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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
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農林業職場定着支援事業等の委託費の算定に当たり、架空の請求書を発行させるなどして実際には支払っていない印刷費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[厚生労働本省](34)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)労働条件確保・改善対策費
労働保険特別会計 (雇用勘定) (項)地域雇用機会創出等対策費
部局等
厚生労働本省
契約名
農林業職場定着支援事業委託等3契約
契約の概要
農業生産法人等の事業主、労務担当者等を対象とした農業の雇用管理改善の促進のための研修等を実施するもの
契約の相手方
株式会社日本旅行
契約
平成29年4月、30年4月 一般競争契約
支払額
159,165,226円(平成29、30両年度)
過大となっていた支払額
35,018,313円(平成29、30両年度)

1 農林業職場定着支援事業(農業雇用改善推進事業)等の概要

厚生労働本省は、農業生産法人等の事業主、労務担当者等を対象とした農業の雇用管理改善の促進のための研修等を実施する農林業職場定着支援事業(農業雇用改善推進事業)(以下「定着事業」という。)及び中学校、高等学校等の生徒等に対して過労死等の労働問題や労働条件の改善等についての理解が深まるように啓発を行う「過労死等防止対策等労働条件に関する啓発事業」(以下「啓発事業」という。また、「定着事業」と「啓発事業」を合わせて「委託事業」という。)をそれぞれ委託して実施している。

委託費の対象とすることができる経費は、委託事業の実施に要する経費であり、①委託事業に従事する者に係る人件費、②講師謝金、講師旅費、印刷製本費等に係る事業費等となっている。

委託契約によれば、厚生労働本省は、委託事業が終了して、受託者から精算報告書の提出を受けたときは、遅滞なくその内容を審査して、適正と認めたときは、委託事業に要した額と委託契約額のいずれか低い額を委託費の額として確定し、委託費を支払うこととされている。

そして、厚生労働本省は、一般競争入札により株式会社日本旅行(以下「会社」という。)との間で、平成29年4月及び30年4月に委託契約(29年度定着事業に係る契約金額99,360,000円、30年度定着事業に係る契約金額77,760,000円、29年度啓発事業に係る契約金額17,820,000円)をそれぞれ締結して、委託費として計159,165,226円(29年度定着事業79,598,439円、30年度定着事業67,919,586円、29年度啓発事業11,647,201円)を30年4月及び31年4月に会社に支払っている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、委託事業を対象として、会社において、委託契約書、精算報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、厚生労働本省から関係書類の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

(1)人件費に関する事態

会社は、業務日誌に基づき、職員12名が定着事業に従事したとして、人件費計70,636,374円(29年度37,306,313円、30年度33,330,061円)を精算報告書に計上していた。

しかし、人件費の算定根拠である業務日誌の記載内容を確認したところ、定着事業に従事していたとする日時には、一部の職員が休暇を取得したり、他の事業に従事したりするなど定着事業に従事していなかった日時が含まれていた。そして、業務日誌を作成した会社の統括管理者に対して、業務日誌の作成状況を確認したところ、業務日誌は、定着事業への実際の従事状況に基づくことなく作成されていたことが判明した。

そこで、委託事業に従事した職員に対して定着事業への従事状況を確認したところ、多くの職員は、定着事業以外の事業に主として従事するなどしていて、定着事業への実際の従事時間は、業務日誌に記載された時間数を下回っているとしていた。したがって、上記の確認結果に基づくなどして人件費を算定すると計48,727,084円(29年度定着事業25,019,706円、30年度定着事業23,707,378円)となり、人件費計21,909,290円(29年度定着事業12,286,607円、30年度定着事業9,622,683円)が精算報告書に過大に計上されていた。

(2)印刷費に関する事態

会社は、委託事業の実施に必要な講義資料等の印刷を印刷業者Aへ発注して印刷物の納品を受けたとして、印刷費計19,978,326円(29年度定着事業7,142,904円、30年度定着事業12,555,000円、29年度啓発事業280,422円)を印刷業者Aに支払ったとして精算報告書に同額を計上していた。

しかし、会社は、上記講義資料等のうち相当部分について、印刷物の納品を受けた事実はなく、実際に支払った印刷費は上記19,978,326円のうち計2,596,212円(29年度定着事業1,168,560円、30年度定着事業1,427,652円、29年度啓発事業0円)であった。このため、会社は印刷業者Aに架空の請求書を発行させたり、請求書の印刷部数を水増しさせたりなどして、実際に支払った上記の印刷費に、実際に支払っていない印刷費計17,382,114円(29年度定着事業5,974,344円、30年度定着事業11,127,348円、29年度啓発事業280,422円)を加えた額を精算報告書に計上していた。

(1)、(2)のほか、会社は、委託費の対象とすることができない懇親会に係る経費等計193,207円(29年度定着事業104,599円、30年度定着事業76,771円、29年度啓発事業11,837円)を精算報告書に計上していた。

したがって、これらの経費等を除くなどして適正な委託費の額を算定すると、それぞれ29年度定着事業は61,306,539円、30年度定着事業は51,485,435円、29年度啓発事業は11,354,939円となり、委託費の支払額79,598,439円、67,919,586円、11,647,201円との差額18,291,900円、16,434,151円、292,262円、計35,018,313円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、会社において委託費の適正な精算に対する基本的な認識が著しく欠けていたこと、厚生労働本省において精算報告書に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。