(3件 不当と認める国庫補助金 16,425,612円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
|
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
|
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(146) | 国土交通本省 |
和歌山県 |
空港整備 | 25、26 | 166,731 (166,731) |
83,365 | 11,104 (11,104) |
5,552 |
(147) | 同 | 鹿児島県 |
同 | 平成29~令和元 |
311,761 (311,761) |
249,409 | 12,311 (12,311) |
9,849 |
(148) | 同 | 同 | 同 | 30 | 132,696 (132,696) |
106,156 | 1,279 (1,279) |
1,023 |
(146)―(148)の計 | 611,188 (611,188) |
438,931 | 24,696 (24,696) |
16,425 |
これらの補助事業は、2県が、南紀白浜、奄美両空港の管制塔において、飛行場灯火を操作するための灯火運用卓を更新するために、新たに灯火運用卓を製作して据え付けるなどの工事(以下、灯火運用卓を据え付ける工事を「灯火運用卓の据付工事」という。)を実施したり、鹿児島県が、奄美空港の予備発電電源室において、予備発電機を操作するための機関操縦計器盤を更新するために新たに機関操縦計器盤を製作して据え付けるなどの工事(以下、機関操縦計器盤を据え付ける工事を「機関操縦計器盤の据付工事」という。)を実施したりしたものである。
2県は、灯火運用卓の据付工事を「航空灯火・電気施設工事共通仕様書」(国土交通省航空局監修。以下「共通仕様書」という。)、「建築設備耐震設計・施工指針」(独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)等に基づいて、また、鹿児島県は、機関操縦計器盤の据付工事を「発電装置設置工事標準仕様書」(運輸省航空局制定)、耐震設計指針等に基づいて施工することとしている。
灯火運用卓等の機器について、共通仕様書によれば、機器をフリーアクセス床(注)に据え付ける場合は、床パネルの下部に架台を設け、機器と架台をボルト等により結合した上で、架台をボルト等により床コンクリートに直接固定して、地震による水平移動、転倒等の事故が防止できるよう耐震設計指針に基づいて耐震処理を行うこととされている。また、機関操縦計器盤等の機器について、発電装置設置工事標準仕様書によれば、機器は、地震時に水平移動、転倒等の事故を防止できるよう耐震措置を行うこととされていて、鹿児島県は、耐震設計指針に基づいて耐震措置を行うこととしている。
そして、機器をフリーアクセス床に据え付ける場合のように、機器を床コンクリートにアンカーボルトにより直接緊結しない場合には、耐震設計指針によれば、鉄骨部材である架台を設けた上で、当該架台を床コンクリートに緊結するアンカーボルトについて、機器と架台を一体と考えて地震時に機器に作用する水平力や鉛直力に対して安全となるよう設計計算を行うことなどとされている。
また、2県における灯火運用卓の据付工事又は機関操縦計器盤の据付工事の契約書によれば、設計図書の表示が明確でないときなどには、請負人は県が定めた監督員又は監督職員に直ちにその旨を通知し、その確認を請求しなければならないこと、監督員又は監督職員は契約の履行について請負人に指示し、協議し、又は承諾を与えるなどすることとされている。そして、鹿児島県における灯火運用卓の据付工事の特記仕様書において、請負人が施工するに際しては、現場調査後に製作図面等を提出し、監督職員の承諾を得た後に架台の製作を行うこととなっている。
しかし、灯火運用卓の据付工事の実施に当たり、和歌山県において、監督員の承諾を得ないままフリーアクセス床の床パネルの下部に架台を設けずに床パネル上の灯火運用卓をアンカーボルトにより床コンクリートに固定するなどしていて、床パネルと床コンクリートの間で当該アンカーボルトが露出していたり、鹿児島県において、監督職員の承諾を得てフリーアクセス床の床パネル上の灯火運用卓を床パネルの下部の等辺山形鋼とボルトで固定しただけで、床パネルの下部に架台を設けてアンカーボルトにより床コンクリートに固定するなどしていなかったりしていた事態が見受けられた。また、機関操縦計器盤の据付工事の実施に当たり、鹿児島県において、監督職員の承諾を得て機関操縦計器盤の底面前側をアンカーボルトにより床コンクリートに固定しただけで、同計器盤の底面後側は床コンクリートに凹状にある配線用のピットを考慮した架台を設けてアンカーボルトにより床コンクリートに固定するなどしていなかった事態が見受けられた。
このため、灯火運用卓及び機関操縦計器盤は、地震時に作用する水平力等により転倒するなどし、地震時における所定の機能が維持できないおそれのある状態となっていて、これらに係る国庫補助金相当額計16,425,612円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県において共通仕様書等に基づき耐震処理等を行うことについての理解が十分でなかったこと、和歌山県において請負人が監督員の承諾を得ないまま架台を設けずに灯火運用卓を据え付けていたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
鹿児島県は、奄美空港の管制塔において、平成29年度から令和元年度までの間に、灯火運用卓を更新するために灯火運用卓の据付工事等を実施していた。
同県は、灯火運用卓の据付工事を共通仕様書等に基づいて施工することとしていた。そして、灯火運用卓の据付けに必要となる架台の製作については、特記仕様書において、請負人が現場調査後に製作図面等を提出し、監督職員の承諾を得た後に行うこととされていた。請負人が現場調査を行ったところ、設計図書により灯火運用卓の据付位置として明示されたフリーアクセス床の床パネルの下部には空調ダクトが設置されていて、架台を設けるスペースがないことが判明した。このため、請負人は、灯火運用卓を架台を設けずに床パネルの下部の等辺山形鋼とボルトで固定することとした製作図面等を作成して監督職員に提出した。
しかし、監督職員は、既存の空調ダクトを考慮した架台を設けて、当該架台をアンカーボルトにより床コンクリートに直接固定するなどするよう請負人に指示すべきであったのに、共通仕様書等の理解が十分でなかったため、上記の製作図面等を承諾し、請負人はこれにより施工していた(参考図参照)。
したがって、灯火運用卓(工事費相当額計12,311,790円、国庫補助金相当額計9,849,431円)は、設計が適切でなかったため、地震時に灯火運用卓に作用する水平力等により転倒するなどのおそれがある状態となっていた。
(参考図)
灯火運用卓の概念図