業等
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年度 |
基金使用額 | 左に対する交付金相当額 | 不当と認める基金使用額 | 不当と認める交付金相当額 | 摘要 |
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---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||||
(120) | 厚生労働本省 |
宮城県 |
一般社団法人みやぎ医療福
祉情報
ネット
ワーク協議会 |
地域医療再生臨時特例交付金 |
29 | 2,138,738 | 2,138,738 | 1,024,218 | 1,024,218 | 補助の対象外 |
一般社団法人みやぎ医療福祉情報ネットワーク協議会(以下「協議会」という。)は、平成25年度から29年度までの間に、宮城県が策定した医療の復興計画等に定めた地域医療連携体制の構築・強化事業等の一環として、宮城県全域を対象とした医療福祉情報の各医療施設等間における共有等を促進するための「みやぎ医療福祉情報ネットワークシステム」(以下「MMWINシステム」という。)を構築する事業を実施している。
協議会は、29年度にMMWINシステムの充実に向けて、既存電子カルテ等のデータを協議会のデータセンターにアップロードするなどの基金事業(以下「システム設計構築等事業」という。)を実施するために、複数の請負業者と計149件の請負契約を締結している。そして、協議会は、29年度内に上記の請負契約が全て完了したとして、これらを助成金の交付対象経費に含めて宮城県に実績報告書等を提出し、助成金の額の確定を受けた上で、助成金6件、計2,138,738,104円の交付を受けていた。
しかし、上記請負契約のうち42契約(契約金額計1,024,218,637円、助成金交付額同額。以下「本件基金事業」という。)については、本件基金事業の完了期限である29年度末までに完了していなかったにもかかわらず、協議会は、29年度内に全ての請負契約が完了したとして、虚偽の実績報告書等を宮城県に提出しており、同県は、当該実績報告書に基づき助成金の額の確定を行っていた。そして、本件基金事業のうち、8契約については、その後業務の一部を取りやめており、21契約については、30年10月の会計実地検査時点においても業務が完了していなかった。
したがって、本件基金事業は助成金の交付対象とは認められず、これに係る協議会への助成金1,024,218,637円(交付金相当額同額)が宮城県の地域医療再生基金から過大に取り崩されて使用されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、協議会において本件基金事業の適正な実施に対する認識が欠けていたこと並びに計画的な契約の締結及び適切な進捗管理を行っていなかったこと、宮城県において協議会から提出された本件基金事業に係る実績報告書等の審査及び協議会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
協議会は、平成29年度に、助成金6件の交付を受けて、システム設計構築等事業を実施するために、複数の請負業者と計149件の請負契約(契約金額計2,139,956,424円、助成金交付額2,138,738,104円)を締結している。これらのうち、30年2月に締結した1件の請負契約において、協議会は、宮城県内の16医療機関が保有する電子カルテシステム等の診療データを協議会のデータセンターへアップロードするための環境を構築する業務を、契約金額135,342,360円(助成金交付額同額)で請負業者に行わせていた。そして、請負業者は、同年3月28日に同業務が完了したとする完了報告書を協議会に提出し、協議会は、同月30日に完了検査を行ったとして、宮城県に対して、同業務に係る実績報告書等を提出し、同県は、実績報告書等を審査するなどした上で、事業は適正に実施されたとして助成金の額の確定を行い、同額の助成金を交付していた。
しかし、協議会が宮城県に提出した実績報告書等は虚偽のものであって、実際には同業務は完了していなかった。そして、請負業者が協議会に提出した実際の作業報告書によると、請負業者は、16医療機関のうち15医療機関分については29年度内に業務を完了しておらず、また、残りの1医療機関分については30年7月に業務を取りやめており、取りやめた1医療機関分を除き、実際に同業務を完了したのは、完了報告書に記載された完了日から約1年後の31年3月26日となっていた。
したがって、当該契約に係る費用については助成金の交付対象とは認められず、助成金135,342,360円(交付金相当額同額)が宮城県の地域医療再生基金から過大に取り崩されていた。