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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(1) 国民健康保険の療養給付費負担金が過大に交付されていたもの[2県](40)―(42)


3件 不当と認める国庫補助金 7,072,224円

国民健康保険は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除いた者を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関して、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等を行う保険である。そして、国民健康保険には、都道府県が当該都道府県内の市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)とともに保険者となって行うもの(注1)(以下「都道府県等が行う国民健康保険」という。)と、国民健康保険組合が保険者となって行うものとがある。

(注1)
平成29年度以前は、市町村が保険者として国民健康保険を行うものとされていたが、国民健康保険法が改正され、30年4月以降は、都道府県も、国民健康保険の財政運営の責任主体として新たに保険者に加わっている。

都道府県等が行う国民健康保険の被保険者は、同法に基づき、当該都道府県の区域内に住所を有する者とされ、一般被保険者と退職被保険者(注2)及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が退職被保険者となるのは、当該被保険者が厚生年金等の受給権を取得した日(ただし、国民健康保険の資格取得年月日以前に年金受給権を取得している場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)となっている。そして、退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内に住所を有する市町村に届出をすることなどとなっている。

(注2)
退職被保険者被用者保険の被保険者であった者で、平成26年度までの間に退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に65歳に達するまでの間において適用される資格を有する者

国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、都道府県等が行う国民健康保険の財政の安定化(平成29年度以前は、市町村が行う国民健康保険の事業運営の安定化)を図るために、同法に基づき、都道府県(29年度以前は市町村)に対して療養給付費負担金(以下「負担金」という。)が交付されている。そして、当該都道府県に対して交付された負担金は、他の公費等と合わせた上で、当該都道府県内の市町村による療養の給付等に要する費用に充てるための財源として、当該市町村に対して交付されている。

負担金の交付の対象は、一般被保険者に係る医療費となっており、退職被保険者等に係る医療費については、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費等交付金等で負担することとなっていることから、負担金の交付の対象となっていない。

毎年度の負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金等の算定に関する政令」(昭和34年政令第41号)等に基づき、次のとおり算定することとなっており、市町村が負担金の交付額の算定に必要な情報について都道府県に報告し、都道府県がこれに基づいて負担金の交付額を算定している(29年度以前は、市町村が負担金の交付額を算定していた。)。

  • 一般被保険者に係る医療給付費
  • 保険基盤安定繰入金の1/2 (注3)
  • 前期高齢者納付金等 (注4)
  • 国庫負担
    対象費用額
  • 国庫負担
    対象費用額
  • ×
  • 国の負担割合 (注5)
  • 交付額
(注3)
保険基盤安定繰入金市町村が、一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るために減額した保険料又は保険税の総額等について、当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額
(注4)
前期高齢者納付金等高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の規定により社会保険診療報酬支払基金の高齢者医療制度関係業務に要する費用として納付する前期高齢者納付金及び後期高齢者支援金並びに介護納付金(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)
(注5)
国の負担割合平成18年度から23年度までは34/100、24年度以降は32/100

このうち、一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る被保険者の一部負担金に相当する額を控除した額と、入院時食事療養費、療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額との合算額とすることとなっている。ただし、退職被保険者等となったときの市町村への届出が遅れるなどしたため退職被保険者等の資格が遡って確認された場合には、一般被保険者に係る医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

負担金の交付手続については、①交付を受けようとする都道府県(29年度以前は市町村)は、厚生労働省(29年度以前は都道府県)に交付申請書を提出し、②これを受理した厚生労働省(29年度以前は都道府県)は、その内容を添付書類により、また、必要に応じて現地調査を行うことにより審査した上で、③これに基づき、厚生労働省において交付決定を行って負担金を交付することとなっている。そして、④都道府県(29年度以前は市町村)は、当該年度の終了後に厚生労働省(29年度以前は都道府県)に事業実績報告書を提出し、⑤これを受理した厚生労働省(29年度以前は都道府県)は、その内容を審査した上で、⑥これに基づき、厚生労働省において交付額の確定を行うこととなっている。

本院は、30、令和元両年度に交付された負担金について、7都府県(注6)において会計実地検査を行うとともに、13道府県(注7)から事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した。また、平成27年度から29年度までの間に交付された負担金について、3府県の36市町村において会計実地検査を行うとともに、17都道府県の213市区町村及び1広域連合から事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した。その結果、2県の3市町村において、負担金の算定において、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者(以下「遡及退職被保険者等」という。)に係る医療給付費の一部が反映されていなかったり、集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたりするなどしていたため、負担金交付額計1,433,801,145円のうち計7,072,224円が過大に交付されていて、不当と認められる。

(注6)
7都府県  平成27年度から29年度までの間に交付された負担金について会計実地検査を行った36市町村が所在する3府県並びに事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した213市区町村及び1広域連合が所在する17都道府県のうちの4都県と重複している。
(注7)
13道府県  平成27年度から29年度までの間に交付された負担金について事業実績報告書等の関係資料の提出を受けるなどして検査した213市区町村及び1広域連合が所在する17都道府県のうちの13道府県と重複している。

このような事態が生じていたのは、3市町村において確認が十分でなかったこと、2県において事業実績報告書の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

長野県安曇野市は、平成29年度の負担金の実績報告に当たり、負担金の算定において、表計算ソフトへの計算式の入力を誤っていたのに、十分に確認することなく当該計算式を用いたため、遡及退職被保険者等に係る28年度以前分の医療給付費の一部が反映されていないなどしていた。

その結果、負担金が3,202,216円過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象費用額
左に対する国庫負担金
不当と認める国庫負担対象費用額
不当と認める国庫負担金
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(40)
神奈川県
中郡
二宮町
29 981,483 314,074 8,966 2,869 集計を誤って一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定していたもの
(41)
長野県
安曇野市
29 3,291,547 1,056,280
678
(注8)
3,202 計算を誤って負担金を過大に算定していたものなど
(42)
上伊那郡
宮田村
29 194,922 63,446
(注9)
1,000 計算を誤って負担金を過大に算定していたもの
(40)―(42)の計 4,467,953 1,433,801 9,645 7,072  
(注8)
安曇野市は、遡及退職被保険者等に係る医療給付費の集計を誤り、国庫負担対象費用額を過大に算出するとともに、負担金の算定において計算を誤って負担金を過大に算定していた。
(注9)
上伊那郡宮田村は、国庫負担対象費用額の算出には誤りはなかったものの、負担金の算定において計算を誤って負担金を過大に算定していたことから、本表の「不当と認める国庫負担対象費用額」欄には計数を掲げていない。