3件 不当と認める国庫補助金 56,488,799円
義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県又は政令指定都市(平成28年度以前は都道府県。以下「都道府県等」という。)に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県等の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書及び第三条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。28年度以前は「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県等ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。
算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。
このうち、基礎給料月額等は、教職員一人当たりの給料の月額及び諸手当の単価について、「義務教育費国庫負担法第二条ただし書及び第三条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則」(平成16年文部科学省令第28号。以下「限度規則」という。)等に基づき、都道府県等ごとに当該年度の5月1日に在職する教職員を対象として算定することとなっている。そして、算定基礎定数は、都道府県等ごとに当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注)等を基礎として教職員の定数(以下「標準定数」という。)を算定し、更に地方公務員法(昭和25年法律第261号)第26条の6第7項の規定により任期を定めて採用される者及び臨時的に任用される者(以下、これらを合わせて「配偶者同行休業代替教職員」という。)等の実数を加えるなどして算定することとなっている。
本院が、11県及び1市において会計実地検査を行い、また、8都府県及び1市から負担金の交付に関する資料の提出を受けるなどして検査したところ、2県1市において、算定総額の算定に当たり、基礎給料月額等の算定が過大となっていたり、算定基礎定数の算定が過大となっていたりしていた。これらの結果、負担金計56,488,799円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県1市において、基礎給料月額等及び算定基礎定数の算定方法についての理解並びに算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。
基礎給料月額等のうち、基礎給料月額は、都道府県等の規則等で定めるところにより算定した教職員として在籍した年数(以下「経験年数」という。)に応じて、職種ごとに、限度規則で定められた月額単価に当該経験年数の教職員の実数を乗じて算定した額の合計額を、教職員の実数で除して得た額とすることとなっている。そして、栄養教諭のうち、学校栄養職員として在職し、引き続いて栄養教諭となった者に係る経験年数については、限度規則で定めるところにより、学校栄養職員としての経験年数をその年数に応ずる月額単価の直近上位の栄養教諭の月額単価に応ずる経験年数に置き換えて、当該置き換えた経験年数と栄養教諭としての経験年数を合算した年数を栄養教諭としての経験年数とみなすこととなっている。
1県において、小中学校の基礎給料月額等の算定に当たり、学校栄養職員として在職し、引き続いて栄養教諭となった者に係る経験年数の算定において、必要な経験年数の置き換えを行わずに栄養教諭としての経験年数に学校栄養職員としての経験年数をそのまま合算して経験年数を算定していたことにより、算定総額が過大に算定されていた。
前記のとおり、算定基礎定数は当該年度の5月1日現在における標準学級数等を基礎として算定することとなっている。そして、算定基礎定数の算定に必要な小学校に係る標準学級数は、第1学年と引き続く学年の児童数がいずれも4人以下である場合は、第2学年に児童が在籍しないため引き続く学年が第2学年でない場合であっても、当該二つの学年の児童を1学級に編制して算定することとなっている。また、学校教育法(昭和22年法律第26号)第81条に規定する小中学校の特別支援学級の標準学級数は、二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下である場合は、当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定することとなっている。
また、小中学校の事務職員の標準定数は、4学級以上の小中学校の数の合計数に1を乗じて得た数等を合計した数となっているが、同一の設置者が設置する小学校及び中学校で4学級から6学級までの小学校及び4学級又は5学級の中学校が500mの範囲内に存する場合には1校とみなすこととなっている。
さらに、小中学校の栄養教諭等の標準定数は、学校給食を実施するために必要な施設を置く小中学校(以下「単独実施校」という。)の数等を基礎として算定した数となっているが、この場合において、分校は1校とはみなさず、本校に含めることとなっている。
2県1市において、算定基礎定数の算定に当たり、次の①から④までの事態により、算定総額が過大に算定されていた。
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例(①及び②の事態)>
熊本市は、平成29、30両年度において、小中学校の教職員の算定基礎定数を29年度3,863人及び30年度3,899人とし、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に29年度8,273,884,219円及び30年度8,346,938,899円の負担金の交付を受けていた。
しかし、同市は、上記算定基礎定数の算定に当たり、小中学校の標準学級数を29年度2,251学級及び30年度2,261学級とすべきところ、特別支援学級に編制する二つ以上の学年の児童生徒数の合計数が8人以下であるのに当該複数学年の児童生徒を1学級に編制していなかったなどのため、29年度2,253学級及び30年度2,265学級と算定していた。
また、同市は、小中学校の事務職員の標準定数の算定に当たり、29年度の4学級以上の学校数を132校とすべきところ、同市が設置する6学級の小学校と4学級の中学校とが500mの範囲内に存するのに1校とみなさずに2校としていたため、133校と算定していた。
したがって、適正な標準学級数等により適正な算定基礎定数を算定すると29年度3,859人及び30年度3,892人となり、これらに基づき適正な負担金の額を算定すると29年度8,265,661,112円及び30年度8,332,705,824円となることから、29年度8,223,107円及び30年度14,233,075円が過大に交付されていた。
以上を部局等別に示すと次のとおりである。
部局等
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補助事業者
(事業主体)
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年度
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算定総額 |
左に対する負担金交付額
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不当と認める算定総額
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不当と認める負担金交付額
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摘要
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(29) |
文部科学本省
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熊本市
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29、30 | 49,862,469 | 16,620,823 | 67,368 | 22,456 |
算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(イ①及びイ②の事態)
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(30) |
岩手県
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岩手県
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28~30 | 186,698,647 | 62,232,744 | 59,821 | 19,940 |
同(イ①、イ②及びイ③の事態)
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(31) |
福島県
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福島県
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29、30 | 169,260,307 | 56,420,102 | 42,276 | 14,092 |
基礎給料月額等の算定が過大となっていたなどのもの(ア、イ①及びイ④の事態)
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(29)―(31)の計 | 405,821,424 | 135,273,670 | 169,466 | 56,488 |