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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
45省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
35省庁等、341件 8,451,620,176円
(検査報告 昭和21年度~平成30年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
35省庁等、331件 8,273,441,567円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

  • ① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
  • ② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付するなどすることによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
  • ③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
  • ④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成30年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する45省庁等における令和2年7月末現在の是正措置の状況を対象として、13省等において会計実地検査を行うとともに、残りの32省庁等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

昭和21年度から平成30年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものが35省庁等における341件8,451,620,176円(注1)ある。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが35省庁等における331件8,273,441,567円、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注2)における3件2,028,550円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが4省(注3)における8件176,150,059円ある。これを、平成30年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、29年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注1)
341件8,451,620,176円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても341件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
(注2)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注3)
4省  農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省

(1) 平成30年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況

検査の結果、平成30年度決算検査報告に掲記した不当事項254件(指摘金額の合計5,721,871,305円)のうち、240件5,492,756,176円(注4)については令和2年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの14件229,115,129円については2年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが9件104,242,430円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが3省(注5)における5件124,872,699円ある。

(注4)
240件5,492,756,176円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが199件4,264,824,725円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが2件91,472,470円、手直し工事等による是正措置が完了したものが37件1,038,127,756円、再発防止策による是正措置が講じられたものが6件98,331,225円ある。
(注5)
3省  農林水産省、国土交通省、環境省

表1 平成30年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(内閣府本府) 10 174,113,690 9 145,834,690 1 28,279,000 1 28,279,000
総務省 5 605,768,312 5 605,768,312
財務省 1 212,122,739 1 212,122,739
文部科学省 36 664,749,905 36 664,749,905
厚生労働省 81 1,752,429,909 73 1,676,466,479 8 75,963,430 7 74,866,878 1 1,096,552
農林水産省 24 124,379,478 24 124,379,478
経済産業省 10 54,548,098 10 54,548,098
国土交通省 17 262,530,282 17 262,530,282
環境省 8 111,244,000 8 111,244,000
防衛省 1 73,185 1 73,185
省庁計 193 3,961,959,598 184 3,857,717,168 9 104,242,430 8 103,145,878 1 1,096,552
日本私立学校振興・共済事業団 12 278,401,000 12 278,401,000
日本年金機構 1 1,309,000 1 1,309,000
独立行政法人地域医療機能推進機構 1 26,671,929 1 26,671,929
阪神国際港湾株式会社 1 200,650,000 1 200,650,000
団体計 15 507,031,929 15 507,031,929
合計 208 4,369,067,155 199 4,264,824,725 9 104,242,430 8 103,145,878 1 1,096,552
  • 注(1) 令和2年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。
  • 注(2) 国土交通省のうち1件及び阪神国際港湾株式会社の1件は、国土交通省及び阪神国際港湾株式会社の両方に係る指摘であり、「金銭を返還させる是正措置を必要とするもの」及び「是正措置が完了しているもの」の金額の合計に当たっては、その重複分を控除している。

(2) 平成29年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から平成29年度までの検査報告に掲記した不当事項において、令和元年7月末現在で是正措置が未済となっていた366件9,298,581,207円のうち、39件1,076,076,160円(注6)については2年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの327件8,222,505,047円については2年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが322件8,169,199,137円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注7)における3件2,028,550円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが2省(注8)における3件51,277,360円ある。

(注6)
39件1,076,076,160円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが37件993,673,419円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが24件608,341,559円ある。このほか、手直し工事等による是正措置が完了したものが2件78,095,718円、再発防止策による是正措置が講じられたものが2件4,307,023円ある。
(注7)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注8)
2省  農林水産省、防衛省

表2 平成29年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
裁判所 1 350,000 1 350,000 1 350,000
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
総務省 1 1,097,200 0 38,400 1 1,058,800 1 1,058,800
法務省 9 800,940,112 9 800,940,112 8 800,613,112 1 327,000
外務省 2 22,844,049 2 22,844,049 1 11,914,499 1 10,929,550
財務省 12 361,833,283 3 35,514,033 9 326,319,250 5 315,388,318 4 10,930,932
文部科学省 1 55,043,000 1 55,043,000
厚生労働省 131 1,967,322,568 15 291,148,890 116 1,676,173,678 10 134,398,610 99 1,405,787,078 7 135,987,990
農林水産省 9 108,258,236 1 71,135,000 8 37,123,236 6 30,547,363 2 6,575,873
経済産業省 9 99,036,407 0 216,000 9 98,820,407 1 11,859,284 7 85,504,332 1 1,456,791
国土交通省 6 90,884,237 0 48,543 6 90,835,694 5 86,923,384 1 3,912,310
環境省 5 242,791,350 2 25,231,000 3 217,560,350 3 217,560,350
防衛省 8 73,961,842 1 1,257,883 7 72,703,959 6 68,988,284 1 3,715,675
省庁計 195 3,826,576,284 23 479,632,749 172 3,346,943,535 38 1,432,649,491 119 1,759,015,458 15 155,278,586
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
全国健康保険協会 3 17,895,815 0 2,282,683 3 15,613,132 3 15,613,132
独立行政法人造幣局 1 83,444,600 0 66,644,230 1 16,800,370 1 16,800,370
独立行政法人国際交流基金 1 3,618,847 0 28,633 1 3,590,214 1 3,590,214
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 354,000 0 36,000 1 318,000 1 318,000
独立行政法人自動車事故対策機構 1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
独立行政法人国立病院機構 2 26,216,105 0 37,073 2 26,179,032 1 754,921 1 25,424,111
独立行政法人中小企業基盤整備機構 1 578,061 1 578,061 1 578,061
国立研究開発法人国立がん研究センター 3 31,423,181 3 31,423,181 3 31,423,181
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 1 23,242,642 0 1,909,764 1 21,332,878 1 21,332,878
国立大学法人筑波大学 1 10,311,079 0 20,000 1 10,291,079 1 10,291,079
国立大学法人東京大学 1 4,867,575 1 4,867,575 1 4,867,575
国立大学法人京都大学 1 16,448,650 0 775,000 1 15,673,650 1 15,673,650
国立大学法人大阪大学 1 200,000 0 40,000 1 160,000 1 160,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,016,000 1 8,016,000 1 8,016,000
国立大学法人山口大学 1 120,179,462 1 120,179,462 1 120,179,462
国立大学法人佐賀大学 1 1,118,250 1 1,118,250
日本放送協会 1 44,546,640 1 44,546,640
東日本電信電話株式会社 1 34,843,995 0 60,000 1 34,783,995 1 34,783,995
日本郵便株式会社 6 783,212,527 1 21,130,000 5 762,082,527 4 709,708,940 1 52,373,587
株式会社ゆうちょ銀行 94 3,240,276,278 9 319,270,545 85 2,921,005,733 85 2,921,005,733
株式会社かんぽ生命保険 54 865,477,468 6 55,761,852 48 809,715,616 48 809,715,616
独立行政法人農業者年金基金 3 2,461,800 0 380,000 3 2,081,800 3 2,081,800
団体計 164 5,336,296,272 14 514,040,670 150 4,822,255,602 132 4,543,718,680 13 169,316,043 5 109,220,879
合計 359 9,162,872,556 37 993,673,419 322 8,169,199,137 170 5,976,368,171 132 1,928,331,501 20 264,499,465
  • 注(1) 令和元年8月1日から2年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、2年7月31日現在の名称としている。
  • 注(2) 日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
  • 注(3) 是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人国際交流基金、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から平成29年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので令和2年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、322件8,169,199,137円ある。これらに対する直近1年間(元年8月1日から2年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注9)

(注9)
債務者等が複数存在するため1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は322件と一致しない。
(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの

省庁 112件 1,792,003,245円
団体 114件 3,548,177,432円

これらは、分割納付等が行われているものであるが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注10)は、省庁105,156,188円、団体24,295,736円となっている。

(注10)
直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの

省庁 82件 1,524,012,675円
団体 48件 1,242,190,495円

これらは、是正措置の完了に向けて督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における40件1,070,013,245円に係る債権は、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁 12件 30,927,615円
団体 6件 31,887,675円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているため、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。