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(3) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[6都県](67)―(73)


7件 不当と認める国庫補助金 45,768,497円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(以下、これらを合わせて「負担金」という。)は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を設置する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、原則として世帯を単位としてその要否及び程度を定めることとなっている。そして、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)等の生活保護法以外の他の法律又は制度による保障、援助等を受けることができる者等については極力その利用に努めさせることとなっている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させたり、不実の申請等により保護を受けるなどした者からその費用の額の全部又は一部を徴収したりすることなどができることとなっている(以下、これらの返還させ、又は徴収する金銭を「返還金等」という。)。

生活扶助等に係る保護費は、原則として保護を受ける世帯を単位として、保護を必要とする状態にある者の年齢、世帯構成、所在地域等の別により算定される基準生活費に、健康状態等による個人又は世帯の特別の需要のある者に対する各種加算の額を加えるなどして算定される最低生活費から、当該世帯における就労収入、年金の受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定されることとなっている。そして、各種加算のうち障害者加算は、国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)に定める障害等級の1級の障害を有する者等を対象として、障害を有することによって生ずる特別な需要に対応するもので、障害の区分等に対応した加算額が認定されることとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額は、「生活保護費等の国庫負担について」(平成26年厚生労働省発社援0324第2号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、次のとおり算定することとなっている。


費用の額 - 返還金等の調定額 + 不納欠損額 = 国庫負担対象事業費

国庫負担対象事業費 × 国庫負担率(3/4) = 負担金の交付額

この費用の額及び返還金等の調定額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の合計額とする。

① 生活扶助等に係る保護費の額

② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その範囲内で決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体が被保護者等からの返還金等を地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づき調定した額とする。

本院が、9都府県の26事業主体において会計実地検査を行うとともに、18都道府県の112事業主体(注)から関係書類の提出を受けるなどして検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(注)
18都道府県の112事業主体のうち2都県の2事業主体は、会計実地検査を行った9都府県の26事業主体のうちの2都県の2事業主体と重複している。

すなわち、1県の1事業主体において、返還金等の調定額の算出に当たり、地方自治法等に基づく調定が適切に行われていなかったことなどから、生活扶助費等負担金の算定が適切でなかった。また、5都県の6事業主体において、生活扶助等に係る保護費の額の算出に当たり、誤って障害者加算の対象となる障害を有しない者に障害者加算を認定するなどしていた。このため、負担金計45,768,497円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において、生活扶助費等負担金の算定に当たり、地方自治法等に基づく戻入手続、交付要綱に基づく返還金等の調定額の対象等について理解が十分でなかったこと、保護費の支給決定に当たり、障害者加算の対象とすべき障害の認定に係る確認が十分でなかったこと、都県において、事業実績報告書の審査、適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

千葉県市原市では、返還金等のうち誤払い又は過渡しとなった保護費(以下「誤払等保護費」という。)の返納について、当該支出した経費に戻入することとしたときは、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)及び同施行令に基づき同市が定めた市原市会計規則(昭和6年市原市規則第2号)に基づき、戻入命令書により決議しなければならないことなどとなっている。そして、誤払等保護費を返納させる場合において、出納閉鎖期日までに納入されない返納金について、出納閉鎖期日の翌日に調定しなければならないこととなっている。

しかし、同市は、誤払等保護費の返納について戻入することとしたにもかかわらず、その時点では戻入命令書による決議を行っておらず、このうち、当年度中に返納されていない金額については、出納閉鎖期日の翌日にしなければならない調定を行っていなかった。このため、同市は、戻入することとした誤払等保護費に係る返還金等の調定額を適切に算出していなかった。

この結果、平成27年度から令和元年度までにおいて、返還金等の調定額が計46,841,339円過小となっていて費用の額から控除されていなかったため、同額の国庫負担対象事業費が過大に算定されており、これに係る生活扶助費等負担金計35,131,003円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局名
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円
(67)
茨城県
水戸市
平成27~令和元 25,375 19,031 1,761 1,320 障害者加算の認定を誤っていたもの
(68)
日立市
平成27~令和2 21,408 16,056 2,835 2,126
(69)
群馬県
伊勢崎市
27~29 19,232 14,424 1,841 1,381
(70)
千葉県
市原市
平成27~令和元 21,751,282 16,314,241 46,841 35,131 返還金等の調定額の算出が適切でなかったもの
(71)
東京都
町田市
26~29 34,944 26,208 1,548 1,161 障害者加算の認定を誤っていたもの
(72)
静岡県
焼津市
平成27~令和2 13,445 10,084 4,405 3,304 年金受給権の調査が十分でなかったもの
(73)
兵庫県
神戸市
26~30 10,619 7,964 1,791 1,343 障害者加算の認定を誤っていたもの
(67)―(73)の計 21,876,309 16,408,011 61,024 45,768