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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの[日本私立学校振興・共済事業団](174)


科目
(助成勘定)交付補助金
部局等
日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体
学校法人新潟青陵学園
補助の対象
私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額
377,584,000円(平成29年度)
不当と認める事業団の補助金交付額
1,814,000円(平成29年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注)を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高め、もって私立大学等の健全な発達に資することを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(注)
私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(2) 補助金の額の算定

事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料等を提出させている。

  • ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等の数、専任職員数及び学生数に関する資料
  • イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料

    そして、事業団は、算定資料に基づき、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定)等(以下「配分基準等」という。)に定める方法により、補助金の額を算定している。

(3) 一般補助

事業団は、私立大学等における経常的経費に対する一般補助の額を、次のとおり算定することとなっている。

すなわち、経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数等に所定の補助単価を乗ずるなどして算定した補助金の基準額に、各私立大学等の教育研究条件の整備状況等を勘案した増減率を乗ずるなどして得られた金額を合計することとなっている。ただし、専任教員等のうち助教及び助手については、申請年度の4月1日から3月31日までの間に育児休業等により勤務しない期間がある場合、5月1日現在で、その期間が育児休業の届出等により6か月を超えると判断される者は、補助金の基準額の算定対象とすることができないこととなっている。

(4) 特別補助

上記のほか、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のために特に必要があると認められるときは、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。

特別補助の対象となる項目には「授業料減免事業等支援」があり、これは、経済的に修学困難な学生(外国人留学生を除く。)に対し、入学料・授業料減免等の給付事業又は利子負担事業を実施している私立大学等に対して、当該事業に係る所要経費の2分の1以内の額の増額を行うものである。

そして、事業団は、配分基準等に基づき、各学校法人から算定対象となる申請年度の4月1日から9月30日までの支出額と10月1日から3月31日までの見込額を合算した所要経費の見込額等を記載した算定資料を提出させて、特別補助の額を算定することとなっている。ただし、見込額等に比べて実際の所要経費が減少した場合は、実績額を報告させて、特別補助の額の減額を行うこととなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、一般補助における専任教員等の数は適切に算定されているか、特別補助の算定対象となる経費は適切に算定されているかなどに着眼して、事業団が平成29、30両年度に補助金を交付している643学校法人のうち21学校法人において、算定資料等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

学校法人新潟青陵学園(29年度補助金交付額377,584,000円)は、一般補助において、事業団に提出した算定資料に、新潟青陵大学における29年度の算定対象となる29年5月1日現在の専任教員等の数77名(うち助手5名)について、申請年度に育児休業を取得していて勤務しない期間が6か月を超えると判断される算定対象とならない助手1名を含めていた。

また、特別補助において、同学校法人は、事業団に提出した算定資料に、新潟青陵大学短期大学部における29年度の「授業料減免事業等支援」に係る所要経費について、学生89名の授業料減免に係る見込額等を記載していた。しかし、上記学生89名の中には、29年9月30日付けで退学した2名が含まれていて、当該2名については、29年度後期分の授業料が徴収されていないため、その分に係る授業料減免の支出実績がなくなったのに、上記の所要経費には、当該2名に係る見込額が含まれていた。そして、見込額等に比べて実際の所要経費が減少していたのに、実績額を報告していなかった。

そして、事業団は、同学校法人から提出されたこれらの誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。

したがって、一般補助の算定対象とならない専任教員等を除外し、また、特別補助の算定対象とならない所要経費を除外して算定すると、同学校法人に対する適正な補助金の額は375,770,000円となり、1,814,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同学校法人において補助金の制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその内容の確認を十分に行っていなかったりしていたこと、事業団において同学校法人に対する指導及び調査が十分でなかったことなどによると認められる。