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ボイラー保守管理業務に係る委託契約において、予定価格の積算に当たり、適用できない積算基準等の歩掛かりを適用するなどしていたため、契約額が割高となっていたもの[海上自衛隊那覇航空基地隊那覇経理隊](173)


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等
海上自衛隊那覇航空基地隊那覇経理隊
契約名
ボイラー保守管理業務(令和元、2両年度)
契約の概要
海上自衛隊那覇航空基地におけるボイラー等の保守管理、定期自主検査等の作業を行うもの
契約の相手方
日本美装株式会社(令和元、2両年度)
契約
平成31年4月、令和2年4月 一般競争契約
契約額
18,285,352円(令和元、2両年度)
割高となっていた契約額
630万円(令和元、2両年度)

1 契約等の概要

(1) 本件委託業務の概要

海上自衛隊那覇航空基地隊(以下「基地隊」という。)は、隊舎の浴室、プール等で使用する温水を得るために設置したボイラー等7基の保守管理、定期自主検査等の作業を行うため、令和元、2両年度に、ボイラー保守管理業務を、一般競争契約により日本美装株式会社(以下「会社」という。)にそれぞれ契約額9,045,352円、9,240,000円、計18,285,352円で委託して実施している(以下、元年度の保守管理業務を「元年度委託業務」、2年度の保守管理業務を「2年度委託業務」といい、これらを合わせて「本件委託業務」という。)。

そして、本件委託業務の要求元である基地隊那覇管理隊(以下「管理隊」という。)が作成した海上自衛隊仕様書(以下「海自仕様書」という。)において、作業時間は基地隊の課業時間内(平日8時から16時45分まで)を原則とすること、作業人員は、作業管理者(作業実施者を指揮等し、履行場所に常駐する必要はない者)1名、作業実施者(作業管理者の指揮により直接役務を実施する者)1名を標準とし、そのうち1名は常駐するものとすることなどが定められている。

また、海自仕様書では、「建築保全業務共通仕様書」(国土交通省大臣官房官庁営繕部。以下「共通仕様書」という。)、管理隊が作成したボイラー保守管理業務マニュアル(以下「マニュアル」という。)等を海自仕様書の一部をなす引用文書としており、マニュアルにおいて本件委託業務の作業項目及び作業内容(以下「作業項目等」という。)が定められている。

(2) 本件委託業務の予定価格の積算等

基地隊那覇経理隊(以下「経理隊」という。)は、本件委託業務の予定価格の積算に当たり、「建築保全業務積算基準」(国土交通省大臣官房官庁営繕部)、「建築保全業務積算要領」(国土交通省大臣官房官庁営繕部)等(以下、これらを合わせて「積算基準等」という。)に基づき算定した額と、会社から徴した見積書の金額とを総額で比較して安価な方を採用するなどして決定している。

そして、「建築保全業務積算基準及び同解説」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)によれば、積算基準等に示されている歩掛かりは、共通仕様書の作業項目等に基づいたものとなっているため、たとえ同じ設備機器でも、作業項目等が共通仕様書と異なれば、当該歩掛かりを適用することはできないとされている。

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、本件委託業務に係る予定価格の積算方法が適切なものとなっているかなどに着眼して、本件委託業務を対象として、基地隊において、契約書、海自仕様書、予定価格調書等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

管理隊は、隊舎のボイラー等6基が小規模なものであることなどの業務の実態を踏まえ、元年度以降の海自仕様書において作業実施者1名を標準とすることを明示していた。

また、管理隊は、マニュアルの作成に当たって、隊舎のボイラー等6基が小規模なものであることなどから、共通仕様書の作業項目等を一部抜粋したり、「ボイラー及び圧力容器安全規則」(昭和47年労働省令第33号)等を参考にしたりするなどして作業項目等を定めていた。このため、マニュアルに定められた保守管理及び定期自主検査の作業項目等は共通仕様書の作業項目等とは異なるものとなっていて、予定価格の積算に当たっては、積算基準等の歩掛かりは適用できないものとなっていた。

しかし、経理隊は、海自仕様書及びマニュアルの内容を十分に確認することなく、元年度委託業務の予定価格の積算において、積算基準等の歩掛かりを適用して、保守管理の作業実施者の労務数量を1日当たり1.666人としていたり、定期自主検査の労務数量を積算していたりしていた。また、2年度委託業務の予定価格の積算においては、保守管理の労務数量は海自仕様書に基づき1日当たり1人としていたが、定期自主検査の労務数量については、元年度委託業務と同様に積算基準等の歩掛かりを適用して積算していたり、燃料タンク等の附帯設備の日常点検に係る労務数量についても積算基準等の歩掛かりを適用して積算していたりしていた。現に、保守管理及び定期自主検査の作業の実態を確認したところ、海自仕様書のとおり、作業実施者1名は、課業時間内、基地内に常駐してプールのボイラー1基や起動時間が14時である隊舎のボイラー等6基の保守管理及び定期自主検査の全ての作業をマニュアルに基づき実施していた。

したがって、作業実施者1名により本件委託業務に係る保守管理及び定期自主検査の作業を実施することとして予定価格を修正計算すると、元年度5,823,837円、2年度6,040,619円となり、本件契約額元年度9,045,352円、2年度9,240,000円は、これに比べて元年度約320万円、2年度約310万円、計約630万円割高となっていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、経理隊において、積算基準等に対する理解が十分でなかったこと並びに海自仕様書、マニュアル及び本件委託業務の予定価格の積算に対する確認が十分でなかったことによると認められる。