(1件 不当と認める国庫補助金 9,553,409円)
部局等 |
補助事業者等 |
間接補助事業者等 |
補助事業等 |
年度
|
事業費
国庫補助対象事業費
|
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
|
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(132) | 中国四国農政局 |
高知県 |
四万十市
(事業主体) |
農業用施設災害復旧 |
29 | 10,322 (10,322) |
9,754 | 10,109 (10,109) |
9,553 |
この補助事業は、四万十市が、四万十市蕨岡地区において、平成28年9月の台風第16号により被災した頭首工(注)の固定堰(ぜき)、護床ブロック(延長55.5m。以下「ブロック」という。)の一部等を復旧するために、護床工、固定堰の下部工等を実施したものである。このうち護床工(延長36.5m、幅4.0m)は、固定堰の下流側の河床の洗掘を防止するために、新たにブロック10個を製作し、これと再利用できた既存のブロック20個とを鉄筋等で連結して設置したものである。
同市は、本件工事の設計を「農地・農業用施設・海岸等災害復旧事業の復旧工法2014年版」(農林水産省農村振興局防災課監修。以下「基準」という。)等に基づいて行っており、基準等によれば、護床工は、河床の洗掘を防止するために、河床の状況を考慮して必要な箇所に設けること、護床工としてブロックを設置する場合には、流水による河床土砂の吸出しを防止する適切な工法(以下「吸出し防止策」という。)を選択することとされている。そして、吸出し防止策としては、ブロックとブロックの間に栗石等の中詰めを行ったり、ブロック設置面に吸出し防止用のマットを設けたりするなどの工法が考えられるとされている(参考図1参照)。
同市は、本件護床工の設計に当たり、固定堰の損傷が下流側の河床の洗掘により生じたものであることから、被災により洗掘された箇所(深さ0m~2.0m。以下「被災後の河床」という。)を1個当たりの重量が200kgから1,000kgの規格の捨石で被災前の河床高さまで埋め戻すこととしていた。そして、連結したブロックをこの捨石の上に直接設置すれば、河川の流水により河床が直接洗掘されることを防止するとともに、基準に定められている吸出し防止策を講じなくとも、河床土砂の吸出しによる洗掘を防止する効果も得られるものと判断して、これにより設計し、施工していた(参考図2参照)。
しかし、上記規格の捨石では1個当たりの粒径が相当程度大きく捨石間に生ずる空隙が大きくなることなどから、同市は、捨石と捨石の間を通り被災後の河床から河床土砂の吸出しによる洗掘が生ずることを十分に考慮すべきであったのに、これに対する吸出し防止策を講じていなかったため、本件護床工は、河床土砂の吸出しによる河床の洗掘が生ずるおそれのある構造となっていた。現に、本件工事のしゅん工から2年経過した令和2年3月の会計実地検査時点で、河床土砂の吸出しにより、本件工事で設置したブロックの設置面が最大で51.9㎝沈下している状況となっていた(参考図3参照)。
したがって、本件護床工等(工事費相当額10,109,526円)は、設計が適切でなかったため、被災後の河床から河床土砂が吸い出されるなどして河床の洗掘が進行することにより固定堰に損傷が生ずるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額9,553,409円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、河床の洗掘を防止するための護床工の設計に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
基準における吸出し防止策の工法例
(参考図2)
頭首工の断面の概念図
(参考図3)
会計実地検査時点の河床の概念図