(1件 不当と認める国庫補助金 26,200,398円)
部局等 |
補助事業者等 |
間接補助事業者等 |
補助事業等 |
年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(131) | 中国四国農政局 |
高知県 |
宿毛市
(事業主体) |
農業用施設災害復旧 |
28、29 | 29,328 (29,328) |
28,653 | 26,817 (26,817) |
26,200 |
この補助事業は、宿毛市が、宿毛市長野地区において、平成28年9月の台風第16号により被災した頭首工(注)の機能回復を図るために、本体復旧工、仮設工等を実施したものである。このうち、本体復旧工は、固定堰(ぜき)と一体としてその上流端に設けた止水壁(高さ2.5m、延長65.0m)の損傷箇所(延長35.7m)等を復旧するものである。このうち被災により河床の洗掘が止水壁の底面の位置(以下「設置面」という。)より低い位置まで及んでいた止水壁の延長19.2mの区間(以下「19.2m区間」という。)については、止水壁の下部に鋼矢板(長さ2.5m。以下「下部鋼矢板」という。)を打設するなどし、被災により河床の洗掘が設置面まで及んでいなかった止水壁の延長計16.5mの区間(以下「計16.5m区間」という。)については河床を設置面まで掘り下げた上で、止水壁を築造するなどしたものである(参考図1参照)。
同市は、本件工事を「土地改良事業計画設計基準及び運用・解説 設計「頭首工」」(平成20年3月農林水産省農村振興局整備部設計課監修。以下「基準」という。)等に基づき設計するとともに、「高知県建設工事共通仕様書」(以下「仕様書」という。)等に基づいて施工することとしていた。
基準等によれば、頭首工の基礎は、堰体等の上部荷重を安全に支持する構造となるよう、基礎地盤の状況等を考慮して適切な工法を選定する必要があるとされている。また、仕様書等によれば、埋戻しに当たっては、適切な含水比の状態で、十分に締め固めながら埋め戻さなければならないとされている。さらに、請負契約書によれば、監督職員は、自ら工事現場の形状、地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件と実際の工事現場が一致しないことを発見した場合には直ちに調査を行わなければならないとされており、調査の結果において上記の事実が確認された場合には設計変更を行うなどしなければならないとされている。
同市は、本件工事の設計に当たり、止水壁等の損傷が、基礎部分の河床の洗掘により生じたものであることから、その洗掘防止対策として、19.2m区間は、下部鋼矢板を被災後の河床から必要な根入れ深さ1.0m以上を確保して打設するなどすることとした。一方、計16.5m区間は、下部鋼矢板を打設することなく止水壁の築造後にその前面を設置面から復旧後の河床高さまで十分な締固めを行いながら土砂で埋め戻すこととしていた(参考図2参照)。
そして、同市は、損傷箇所(延長35.7m)の工事区域内を囲うように鋼矢板を打設する工法(以下、この工法における鋼矢板を「仮設鋼矢板」という。)により、河川上流からの流水の流入を一時的に遮断して工事区域内が乾いた状態(以下、この状態を「仮締切り」という。)を確保した上で、本体復旧工等を施工することとしていたが、請負人が仮設鋼矢板を打設した後、仮設鋼矢板の継手部から流水が噴き出すなどして工事区域内への流水の流入を遮断できず、埋め戻す土砂に流水が混入して、締固めに当たって適切な含水比の状態を確保できない状況となった(参考図3参照)。
しかし、同市は、上記の状況を確認していたのに、その原因について調査を行い、締固めに当たって適切な含水比の状態を確保するため、仮締切りの工法について必要な設計変更を行うなどの適切な対策を講じていなかった。そして、請負人は、流水が工事区域内に流入した状態のまま止水壁の前面の埋戻しを行ったことから、埋め戻した土砂を十分に締め固めることができず、復旧した止水壁のうち下部鋼矢板を打設していない計16.5m区間については、止水壁の基礎部分の河床の洗掘を防止できない構造となっていると認められた。現に、令和2年3月の会計実地検査時点においても、計16.5m区間のうちの延長計7.4mについては、設置面より低い位置に、最大で70.0cmの河床の洗掘が発生していた。
したがって、本体復旧工等により復旧した止水壁等(工事費相当額26,817,217円)は、設計が適切でなかったため、河床の洗掘が計16.5m区間から止水壁の基礎部分まで進行して、19.2m区間を含めた止水壁及び固定堰に損傷が生ずるおそれがある状況となっており、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額26,200,398円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、仮締切りの工法が適切であるかなどについて調査を行い、必要な設計変更を行うなどの適切な対策を講ずる必要性に対する認識が欠けていたことなどによると認められる。
(参考図1)
工事の概念図
(参考図2)
頭首工の断面図(計16.5m区間)
(参考図3)
仮締切りの概念図