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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 果樹経営支援対策事業における改植の実施に当たり、助成の対象とする植栽密度の範囲を定めるなどして、定額事業における助成が事業の趣旨に沿った適切なものとなるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)国産農産物生産・供給体制強化対策費
部局等
農林水産本省
補助の根拠
予算補助
補助事業者 (事業主体)
公益財団法人中央果実協会
補助事業
果樹経営支援対策事業
補助事業の概要
競争力の高い果樹産地を育成するために、果樹産地自らが策定した計画に基づき、支援対象者が行う優良な品目又は品種への転換、小規模園地整備その他の経営基盤の強化の推進を支援する事業
検査の対象とした定額事業に係る果樹園数及び助成金額
11,858園地 30億4966万余円(平成28、29両年度)
上記に対する国庫補助金額
30億4966万余円
想定上の植栽密度の2分の1に満たず、助成割合が試算上2分の1を超えていた果樹園数及び助成金額
2,106園地 4億8672万余円(平成28、29両年度)
上記に対する国庫補助金額(1)
4億8672万余円
想定上の植栽密度の2分の1に満たず、助成割合が試算上2分の1を超えていた果樹園の改植に要する経費に2分の1を乗じた額(2)
2億3965万余円(平成28、29両年度)
(1)と(2)との開差額
2億4707万円

1 果樹経営支援対策事業の概要等

(1) 果樹経営支援対策事業の概要

農林水産省は、競争力の高い果樹産地を育成するために、果樹経営支援対策事業を実施している。果樹農業好循環形成総合対策等実施要綱(平成13年12生産第2774号農林水産事務次官依命通知。平成31年4月1日以降は持続的生産強化対策事業実施要綱。以下「要綱」という。)等によれば、果樹経営支援対策事業は、果樹産地において策定した計画において担い手と定められた者等(以下「支援対象者」という。)が行う優良な品目又は品種への転換の取組に要する経費を補助する事業(以下「改植事業」という。)等とされている。そして、農林水産省は、改植事業の事業主体である公益財団法人中央果実協会(以下「協会」という。)に対して、改植事業を実施するために必要な経費について国庫補助金を交付しており、協会は、都道府県法人(注1)等を通じて、支援対象者に対して助成金を交付している。

(注1)
都道府県法人  地方公共団体、農業協同組合等により構成され、果樹農業振興特別措置法(昭和36年法律第15号)に規定する果実の生産及び出荷の安定に関する業務等を都道府県の区域内において行う組織

(2) 改植事業における助成

要綱等によれば、改植事業における助成金の交付額は、伐採・抜根費、深耕・整地費、土壌改良用資材費、苗木代、植栽費等の経費の額を助成対象経費とし、これに補助率2分の1以内を乗じた額とされている(以下、助成対象経費に補助率を乗じて得た額を助成する事業を「定率事業」という。)。ただし、農林水産省は、交付申請等に係る事務負担の軽減を図りつつ、支援対象者が助成金の交付額を事前に想定して計画的に改植を行えるようにすることにより、優良な品目又は品種への転換を一層促進するために有効であるとして、うんしゅうみかん等のかんきつ類の果樹からの改植及びりんご等の主要果樹(注2)への改植については定額で助成することとしており(以下、定額で助成する改植事業を「定額事業」という。)、改植事業のほとんどは定額事業によって実施されている。

そして、要綱等によれば、定額事業における支援対象者への助成金の交付額は、原則として、改植が実施された果樹園の面積ごとに、助成単価を乗じて得た額を合計した額とすることとされている。

(注2)
主要果樹  かんきつ類、りんご、ぶどう、なし、もも、おうとう、びわ、かき、くり、うめ、すもも、キウイフルーツ、いちじく

(3) 定額事業における助成単価の設定

定額事業の助成単価は、要綱等において、次のとおり定められている。

  • ① かんきつ類の果樹からの改植(③に該当する場合を除く。) 230,000円/10a
  • ② 主要果樹への改植(①及び③に該当する場合を除く。) 170,000円/10a
  • ③ りんごのわい化栽培(注3)、なし、かき及びすもものジョイント栽培(注4)、又はぶどうの垣根栽培(注5)への改植(以下、これらを「わい化栽培等への改植」という。) 330,000円/10a

農林水産省は、①から③までの改植の区分ごとの助成単価について、定率事業の補助率が助成対象経費の2分の1以内となっていることを踏まえて、改植の区分ごとに伐採・抜根費、深耕・整地費、土壌改良用資材費、苗木代、植栽費等の1ha当たりの経費を積算した上で、当該経費に2分の1を乗じた額を10a当たりに換算するなどして設定している。また、上記の積算された経費のうち、土壌改良用資材費、苗木代、植栽費等は、植栽密度(注6)に応じて変動する経費(以下「変動費」という。)として積算されており、変動費は上記の積算された経費の約8割から9割を占めている。

そして、農林水産省は、上記の積算における植栽密度については、改植当初は初期収量を増大させて支援対象者の経営安定が図られるように密植する必要があることなどを考慮して、表1のとおり、①かんきつ類の果樹からの改植については1,000本/ha、②主要果樹への改植のうち、りんごへの改植については360本/ha、③わい化栽培等への改植のうち、りんごのわい化栽培への改植については1,250本/haなど一定の水準の植栽密度で改植する場合を想定して設定している(以下、これらの定額事業の助成単価を設定する際に使用されている植栽密度を「想定上の植栽密度」という。)。

表1 想定上の植栽密度

区分 想定上の植栽密度
(本/ha)
①かんきつ類の果樹からの改植 1,000
②主要果樹への改植
  りんごへの改植 360
ぶどうへの改植 250
なしへの改植 800
ももへの改植 400
かきへの改植 600
③わい化栽培等への改植
  りんごのわい化栽培への改植 1,250
なしのジョイント栽培への改植 1,700
すもものジョイント栽培への改植 1,670
ぶどうの垣根栽培への改植 2,500
(注3)
わい化栽培  小型のまま成熟する性質を有する苗木を利用して樹体を小型に仕立てる栽培方法
(注4)
ジョイント栽培  隣接する樹木の枝の先端部を接ぎ木により連結し、複数の樹木を直線状に仕立てる栽培方法
(注5)
垣根栽培  支柱間に張った針金等に枝を誘引することにより果樹の樹形を垣根のように仕立てる栽培方法
(注6)
植栽密度  単位面積当たりの植栽本数

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、効率性等の観点から、定額事業における助成が事業の趣旨に沿った適切なものになっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、28、29両年度において実施された定額事業のうち、①うんしゅうみかん等のかんきつ類の果樹からの改植については当該改植の大部分を占める改植後の品目がかんきつ類となっている改植(以下「かんきつ類への改植」という。)、②主要果樹への改植については当該改植の多くを占める品目であるりんご、ぶどう、なし、もも及びかきへの改植、並びに③わい化栽培等への改植については当該改植の大部分を占めるりんごのわい化栽培への改植を行った果樹園計11,858園地、助成金計30億4966万余円(28年度計16億1332万余円(国庫補助金同額)、29年度計14億3634万余円(国庫補助金同額))を対象として、40都道府県法人等から定額事業を実施した各果樹園の植栽密度等に関する調書の提出を受けて、その内容を分析するとともに、農林水産本省、協会及び17都道府県法人等において、実績報告書等の関係書類、現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

前記のとおり、農林水産省は、定額事業において、想定上の植栽密度等により改植を行うことを前提として定額事業に係る経費を積算し、助成単価を設定している。一方、実際の改植は、果樹園の土壌の性質、支援対象者の経営判断等により植栽密度等が選定されている。

そこで、前記の果樹園11,858園地について、実際の植栽密度を確認したところ、表2のとおり、全体の6割を超える7,145園地において、実際の植栽密度が想定上の植栽密度を下回っていた。また、このうち2,106園地(全体の17.7%)における実際の植栽密度は、想定上の植栽密度の2分の1にも満たないものとなっていた。

表2 実際の植栽密度の状況

(単位:園地)
区分 想定上の植栽密度
(本/ha)
園地数計 実際の植栽密度が想定上の植栽密度を下回っている園地数 実際の植栽密度が想定上の植栽密度を下回っている園地数の園地数計に占める割合 (b)のうち実際の植栽密度が想定上の植栽密度の2分の1に満たない園地数 実際の植栽密度が想定上の植栽密度の2分の1に満たない園地数の園地数計に占める割合
(a) (b) (b)/(a) (c) (c)/(a)
①かんきつ類への改植 1,000 6,381 2,973 46.5% 545 8.5%
②主要果樹への改植
  りんごへの改植 360 463 379 81.8% 108 23.3%
ぶどうへの改植 250 1,275 997 78.1% 530 41.5%
なしへの改植 800 200 178 89.0% 73 36.5%
ももへの改植 400 1,001 960 95.9% 670 66.9%
かきへの改植 600 263 190 72.2% 51 19.3%
③りんごのわい化栽培への改植 1,250 2,275 1,468 64.5% 129 5.6%
11,858 7,145 60.2% 2,106 17.7%

そして、上記実際の植栽密度が想定上の植栽密度の2分の1に満たない果樹園2,106園地について、想定上の植栽密度に代えて実際の植栽密度を用いて改植に要する経費を積算し、助成金の交付額を当該経費で除した割合(以下「助成割合」という。)を試算したところ、2,106園地全てにおいて、助成割合が2分の1を超えており、これらの中には、助成割合が100%を超えているもの(助成金の交付額が改植に要する経費を上回っているもの)が計1,113園地あった。

また、上記実際の植栽密度を用いた改植に要する経費に基づいて助成金の交付額を試算すると、表3のとおり、2,106園地に係る助成金計4億8672万余円は、計2億3965万余円となり、2億4707万余円の開差が生じていた。

表3 想定上の植栽密度の2分の1に満たない果樹園における実際の植栽密度を用いた改植に要する経費に2分の1を乗じて試算した助成金の交付額等の状況

(単位:園地、円)
区分 実際の植栽密度が想定上の植栽密度の2分の1に満たない園地数 (a)に係る助成金の交付額 (a)に係る改植に要する経費に2分の1を乗じた助成金の交付額(試算額) 開差額
(a) (b) (c) (b)-(c)
①かんきつ類への改植 545 182,287,790 98,004,891 84,282,899
②主要果樹への改植
  りんごへの改植 108 26,065,047 13,215,512 12,849,535
ぶどうへの改植 530 97,976,111 44,515,677 53,460,434
なしへの改植 73 16,219,720 8,460,636 7,759,084
ももへの改植 670 104,135,497 48,115,663 56,019,834
かきへの改植 51 8,530,437 4,487,374 4,043,063
③りんごのわい化栽培への改植 129 51,510,394 22,852,331 28,658,063
2,106 486,724,996 239,652,084 247,072,912

このように、定額事業における助成が、前記のとおり密植する必要性等を考慮して一定の水準の植栽密度で改植することを想定して実施されているのに、実際の植栽密度が想定上の植栽密度を大幅に下回っていて、事業の趣旨に沿っていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、農林水産省において、定額事業における実際の植栽密度を十分に把握していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、定額事業について、令和2年4月に要綱等を改正して、想定上の植栽密度の2分の1を助成の対象とする範囲の下限と定めて、それを下回る植栽密度で改植を行った場合は助成の対象としないこととするとともに、実績報告書等において実際の植栽密度の状況を把握することなどにより、定額事業における助成が事業の趣旨に沿った適切なものとなるようにする処置を講じた。