ページトップ
  • 令和元年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1) 工事の設計が適切でなかったなどのもの

貯水槽の基礎工の設計に当たり、アンカー耐力及び設置数の組合せの選定が適切でなかったもの[栃木県](152)


(1件 不当と認める国庫補助金 16,241,500円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(152)
栃木県
鹿沼市
社会資本整備総合交付金
(下水道)
、防災・安全交付金(同)
25~29 581,839
(577,219)
288,609 32,745
(32,483)
16,241

この交付金事業は、鹿沼市が、鹿沼市深津地内において、豪雨の際に一時的に雨水を貯留することを目的とした千渡雨水第三調整池(面積4,740m2)を掘込式の貯水槽(以下「貯水槽」という。)として整備するために、基礎工、く体工等を実施したものである。

このうち基礎工は、周辺の地下水位が高く貯水槽の底版下面に地下水による上向きの鉛直力(以下「揚圧力」という。)が作用することから、これによる貯水槽の浮き上がりを防止するため、底版上面から土中にアンカーを設置するものである(参考図参照)。

同市は、基礎工の設計を「下水道施設耐震計算例―処理場・ポンプ場編―2002年版」(公益社団法人日本下水道協会編)、「グラウンドアンカー工法の調査・設計から施工まで」(公益社団法人地盤工学会編。以下、これらを合わせて「設計基準」という。)等に基づいて行っている。設計基準によれば、構造物の浮き上がりに対する安全を確保するためにアンカーを使用する場合には、揚圧力から、空水時の貯水槽の自重に側壁背面に作用する摩擦力等を加えた下向きの鉛直力を差し引くなどして、アンカーが負担する力(以下「アンカー負担力」という。)を算定し、アンカー負担力に対して必要となるアンカー1本当たりの設計耐力(以下「アンカー耐力」という。)及び設置数の組合せを選定することなどとされている。

同市は、基礎工の設計に当たり、アンカーの設置数については、設置間隔の目安が最大5mであるとして、5mの等間隔に設置するなどとした上で184本とし、アンカー耐力については、アンカー負担力及び設置数を考慮するなどして350kNのアンカーを使用することとし、これらにより施工していた。

しかし、設計基準等によれば、同市がアンカーの設置間隔の目安であるとした最大5mは斜面の安定のためにアンカーを使用する場合に適用されるものであり、貯水槽の基礎工に適用されるものではないことから、本件基礎工の設計に当たっては、アンカーの設置間隔を5mとすることなく、アンカー負担力に対して必要となるアンカー耐力及び設置数の組合せを選定する必要があった。また、同市は、アンカー負担力の算定に当たり、貯水槽の自重に側壁等の自重を含めていなかったり、側壁背面に作用する摩擦力等を下向きの鉛直力に加えていなかったりなどしていた。

そこで、改めて、アンカー負担力を適正に算定するなどした上で、適切なアンカー耐力及び設置数の組合せを選定すると、アンカー耐力450kNのアンカーを101本設置することとすれば、浮き上がりに対して所要の安全度が確保でき、かつ、最も経済的な設計になったと認められる。

したがって、上記により工事費を修正計算すると、549,093,600円(交付対象事業費544,736,200円)となり、本件工事費581,839,200円(同577,219,800円)はこれに比べて32,745,600円(同32,483,600円)過大となっていて、これに係る交付金相当額16,241,500円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

貯水槽の断面概念図

貯水槽の断面概念図 側壁の高さ3.6m 底版の厚さ1.0m 揚圧力(上向きの鉛直力) アンカー 空水時の貯水槽等の自重(下向きの鉛直力) 背面土による上載荷重(下向きの鉛直力) 貯水槽の側壁背面に作用する摩擦力(下向きの鉛直力) アンカー負担力(下向きの鉛直力) 設計地下水位3.6m 画像