ページトップ
  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 文部科学省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(5) 文化財多言語解説整備事業費補助金が過大に交付されていたもの[長崎県](28)


1件 不当と認める国庫補助金 1,269,000円

文化財多言語解説整備事業費補助金は、「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律」(平成9年法律第91号)、文化財多言語解説整備事業費補助金(文化財多言語解説整備事業)交付要綱(平成30年文化庁長官決定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、文化財に関する先進的、高次元な多言語解説を整備し、訪日外国人旅行者数の増加及び訪日外国人旅行者の地域での体験滞在の満足度を向上させることを目的として、補助事業を行う者に対して、事業に要する経費の一部を国が補助するものである。

交付要綱等によれば、補助事業の補助対象経費は、国指定等文化財に関する先進的、高次元な技術を利用した多言語解説を行うためのコンテンツ制作に係る経費とされている。

本院が、2市、6会社等計8事業主体において会計実地検査を行ったところ、1事業主体において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
補助対象経費 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める補助対象経費 不当と認める国庫補助金
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(28)
長崎県
株式会社ハコスコ
文化財多言語解説整備
30 29,541 17,134 2,188 1,269 仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額の報告及び返還を行っていなかったもの

この補助事業は、株式会社ハコスコが、平成30年度に「世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」多言語VR(注1)コンテンツ制作事業」を行ったものである。そして、当該補助事業においては、補助対象経費に本件補助事業で外注したコンテンツ制作に係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)額が含まれていた。

消費税の課税事業者である事業主体が補助の対象となるコンテンツ制作を外注することは課税仕入れに該当することから、確定申告の際に課税売上高に対する消費税額から当該コンテンツ制作の外注に係る消費税額を仕入税額控除(注2)した場合には、事業主体はこれに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、交付要綱において、事業主体は、補助事業完了後に消費税の確定申告により仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金相当額が確定した場合には、その額を速やかに都道府県に報告し、当該金額を返還しなければならないこととなっている。

しかし、同会社は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、本件補助事業に係る消費税額2,188,280円を仕入税額控除していたのに、これに係る国庫補助金相当額1,269,000円について報告及び返還を行っておらず、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同会社において補助事業における消費税の取扱いに対する理解が十分でなかったこと、長崎県において補助事業における消費税の取扱いについての指導及び審査が十分でなかったことによると認められる。

(注1)
VR  Virtual Reality の略。仮想現実
(注2)
仕入税額控除  課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除すること