(1件 不当と認める国庫補助金 36,903,986円)
部局等 |
補助事業者
(所在地) |
間接補助事業者 (所在地) |
補助事業 |
年度 |
事業費
補助対象事業費 |
左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象事業費 | 不当と認める国庫補助金相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(142) | 資源エネルギー庁 |
石油連盟 (東京都千 代田区) |
昭和四日市石油株式会社
(三重県四日市市) 〈事業主体〉 |
石油製品出荷機能強化 |
26 | 51,000 (51,000) |
51,000 | 36,903 | 36,903 |
この補助事業は、地震等により国内において石油製品の供給不足等が生ずる場合にも石油製品を安定的かつ効率的に供給できる体制を構築することを目的として、石油製品出荷機能強化事業費補助金の交付を受けた石油連盟が、製油所において石油製品の出荷設備等の機能を強化するなどの事業を実施する石油会社に対して、当該事業に要する経費を補助するものである。そして、石油製品出荷機能強化事業費補助金業務方法書(平成24年4月5日石油連盟制定)によれば、事業主体は、石油連盟から補助金の交付を受けて取得するなどした財産について、事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理しなければならないこととされている。
事業主体は、平成26年度に、巨大地震に伴う津波被害により出荷設備等が電源を喪失した場合に電力を供給する非常用発電機9台を設置するなどの工事を事業費51,000,000円(補助対象事業費同額)で実施したとして、石油連盟から同額の補助金の交付を受けていた。
事業主体は、津波被害を回避するための高床式倉庫(以下「倉庫」という。)に非常用発電機を設置して保管することとし、出荷設備等に電力を供給する必要が生じた際にはクレーンにより倉庫から搬出して使用することとしていた。そのため、事業主体は、工事を実施するに当たり、搬出及び搬入が安全かつ容易に行えるような方法で非常用発電機を倉庫の床面に固定すること、床面への固定については仕様書において示された地震により生ずる加速度に耐えられるように耐震設計を行うことなどを仕様書により示した上で請負業者と契約を締結していた。
そして、上記の契約後、請負業者は、非常用発電機の固定について、仕様書において示された地震により生ずる加速度に耐えられるものかどうかを耐震設計計算により確認せずに、非常用発電機1台当たりアンカーボルト4本(径16mm)を用いて倉庫の床面に固定することとし、事業主体の承認を得て、これにより施工していた。
しかし、事業主体によれば、上記の固定方法については、請負業者の長年の施工経験に基づく知見によるものであるとのことであり、仕様書において示された地震により生ずる加速度に耐えられるものかどうかが判然としないことから、設備機器等の設置工事における技術上の指針として広く使用されている「建築設備耐震設計・施工指針」(独立行政法人建築研究所監修)に示された計算方法に基づき、耐震設計計算を行ったところ、地震時に当該アンカーボルトに作用する引抜力(注)は2.67kN/本から13.01kN/本となり、いずれも許容引抜力(注)1.20kN/本を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
また、非常用発電機の管理状況を確認したところ、28年11月以降、次のような状況となっていた。
すなわち、非常用発電機9台のうち7台については、アンカーボルトを取り付けずに非常用発電機の真上にある倉庫の梁(はり)との間を鎖でつないでいた。このため、地震時に水平方向の力が加わって非常用発電機が滑動した際に、鎖により非常用発電機が浮き上がって床面に衝突したり、鎖が破断して非常用発電機が倉庫の壁等と衝突したりするなどして損傷するおそれがある状態となっていた(参考図参照)。
また、残りの2台については、アンカーボルトを取り付けておらず、倉庫の梁との間を鎖でつなぐこともしていなかった。このため、地震時に非常用発電機が倉庫の壁等と衝突するなどして損傷するおそれがある状態となっていた。
したがって、非常用発電機9台(工事費相当額36,903,986円)は、設計及び管理が適切でなかったため、地震時に損傷してその機能が発揮できなくなるおそれがある状態となっていて、これに係る国庫補助金相当額36,903,986円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において非常用発電機の設置に当たり耐震設計計算を行うことの重要性や本件事業により設置した非常用発電機の管理方法についての理解が十分でなかったこと、石油連盟において事業主体に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
非常用発電機の管理状況(概念図)