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医療費に係る国の負担が不当と認められるもの[厚生労働本省、7厚生(支)局、13都道府県](38)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)医療保険給付諸費
(項)生活保護等対策費
(項)障害保健福祉費
部局等
厚生労働本省、7厚生(支)局(指導監督庁)、13都道府県
国の負担の根拠
健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)等
医療給付の種類
健康保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、生活保護法等に基づく医療
実施主体
全国健康保険協会、都、道、府2、県5、市148、特別区20、町48、村4、国民健康保険組合9、後期高齢者医療広域連合35、計274実施主体
医療機関数
76医療機関
過大に支払われていた医療費に係る診療報酬項目
入院基本料、リハビリテーション料、初診料・再診料等
過大に支払われていた医療費の件数
34,975件(平成27年度~令和2年度)
過大に支払われていた医療費の額
384,617,135円(平成27年度~令和2年度)
不当と認める国の負担額
152,387,784円(平成27年度~令和2年度)

1 医療給付の概要

(1)医療給付の種類

厚生労働省所管の医療保障制度には、後期高齢者医療制度、医療保険制度及び公費負担医療制度があり、これらの制度により次の医療給付が行われている。

ア 後期高齢者医療制度において、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号。以下「高齢者医療確保法」という。)に基づき、各都道府県の区域内に住所を有する後期高齢者(75歳以上の者又は65歳以上75歳未満の者で一定の障害の状態にある者をいう。以下同じ。)に対して後期高齢者医療の事務を処理するために当該都道府県の区域内の全ての市町村(特別区を含む。以下同じ。)が加入する後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」という。)が行う医療

イ 医療保険制度の一環として、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)等(以下「医療保険各法」という。)に規定する保険者が、医療保険各法に基づき、後期高齢者を除く被保険者(被扶養者を含む。以下同じ。)に対して行う医療

ウ 公費負担医療制度の一環として、都道府県又は市町村が、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき被保護者等に対して行う医療

(2)診療報酬

これらの医療給付においては、被保険者((1)ウの被保護者等を含む。以下同じ。)が医療機関で診察、治療等の診療を受けた場合等に、広域連合、保険者、都道府県又は市町村(以下「保険者等」という。)及び患者が、これらの費用を医療機関等に診療報酬等として支払う。

このうち、診療報酬の支払の手続は、次のとおりとなっている(図参照)。

図 診療報酬の支払の手続

診療報酬の支払の手続

ア 診療を担当した医療機関は、診療報酬として医療に要する費用を、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号。以下「算定基準」という。)等による所定の診療点数に単価(10円)を乗ずるなどして算定する。

イ 医療機関は、診療報酬のうち、患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬(以下「医療費」という。)については、高齢者医療確保法に係るものは広域連合に、医療保険各法に係るものは各保険者に、また、生活保護法等に係るものは都道府県又は市町村に請求する。

このうち、保険者等に対する医療費の請求は、次のように行われている。

(ア) 医療機関は、診療報酬請求書(以下「請求書」という。)に医療費の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して、これらを国民健康保険団体連合会又は社会保険診療報酬支払基金(以下「審査支払機関」と総称する。)に毎月1回送付する。

(イ) 審査支払機関は、請求書及びレセプトにより請求内容を審査点検した後、医療機関ごと、保険者等ごとの請求額を算定して、その後、請求額を記載した書類と請求書及びレセプトを各保険者等に送付する。

ウ 請求を受けた保険者等は、それぞれの立場から医療費についての審査点検を行って金額等を確認した上で、審査支払機関を通じて医療機関に医療費を支払う。

(3)国の負担

保険者等が支払う医療費の負担は次のようになっている。

ア 高齢者医療確保法に係る医療費(以下「後期高齢者医療費」という。)については、広域連合が審査支払機関を通じて支払うが、この費用は国、都道府県、市町村及び保険者が次のように負担している。

(ア) 高齢者医療確保法に基づき、原則として、国は12分の4を、都道府県及び市町村はそれぞれ12分の1を負担しており、残りの12分の6については、各保険者が納付する後期高齢者支援金及び後期高齢者の保険料が財源となっている。

(イ) 国民健康保険法に基づき、国は都道府県等が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。

(ウ) 健康保険法に基づき、国は全国健康保険協会が保険者として納付する後期高齢者支援金に要する費用の額の一部を負担している。

イ 医療保険各法に係る医療費については、国は、患者が、①全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である場合は全国健康保険協会が支払った額の16.4%を、②都道府県及び市町村が行う国民健康保険の一般被保険者である場合は市町村が支払った額の41%を、③国民健康保険組合が行う国民健康保険の被保険者である場合は国民健康保険組合が支払った額の13%から47.4%までを、それぞれ負担している。

ウ 生活保護法等に係る医療費については、国は都道府県又は市町村が支払った医療費の4分の3又は2分の1を負担している。

2 検査の結果

(1)検査の観点及び着眼点

国民医療費は、医療の高度化や人口の高齢化に伴って、平成25年度以降毎年度40兆円を超えている。また、高齢化が急速に進展する中で、国民医療費に占める後期高齢者医療費の割合は上昇傾向となっている。このような状況の中で医療費に対する国の負担も多額に上っていることから、本院は、後期高齢者医療費を中心に、合規性等の観点から、医療費の請求が適正に行われているかに着眼して検査した。

(2)検査の対象及び方法

本院は、7厚生(支)局及び13都道府県において、保険者等の実施主体による医療費の支払について、レセプト、各種届出書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。そして、医療費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合は、地方厚生(支)局及び都道府県に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(3)検査の結果

検査の結果、13都道府県に所在する76医療機関の請求に対して274実施主体において、27年度から令和2年度までの間における医療費が、34,975件で計384,617,135円過大に支払われており、これに対する国の負担額152,387,784円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

これを診療報酬項目の別に整理して示すと次のとおりである。

診療報酬項目
実施主体
(医療機関数)
過大に支払われていた医療費の件数
過大に支払われていた医療費の額
不当と認める国の負担額
千円 千円
①入院基本料 77 市区町村等
(26)
4,755 225,309 88,963
②リハビリテーション料 143 市区町等
(39)
16,800 128,395 52,140
③初診料・再診料等 122 市区町村等
(11)
13,420 30,911 11,284
274 実施主体
(76)
34,975 384,617 152,387
  • 注(1) 複数の診療報酬項目について不適正と認められる請求があった医療機関については、最も多額な診療報酬項目で整理した。
  • 注(2) 計欄の実施主体数は、各診療報酬項目の間で実施主体が重複することがあるため、各診療報酬項目の実施主体数を合計したものとは一致しない。
  • 注(3) ③初診料・再診料等には、初診料・再診料のほかに、入院基本料等加算、在宅医療料及び医学管理料を含む。

このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。

ア 実施主体及び審査支払機関において、医療機関から不適正と認められる医療費の請求があったのにこれに対する審査点検が十分でなかったこと

イ 地方厚生(支)局等及び都道府県において、医療機関に対する指導が十分でなかったこと

(4)過大に支払われていた事態の詳細等

医療費が過大に支払われていた事態について、診療報酬項目の別に、その算定方法及び検査の結果の詳細を示すと次のとおりである。

ア 入院基本料

算定基準等によれば、入院基本料のうち、療養病棟入院基本料等については、療養病棟等に入院している患者に対して、患者の疾患、状態等について厚生労働大臣が定める区分に従い、1日につき所定の点数を算定することとされている。

検査したところ、9都府県に所在する26医療機関において、入院基本料等の請求が不適正と認められるものが4,755件あった。その態様は、療養病棟入院基本料に定められた区分のうち、より低い点数の区分の状態等にある患者に対して、高い区分の点数で算定していたものである。

このため、上記4,755件の請求に対して、77市区町村等において医療費が計225,309,864円過大に支払われており、これに対する国の負担額88,963,629円は負担の必要がなかったものである。

イ リハビリテーション料

算定基準等によれば、リハビリテーション料のうち、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料及び廃用症候群リハビリテーション料については、厚生労働大臣が定める施設基準に適合している旨の届出を地方厚生(支)局長に対して行った医療機関が同大臣の定める患者(以下「対象患者」という。)に対して個別療法であるリハビリテーションを行った場合に、発症、手術等からそれぞれ180日、150日又は120日以内に限り、その届出に係る所定の点数を算定することなどとされている。

ただし、治療を継続することにより状態の改善が期待できるなどの対象患者については、180日を超えて算定することができるなどとされている。

また、介護保険の要介護被保険者等である対象患者に対して、必要があって180日を超えてリハビリテーションを行った場合には、所定の点数より低い点数を算定することなどとされている。

検査したところ、12都道府県に所在する39医療機関において、リハビリテーション料等の請求が不適正と認められるものが16,800件あった。その態様は、180日を超えてリハビリテーションを行った要介護被保険者等である対象患者に対して、所定の点数より低い点数で算定すべきところ、所定の点数で脳血管疾患等リハビリテーション料を算定するなどしていたものである。

このため、上記16,800件の請求に対して、143市区町等において医療費が計128,395,528円過大に支払われており、これに対する国の負担額52,140,111円は負担の必要がなかったものである。

ウ 初診料・再診料等

算定基準等によれば、初診料については、患者の傷病について医学的に初診といわれる医師の診療行為があったときに、また、再診料については、その後の診療行為の都度、それぞれ算定することとされている。ただし、特別養護老人ホーム等に配置されている医師(以下「配置医師」という。)が当該施設の入所者に対して行う診療については、原則として、初診料及び再診料は算定できないこととされている。そして、配置医師でない医師についても、特別養護老人ホーム等の入所者からの求めによってではなく、医学的健康管理のために定期的に訪問して診療する場合は、その医師は配置医師とみなされ、初診料及び再診料は算定できないこととされている。

検査したところ、6都道府県に所在する11医療機関において、初診料・再診料等の請求が不適正と認められるものが13,420件あった。その主な態様は、配置医師でない医師が、医学的健康管理のために定期的に特別養護老人ホーム等を訪問して入所者の診療に当たっていることから、その医師は配置医師とみなされるのに、初診料や再診料を算定していたものである。

このため、上記13,420件の請求に対して、122市区町村等において医療費が計30,911,743円過大に支払われており、これに対する国の負担額11,284,044円は負担の必要がなかったものである。

医療費が過大に支払われていた事態について、医療機関の所在する都道府県別に示すと次のとおりである。

都道府県名
実施主体
(医療機関数)
過大に支払われていた医療費の件数
過大に支払われていた医療費の額
不当と認める国の負担額
摘要
千円 千円
北海道 36 市町等
(4)
5,060 7,954 3,018 ②③
福島県 40 市町村等
(8)
3,572 40,839 15,186 ①②③
埼玉県 45 市区町等
(10)
2,856 91,135 35,084 ①②
千葉県 30 市区町村等
(6)
3,523 46,893 18,129 ①②
東京都 71 市区町村等
(10)
4,641 28,414 11,108 ①②③
神奈川県 4 市町等
(2)
1,438 7,700 2,652 ②③
愛知県 11 市町等
(5)
2,039 19,243 7,344 ①②
大阪府 30 市町等
(7)
4,877 42,915 19,739 ①②③
兵庫県 21 市町等
(9)
2,622 41,307 15,749 ①②③
愛媛県 3 市等
(1)
300 1,597 586
福岡県 21 市町等
(9)
2,945 28,495 12,336
長崎県 10 市町等
(4)
867 12,646 5,063 ①②
鹿児島県 3 市等
(1)
235 15,472 6,387
274 実施主体
(76)
34,975 384,617 152,387
  • 注(1)計欄の実施主体数は、都道府県の間で実施主体が重複することがあるため、各都道府県の実施主体数を合計したものとは一致しない。
  • 注(2)摘要欄の①から③までは、123ページの2(3)の検査の結果の診療報酬項目の別に対応している。