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  • 令和元年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 独立行政法人都市再生機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 団地管理業務の委託に当たり、賃貸住宅の居住者等に対する共益費に係る収支状況表等の郵送について割引制度等の適用を受けることとすることなどにより、郵送に係る費用の節減を図るよう改善させたもの


科目
(都市再生勘定) (項)賃貸住宅業務費
部局等
独立行政法人都市再生機構本社、東日本賃貸住宅本部、中部支社等3支社
契約名
住宅管理センター等における団地管理業務
契約の概要
独立行政法人都市再生機構が管理する賃貸住宅等における居住者等の入退去に関する業務、家賃の収納業務、共益費の運営に関する業務、共益費に係る収支状況表等の郵送等に関する業務等を行うもの
契約の相手方
株式会社URコミュニティ
契約
平成30年6月~令和5年5月 随意契約
検査の対象とした収支状況表等を封入した郵便物の差出通数
144万余通(平成30、令和元両年度)
上記郵便物の郵送に係る支払額
1億2021万円(背景金額)(平成30、令和元両年度)
節減できた支払額
1761万円(平成30、令和元両年度)

1 団地管理業務に係る委託契約の概要等

(1) 団地管理業務に係る委託契約の概要

独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、令和元年度末において約72万戸の賃貸住宅を管理等している。そして、平成30年1月に、同年6月から令和5年5月までを契約期間として、機構が管理する賃貸住宅等の管理運営に関する業務(以下「団地管理業務」という。)を行うことを目的として、株式会社URコミュニティ(以下「URコミュニティ」という。)との間で団地管理業務に係る委託契約を締結している。

URコミュニティは、団地管理業務に係る委託契約において、機構が管理する賃貸住宅等の居住者等の入退去に関する業務、家賃の収納業務、共益費の運営に関する業務等を行うこととなっている。

(2) 賃貸住宅に係る共益費等の概要等

ア 賃貸住宅に係る共益費等の概要

機構は、「独立行政法人都市再生機構賃貸住宅団地管理規程」(平成16年規程第54号)等に基づき、賃貸住宅団地における清掃費等の共用部分の維持等に必要な経費に充当するために、居住者等から共益費を徴している。そして、機構の東日本賃貸住宅本部(以下「本部」という。)及び中部、西日本、九州各支社(以下、当該3支社と本部を合わせて「4支社等」という。)は、それぞれ、団地ごとに共益費の収支を管理し、前年度の収支内容を記した資料(以下「収支状況表」という。)及び当年度の共益費の運営計画を記した資料(以下「運営計画表」といい、収支状況表と運営計画表を合わせて「収支状況表等」という。)を作成し、居住者等に対して公表している。

イ 収支状況表等の公表方法等

機構は、居住者等に対する収支状況表等の公表について、URコミュニティに団地管理業務の中で実施させており、その方法については、機構において収支状況表等は信書に該当すると考えていること、居住者等の大多数が各住戸への配布を求めていること、居住者等に確実に配布する必要があることなどから、平成30年度から郵送により行っている。そして、URコミュニティは、4支社等の指示を受け、全国各地に設置している住まいセンターごとに、収支状況表等を毎年度おおよそ8月に居住者等に郵送しており、機構は、URコミュニティに対して郵便料金の実費に相当する額を委託費として支払っている。

(3) 郵便料金の割引制度等の概要

日本郵便株式会社は、郵便料金について、同社の定めた内国郵便約款(以下「郵便約款」という。)により、割引制度等として、区分郵便物の割引制度(以下「区分郵便割引制度」という。)及び郵便区内特別郵便物の特別料金制度(以下「特別料金制度」という。)を次のように設けている。

ア 区分郵便割引制度

区分郵便割引制度は、郵便物の形状、重量等が同一で、差出人が、受取人の住所又は居所の郵便区番号(注1)ごとに区分して、これらを同時に2,000通以上差し出すなどした場合に適用を受けることができるものであり、基本割引と特別割引とがある。そして、基本割引の割引率は、差出通数が2,000通以上10,000通未満の場合は3%、10,000通以上50,000通未満の場合は4%等となっている。また、特別割引は、基本割引に加算して受けられる割引であり、その割引率は、差出人が、郵便約款に定められている送達日数(注2)に加えて送達に3日程度の余裕の承諾(以下、この承諾を「3日余裕の承諾」という。)をした場合、4%等となっている。

(注1)
郵便区番号  郵便局における郵便物の配達区域を示す番号。郵便番号7桁のうち前から3桁又は5桁の番号
(注2)
送達日数  原則として、差し出された日の翌日から起算して3日以内(ただし、日曜日、休日等は除く。)とされている。

イ 特別料金制度

特別料金制度は、郵便物の形状、重量等が同一で、差出人が、同一の郵便区内のみにおいて配達が行われる郵便物を当該郵便区内の配達を行う郵便局に同時に100通以上差し出すなどした場合に適用を受けることができるものである。そして、重量25g以内の基本料金1通82円(令和元年10月以降は84円)の定形郵便物について、差出通数が1,000通未満であるなどの場合の特別料金は72円(割引率12.2%)(同73円(割引率13.1%))、差出通数が1,000通以上であって、差出人が3日余裕の承諾をするなどした場合の特別料金は56円(割引率31.7%)(同57円(割引率32.1%))等となっている。また、特別料金制度は、区分郵便割引制度と併用して適用を受けることはできないこととなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、団地管理業務の委託に当たり、収支状況表等の郵送について割引制度等を適切に活用することにより郵送に係る費用の節減が図られているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、平成30、令和元両年度に4支社等がURコミュニティに郵送させた収支状況表等を封入した郵便物のうち、住まいセンターごとに形状、重量等が同一で同時に2,000通以上差し出されていた郵便物計144万余通の郵送に係る郵便料金相当の支払額計1億2021万余円(平成30年度6824万余円、令和元年度5196万余円)を対象として、機構本社及び4支社等において、収支状況表等の郵送に関する関係書類により、割引制度等の適用状況、収支状況表等の郵送状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 適用可能な割引制度等の適用を受けていなかった事態

平成30年度に4支社等の郵便物の郵送を担当した24住まいセンター及び令和元年度に4支社等の郵便物の郵送を担当した26住まいセンターが差し出した前記144万余通の郵便物に係る割引制度等の適用状況について確認したところ、平成30年度は21住まいセンター、令和元年度は22住まいセンターにおいて、全ての郵便物について割引制度等の適用を受けていなかった。また、平成30年度は3住まいセンター、令和元年度は4住まいセンターにおいて、割引制度等の適用を受けていなかったり、割引制度等の適用を受けていても、その適用が区分郵便割引制度の基本割引のみであったりなどしていた。

しかし、これらの住まいセンターは、それぞれ、形状、重量等が同一の郵便物を同時に2,000通以上差し出しており、また、収支状況表等の公表には期限が設けられておらず、送達にある程度の日数の余裕をみても支障がないことから、3日余裕の承諾が可能であった。このようなことなどから、住まいセンターが差し出した上記144万余通の郵便物全てについて、少なくとも区分郵便割引制度の基本割引及び特別割引の適用を受けることなどが可能であったと認められた。

また、住まいセンターごとの差出通数は50,000通未満であり、差出通数が50,000通未満で、区分郵便割引制度及び特別料金制度のどちらも適用を受けることが可能である場合には、特別料金制度の適用を受ける方が安価に郵送することができることとなる。そこで、平成30、令和元両年度に郵送した郵便物の郵送先についての情報が保存されていなかったため、特別料金制度の適用を受けることが可能であった郵便物の通数を把握することはできなかったが、2年3月時点の居住者等の情報を基に郵便物を郵送すると仮定した場合に特別料金制度が適用可能かを機構に調査させたところ、特別料金制度の適用を受けることが可能な郵便物が62万余通のうち少なくとも9万余通あるとのことであった。そして、平成30年度及び令和元年度の郵送時点での団地数及び居住者数は、上記の調査時点と比べて大きな変動がないことなどから、上記郵便物144万余通の中には、少なくとも上記と同程度の割合で特別料金制度の適用を受けることが可能である郵便物があったと認められた。

(2) 収支状況表と運営計画表を一通にまとめて郵送していなかった事態

平成30、令和元両年度における収支状況表と運営計画表の郵送状況について確認したところ、本部の郵便物の郵送を担当した2住まいセンターは、収支状況表と運営計画表を別々に郵送しており、その通数は計19万余通となっていた。

しかし、「共益費の運営について」(平成16年理事通達84―36)によれば、収支状況表と運営計画表について、原則として同時に公表することとされており、別々に郵送することは求められていないこと、また、他の住まいセンターでは1通にまとめて郵送しても支障が生じていないことから、上記の2住まいセンターは、収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送することにより、郵便物の通数を9万余通削減することが可能であったと認められた。

このように、区分郵便割引制度又は特別料金制度の適用を受けていなかったり、収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送していなかったりしたことなどにより、団地管理業務の委託における郵送に係る費用の節減が図られていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた郵送に係る支払額)

団地管理業務の委託に当たり、4支社等において、URコミュニティに、前記のとおり適用できる郵便物の通数を把握することができなかった特別料金制度の適用は考慮せず、少なくとも適用を受けることが可能であった区分郵便割引制度の基本割引及び特別割引の適用を受けさせるなどしたり、本部において、収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送させたりしたとすれば、郵送に係る支払額を平成30年度984万余円、令和元年度776万余円、計1761万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、4支社等においてURコミュニティに区分郵便割引制度又は特別料金制度の適用を受けさせることについての理解が十分でなかったり、本部において収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送することについてのURコミュニティへの指示が十分でなかったりしたこと、機構本社において、区分郵便割引制度又は特別料金制度の適用を受けたり、収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送したりすることとすることについての周知が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、2年6月に、4支社等に対して事務連絡を発して、団地管理業務の委託に当たり、2年度以降の収支状況表等の郵送について、特別料金制度の適用を受けることが可能である場合には特別料金制度の適用を受け、そうでない場合には区分郵便割引制度の適用を受けたり、収支状況表と運営計画表を1通にまとめて郵送したりすることとして、郵送に係る費用の節減を図るよう周知するなどの処置を講じた。