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国立研究開発法人産業技術総合研究所が賃借している土地のうち有効に利用されていない土地について、賃借しないこととする土地を確定するとともに、賃貸借契約の見直しに向けた計画を策定するよう是正改善の処置を求め、及び保有している土地のうち有効に利用されていない土地について、具体的な処分計画又は利用計画を策定するなどするよう改善の処置を要求したもの


科目
固定資産、賃借料
部局等
国立研究開発法人産業技術総合研究所
九州センターにおいて佐賀県から賃借している土地の賃借料
1億1408万余円(平成27年度~令和元年度)
上記のうち、有効に利用されていない土地を賃借しないこととすることで節減できた賃借料(1)
2984万円
保有している土地の令和元年度末現在の帳簿価額
1086億8777万余円
上記のうち、北海道センターにおいて有効に利用されていない土地に係る帳簿価額(2)
2億0415万円
(1)及び(2)の計
2億3399万円

【是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求したものの全文】

国立研究開発法人産業技術総合研究所が保有するなどしている土地の利用状況について

(令和2年10月21日付け 国立研究開発法人産業技術総合研究所理事長宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 貴研究所が保有するなどしている資産等の概要

(1) 貴研究所における保有資産等の概要

貴研究所は、国立研究開発法人産業技術総合研究所法(平成11年法律第203号)に基づき、鉱工業の科学技術に関する研究及び開発等の業務を総合的に行うことにより、産業技術の向上及びその成果の普及を図り、もって経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保に資することを目的として、平成13年4月に旧工業技術院の15研究所と計量教習所が統合されて設立された独立行政法人である。そして、東京、つくば両本部のほか、国内に11研究拠点(注1)を設置するなどして研究を実施している。

貴研究所は、実物資産として、土地(帳簿価額(令和元年度末現在。以下同じ。)計1086億8777万余円)及び研究施設等の建物(帳簿価額計1148億4717万余円)を保有しており、そのほとんどは、貴研究所が設立された際に、研究開発活動に必要な資産を国からの現物出資として承継したものである。また、貴研究所では、必要に応じて、国からの現物出資として承継した建物の敷地となっている土地を賃借している。

(注1)
11研究拠点  北海道、東北、つくば、柏、臨海副都心、中部、関西、中国、四国、九州各センター及び福島再生可能エネルギー研究所

(2) 施設整備計画等の概要

貴研究所では、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)に基づき策定した「第4期中長期計画」において、施設及び設備の効率的かつ効果的な維持・整備を行い、老朽化によって不要となった施設等について、計画的に閉鎖して解体することとしている。また、元年度の施設整備の基本方針等を定めた「産業技術総合研究所施設整備計画」等において、貴研究所の研究施設等の多くが築後30年以上を経過して、建物等の老朽化が進んでいる一方で、国から措置される施設整備費補助金等の予算は減少傾向にあるとしている。そして、施設の維持管理経費及び老朽化対策費は、延床面積に比例して増加することから、限られた予算の中で効率的、効果的に施設の維持・整備及び老朽化対策を実施するために、研究施設等を集約化するなどして老朽化した研究施設等を計画的に閉鎖して解体し、総延床面積の縮減を図るとしている。

(3) 保有資産の見直しと不要財産の処分

独立行政法人は、平成22年5月の通則法の改正により、中期目標期間の途中であっても、通則法第8条第3項の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととなっているほか、通則法第46条の2第1項の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫に納付することとなっている。

そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定。以下「基本方針」という。)において、独立行政法人の保有する施設等について、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫に納付すること、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことなどを掲げている。

(4) 業務運営の効率化等

貴研究所は、13年の独立行政法人化以降、特に地方に所在する研究拠点等について、各地域の特性を踏まえた研究開発に特化するなど、研究テーマの選択と集中を図ることなどにより業務運営の効率化に取り組んでいる。

また、本院は、貴研究所の土地及び建物の国庫納付に向けた研究拠点等の集約化等について、利用状況が著しく低い研究拠点等の土地及び建物の国庫納付に向けた速やかな当該研究拠点等の集約化を図ったり、集約化に向けた具体的な計画を早急に策定したりなどするよう、23年10月に貴研究所理事長に対して、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

貴研究所は、これを受けて、規程の見直しなどを行い、全国の研究拠点等の利活用状況を適時適切に把握する体制を整備し、利用率が低い研究施設等については、閉鎖の検討を行うこととするなどの処置を講じていた。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴研究所は、上記のとおり、利用率が低い研究施設等については、閉鎖の検討を行うとともに、前記のとおり、限られた予算の中で効率的、効果的に施設の維持・整備及び老朽化対策を実施するために、研究施設等を集約化するなどして老朽化した研究施設等を計画的に閉鎖して解体し、総延床面積の縮減を図るとしている。そこで、本院は、経済性、有効性等の観点から、貴研究所が保有し、又は賃借している土地及び研究施設等の建物が有効に利用されているか、研究施設等の集約化に伴って生じた利用されていない土地について売却等の処分計画や施設整備等の利用計画が策定されているかなどに着眼して、北海道、九州両センターにおいて、その土地及び建物を対象に、施設の配置図等の関係書類及び土地の現況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、つくば本部から見解を徴するなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、北海道、九州両センターの土地の利用状況について、次のような事態が見受けられた。

(1) 賃借している土地の一部が有効に利用されていない事態

九州センターは、新たなセンシング技術等の高度化に重点を置いた研究開発を推進するための研究拠点として、製造技術研究部門及び太陽光発電研究センターを設置するなどしている。九州センターに係る研究施設等は、貴研究所の前身である旧工業技術院の九州工業技術試験所の施設等を貴研究所が国からの現物出資として承継したものである。そして、その敷地については、同試験所が佐賀県から賃借していた県有地を貴研究所が引き続き同県と賃貸借契約を締結して賃借しており、令和元年度において、71,923.42m2の土地を賃借している。

九州センターは、上記のとおり太陽光発電研究センターを設置しているが、平成26年4月に新たに設置された福島再生可能エネルギー研究所に再生可能エネルギー研究センターが創設されたことにより、太陽光発電に係る研究分野が九州センターと同研究所で重複することとなった。そして、27年1月から同年3月までに研究施設等3棟の解体を行うなどした結果、解体後の跡地等約18,816m2については、更地のままとなっているなどしていて、有効に利用されておらず、また、今後の新規の研究施設等の建設予定もないなどとしていて、賃借している土地全体における位置関係、形状等を考慮しても、当該跡地等を賃借しないこととすることが可能な状況となっていた。したがって、研究施設等の解体後、27年度当初に速やかに賃貸借契約を見直していれば、27年度から令和元年度までの間の賃借料計1億1408万余円のうち、当該跡地等の面積に相当する賃借料計2984万余円が節減できたと認められる。

(2) 保有する土地の一部が有効に利用されていない事態

北海道センターは、バイオテクノロジーを活用した物質生産技術に重点を置いた研究等を推進するための研究拠点となっている。そして、貴研究所は、その設立時に、研究開発活動に必要な資産を国からの現物出資として承継し、元年度末現在、北海道センターに係る敷地面積58,546.56m2の土地(帳簿価額17億8000万円)及び研究施設等16棟(建築面積(注2)計10,337.71m2)を保有している。上記土地のうち約15,896m2は、貴研究所の前身である旧工業技術院において職員宿舎用地として使用されていたが、貴研究所に承継されて以降、平成14年12月までに同宿舎は解体され、その跡地のうち約4,917m2には研究施設等が建設されたことは一度もなく、更地のままとなっているなどしていて、有効に利用されていなかった。また、上記の土地に通路を挟んで対向する土地約1,798m2についても、28年12月に研究交流支援施設が解体されて以降、更地のままとなっているなどしていて、有効に利用されていなかった。

そして、これらの有効に利用されていなかった土地計約6,715m2(帳簿価額計2億0415万余円)については、具体的な処分計画又は利用計画が策定されていない。

(注2)
建築面積  建築物の外壁等で囲まれた部分の水平投影面積

(是正改善及び改善を必要とする事態)

九州センターにおいて、佐賀県から賃借している土地の一部が有効に利用されていないのに賃貸借契約を見直さず、当該土地に係る賃借料を支払い続けている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、北海道センターにおいて、職員宿舎等を解体した跡地の一部が有効に利用されておらず、具体的な処分計画又は利用計画が策定されないまま保有されている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴研究所において、賃借している土地について、その利用状況を的確に把握し、適時適切に賃借する土地の面積を見直すことの必要性についての理解が十分でないこと、保有している土地のうち有効に利用されていない土地について、具体的な処分計画又は利用計画を策定することについての理解が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が求める是正改善の処置及び要求する改善の処置

貴研究所は、今後も必要に応じて研究施設等を集約化するなどして老朽化した研究施設等を計画的に閉鎖して解体することが見込まれる。また、前記のとおり、基本方針において、独立行政法人の保有する施設等について、保有する必要性があるかなどについて厳しく検証して、不要と認められるものについては速やかに国庫に納付すること、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うこととなっている。

ついては、貴研究所において、有効に利用されていない土地の処分又は利用が図られるよう、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求する。

  • ア 九州センターにおいて佐賀県から賃借している土地について、敷地内の研究施設等に係る取壊し予定を踏まえ、前記の約18,816m2を含めた賃借しないこととする土地を確定するとともに、速やかに同県と協議するなどして賃貸借契約の見直しに向けた計画を策定すること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)
  • イ 北海道センターにおいて有効に利用されていない土地について、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がないと認められる場合には、国庫納付等の具体的な処分計画を策定し、必要があると認められる場合には、施設整備等の具体的な利用計画を策定すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
  • ウ 各地域センターにおける土地の利用状況を的確に把握して、有効に利用されていない土地がある場合には、具体的な処分計画又は利用計画を策定するなどの体制を整備すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)