南関東防衛局(以下「局」という。)は、平成27年度から29年度までの間に、「富士(27)隊舎新設土木工事」を一般競争により株式会社関道建設に契約額105,300,000円で請け負わせて施行している。
本件工事は、陸上自衛隊富士駐屯地(以下「駐屯地」という。)において隊舎1棟の新設に伴い、周辺整備のための土木工事を行うもので、造成工事、舗装工事、給水工事、雨水排水工事、環境整備工事等の各工種から構成されている。
局は、本件工事の工事費について、防衛省が定めている「土木工事積算価格算定要領」、「土木工事標準歩掛」(いずれも平成19年装技調第34号。以下「積算要領等」という。)等に基づき、上記の各工種に係る費用からなる直接工事費に共通仮設費、現場管理費、一般管理費等及び消費税等相当額を加えて積算している。
そして、直接工事費のうち、造成工事等で発生する残土の処理に係る費用は、工事現場から再資源化施設等の目的地までの運搬費、再資源化施設に持ち込む場合に生ずる受入費等から構成されており、このうち運搬費については、積算要領等によれば、運搬距離区分等の各条件に応じて定められた1m3当たりの単価に残土体積を乗じて算定することとされている。また、受入費については、「建設工事における再生資源の活用について(通知)」(平成21年装技調第44号)等によれば、見積書等を基に決定した1m3当たりの単価に残土体積を乗じて算定することとされている。
本院は、経済性等の観点から、工事費の積算が適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、局において、契約書、特記仕様書、契約図面、積算価格内訳明細書等の関係資料及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、局は、造成工事、給水工事及び雨水排水工事で発生する残土計2,257m3の取扱いについて、駐屯地に所在する部隊と調整した結果、残土の有効利用を行うため駐屯地に隣接する東富士演習場(以下「演習場」という。)内の所定の場所に運搬して敷均(なら)しすることとして、特記仕様書において、残土について運搬距離は2.0kmとし敷均しをする旨を記載していた。また、残土を再資源化施設に持ち込む場合には、特記仕様書において局が積算で使用する受入費の単価を記載することになっているが、上記の理由により再資源化施設に持ち込まないことから記載していなかった。
しかし、局は、工事費の積算においては、当該工事現場から約25.8km離れた再資源化施設に残土を運搬することを想定して、運搬費については、積算要領等に基づき運搬距離区分を「22.5kmを超えかつ49.5km以下」とするなどとした条件により1m3当たりの単価3,180円を用いて算定し、受入費については、見積書を基に1m3当たりの単価2,400円を用いて算定していた。そして、これらを含めた工事費の総額を110,524,591円と積算していたが、正しくは、上記特記仕様書の内容に基づき演習場内の所定の場所までの運搬費及び敷均し費を計上すべきであり、また、受入費については計上すべきでなかったと認められた。現に、請負業者は、残土を演習場内の所定の場所まで運搬して敷均しを行っていた。
したがって、残土2,257m3について、演習場内の所定の場所までの運搬費は正しい運搬距離区分「1.5kmを超えかつ2.0km以下」に基づいた1m3当たりの単価660円(敷均し費を含む。)を用いること、受入費は計上しないことなどにより本件工事費を修正計算すると、他の項目において積算過小となっていた費用等を考慮しても、工事費の総額は100,589,562円となることから、本件契約額105,300,000円はこれに比べて約470万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、局において、本件工事の工事費の積算に対する確認が十分でなかったことなどによると認められる。