(1件 不当と認める国庫補助金 1,623,361円)
部局等 |
補助事業者
(所在地) |
間接補助事業者 (所在地) |
補助事業 |
年度 |
事業費
補助対象事業費 |
左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象事業費 | 不当と認める国庫補助金相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(144) | 中国経済産業局 |
島根県雲南市
〈事業主体〉 |
― | エネル
ギー構造高度化・転換理解促進事業 |
29 | 56,284 (56,284) |
56,284 | 1,623 | 1,623 |
この補助事業は、安定的かつ適切なエネルギー需給構造の構築を図ることを目的として、原子力発電施設が立地する地方公共団体等がエネルギー構造の高度化等に向けた地域住民等の理解促進に資する事業を実施する場合に、必要な経費の全部又は一部を補助するものである。
事業主体は、雲南市加茂B&G海洋センターの機械室(鉄筋コンクリート造)において、温水プールの水を加温するための木質チップボイラー、消火用補給水槽、温水を送水する配管(以下「温水配管」という。)等の設備機器等を設置するなどの工事を業者に請け負わせて実施し、国庫補助金の交付を受けていた。
事業主体は、本件工事の仕様書等において、請負人が「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)に基づき耐震設計計算を行うなどして設備機器の設置を行うこととしていた。
耐震設計指針によれば、設備機器を据え付けるために架台等の支持構造部材を用いる場合は、支持構造部材をアンカーボルトで鉄筋コンクリートの壁等に緊結することとされており、アンカーボルトは、地震時に作用する引抜力(注)が許容引抜力(注)を上回らないようにすることとされている。
そして、請負人は、温水配管を設置するために鋼製の架台(高さ1.25m、幅0.8m。以下「配管架台」という。)を用いることとして、配管架台をアンカーボルト(径10mm)4本により機械室の天井に緊結していた(参考図1参照)。
しかし、請負人は、当該アンカーボルトについて、耐震設計計算上安全であることを確認していなかったことから、耐震設計指針に基づき耐震設計計算を行ったところ、地震時にアンカーボルトに作用する引抜力は14.5kN/本となり、許容引抜力0.75kN/本を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっておらず、地震時に温水配管等が機械室の天井から落下するなどのおそれがある状態となっていた。
また、請負人は、消火用補給水槽を設置するために鋼製の架台(高さ0.6m、幅0.5m。以下「水槽架台」という。)を用いることとして、水槽架台をアンカーボルト(径12mm)4本により機械室の壁に密着させて緊結することとすれば耐震設計計算上安全であることを確認し、これにより施工することとしていた。
しかし、請負人は、施工に当たり、機械室の壁に、耐震設計計算上、圧縮に対する抵抗力を期待できない人造繊維製の断熱材(厚さ50mm)が張り付けられているのに、水槽架台を断熱材の上からアンカーボルトにより機械室の壁に取り付けていた(参考図2参照)。このため、水槽架台は機械室の壁に密着しておらず、地震時に消火用補給水槽に作用する水平力等によりアンカーボルトに損傷が生じて、消火用補給水槽等が機械室の壁から落下するなどのおそれがある状態となっていた。
したがって、本件工事により設置した温水配管、消火用補給水槽等(工事費相当額1,623,361円)は、温水配管及び消火用補給水槽の設置に係る施工が適切でなかったため、地震時における所要の安全度が確保されていないなどしており、これらに係る国庫補助金相当額1,623,361円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、請負人において仕様書等に基づき耐震設計計算を行うなどすることの重要性に対する認識が欠けていたことにもよるが、事業主体において、温水配管及び消火用補給水槽の設置に係る施工が適切でなかったのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
配管架台の概念図
(参考図2)
水槽架台の概念図