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実験動物飼育管理業務委託契約において、会計規程等に反して、委託業務の一部に係る経費相当分を含めずに予定価格を算定し、当該業務に係る経費について、競争に付することなく契約書とは別途に交わした覚書により支払っていて、契約手続が適正に行われていなかったもの[国立研究開発法人国立がん研究センター](203)


科目
委託費
部局等
国立研究開発法人国立がん研究センター
契約名
実験動物飼育管理業務委託契約
契約の概要
実験動物の飼育管理、飼育ケージ交換等の業務を委託するもの
契約の相手方
株式会社ケー・エー・シー
契約
平成27年4月、30年2月 一般競争契約
支払額
267,738,935円(平成27年6月~令和2年1月)
上記のうち会計規程等に反して競争に付していない覚書による支払額
110,227,309円(平成27年6月~令和2年1月)

1 実験動物飼育管理業務委託契約の概要等

(1) センターの概要

国立研究開発法人国立がん研究センター(以下「センター」という。)は、「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律」(平成20年法律第93号)に基づき設立された国立高度専門医療研究センターの一つであり、国の医療政策として、がんその他の悪性新生物に関する高度かつ専門的な医療の向上を図り、もって公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的として、がんその他の悪性新生物に係る医療に関する調査、研究及び技術の開発、これらの業務に密接に関連する医療の提供等を行っている。

センターは、東京都中央区に中央病院、研究所等(以下「築地キャンパス」という。)を、千葉県柏市に東病院等(以下「柏キャンパス」という。)を設置している。

(2) 実験動物飼育管理業務委託契約の概要

センターは、築地、柏両キャンパスにおける実験動物の飼育管理、飼育ケージ交換等の業務を一括で委託するために、平成27年4月及び30年2月に、実験動物飼育管理業務委託契約(以下「飼育管理契約」という。)を株式会社ケー・エー・シー(以下「会社」という。)との間で一般競争入札により締結している。27年4月に締結した契約(以下「27年度契約」という。)の当初の契約期間は27年4月1日から29年3月31日までであったが、センターは、29年4月に、契約期間を27年4月1日から30年3月31日までに1年間延長する変更契約を締結している。また、30年2月に締結した契約(以下「30年度契約」という。)の契約期間は30年4月1日から令和3年3月31日までとなっている。そして、センターは、2年1月までに27年度契約分170,551,811円、30年度契約分97,187,124円、計267,738,935円を支払っている。

(3) 契約手続の概要

センターが売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合には、公正性、透明性及び競争性を確保するために、国立研究開発法人国立がん研究センター会計規程(平成22年規程第41号)及び国立研究開発法人国立がん研究センター契約事務取扱細則(平成22年細則第3号。以下、これらを「会計規程等」という。)に基づき、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないこととなっている。また、予定価格は契約する事項の価格の総額について定めなければならないこととなっている。ただし、一定期間継続してする売買等の契約の場合においては、単価によることができることとなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性、経済性等の観点から、飼育管理契約に係る契約手続は適正に行われているかなどに着眼して、飼育管理契約の支払額(27年度契約170,551,811円、30年度契約97,187,124円、計267,738,935円)を対象として、センターにおいて、契約書、仕様書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

センターは、従前から、築地キャンパスと柏キャンパスとで実験動物の飼育管理等を行う施設等が異なっていることなどから、飼育管理契約の仕様書を築地キャンパス分と柏キャンパス分に分けて作成していた。

上記委託業務のうち実験動物の飼育区域の保清管理及び飼育ケージ交換の業務(以下「ケージ交換等業務」という。)に係る経費の取扱いについて、仕様書における記載の内容を確認したところ、柏キャンパス分では他の経費と区別するような記載はなかったが、築地キャンパス分では契約締結後に別途覚書を交わし単価契約とする旨が記載されていた。そして、センターは、27年度契約及び30年度契約において、それぞれの仕様書に基づいて、柏キャンパス分のケージ交換等業務の経費相当分については過去の実績等を基にするなどして予定価格に含めていたが、築地キャンパス分のケージ交換等業務の経費相当分については予定価格に含めることなく算定し、それぞれの予定価格によって一般競争の入札等の手続を行っていた。

そして、センターは、それぞれの契約を締結した後に、予定価格に含めなかった築地キャンパス分のケージ交換等業務に係る経費について、会社と覚書を締結して、実験動物飼育区域保清管理料として月額735,000円(27年度契約及び30年度契約、消費税抜きの金額)、及びケージ交換費として1飼育ケージ当たり63円(27年度契約のうち平成27年4月1日から29年6月30日までの間の履行分)又は120円(27年度契約のうち29年7月1日から30年3月31日までの間の履行分及び30年度契約、それぞれ消費税抜きの金額)の単価に飼育ケージの交換数を乗じて得た額の合計額に、消費税相当額を加えた額を、契約書に記載されている契約金額(以下「契約書の金額」という。)とは別途に支払うこととしていた。その結果、センターは、築地キャンパス分のケージ交換等業務に係る経費について、競争に付することなく、覚書に基づく業務代金として、契約書の金額に基づく支払額27年度契約99,804,960円、30年度契約57,706,666円(令和2年1月までの分)、計157,511,626円の約7割に相当する27年度契約70,746,851円、30年度契約39,480,458円(2年1月までの分)、計110,227,309円を支払っていた。

しかし、前記のとおり、予定価格は契約する事項の価格の総額について定めなければならないこととなっており、柏キャンパス分だけではなく築地キャンパス分のケージ交換等業務も委託業務に含まれるのであるから、築地キャンパス分のケージ交換等業務に係る経費について、築地キャンパスにおける過去の実績を基にするなどして飼育ケージの予定交換数を見込んで、これに上記の単価を乗ずるなどしてケージ交換等業務に係る経費相当分を算定し、これを含めた総額の予定価格を算定するなどした上で、27年度契約及び30年度契約の契約手続を行う必要があった。

このように、本件飼育管理契約について、ケージ交換等業務に係る経費相当分を含めずに予定価格を算定して、当該業務に係る経費について、競争に付することなく契約書とは別途に交わした覚書により支払っていた事態は、契約手続が会計規程等に反しているとともに、競争による利益を十分に享受できないものとなっていて適正とは認められず、上記の覚書による支払額110,227,309円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、センターにおいて、飼育管理契約の締結に当たり、会計規程等を遵守して契約手続を適正に行うことの認識が欠けていたことなどによると認められる。