四国地方整備局(以下「整備局」という。)は、愛媛県松山市に所在する一般国道33号に係る東石井地区の延長1.4km及び天山地区の延長1.7kmにおいて、電線共同溝の整備、維持管理等を行うために、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)に基づくPFI事業(注)として、平成30年3月に、「東石井・天山地区電線共同溝PFI事業」の事業契約を、同月から令和14年3月までを契約期間として、エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社(以下「事業者」という。)と契約額2,060,539,669円で締結している。
本件契約の予定価格は、入札説明書及びその添付資料(以下、これらを合わせて「入札説明書等」という。)に定めるPFI事業費の構成により積算されており、その構成は、事業契約の締結日から電線共同溝の引渡日までに事業者が行う調査、設計、工事等を実施するために要する費用(以下「施設費」という。)、施設費の割賦支払に必要な費用(以下「割賦手数料」という。)、電線共同溝の引渡日から契約期間の終了日までの間における点検、補修等の維持管理業務費等となっている。また、これらのうち割賦手数料については、整備局が入札説明書等で公示する基準金利に、基準金利には含まれていない利ざやを加えた割賦利率により算定することとなっている。そして、整備局は、入札説明書等において、本件事業に係る基準金利を0.256%と公示していた。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、本件契約を対象として、整備局において、入札説明書等、予定価格書、事業契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、予定価格の積算のうち割賦手数料の算定について、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
整備局は、割賦手数料の算定に用いる基準金利について、電線共同溝を引き渡すまでの期間において基準金利の上昇が想定されるなどとして入札説明書等の公示前に検討していた0.8%と設定するなどして、割賦手数料を153,428,704円と算定し、これを含めたPFI事業費の総額を2,077,702,600円と積算していた。
しかし、整備局は、入札説明書等において、入札価格の算定に当たっては基準金利を0.256%として割賦手数料を算定するよう公示していたことなどから、予定価格の積算に当たっても基準金利の0.256%を用いるべきであった。
したがって、予定価格の積算において、入札説明書等で公示した基準金利の0.256%を用いるなどして割賦手数料を修正計算すると、割賦手数料の算定過程における施設費の一部計上漏れなどの積算過小を考慮しても121,013,446円となり、PFI事業費の総額は2,033,013,046円となることから、本件契約額2,060,539,669円はこれに比べて約2750万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、整備局において、PFI事業に係る割賦手数料の算定に対する理解が十分でなかったこと、予定価格の積算に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。