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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(8) 労働者福祉対策事業費補助金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省](82)


1件 不当と認める国庫補助金 6,794,400円

中小企業退職金共済制度(特定業種(注)に属する事業主を対象とする制度を除く。)は、中小企業退職金共済法(昭和34年法律第160号。以下「共済法」という。)に基づき、中小企業者である事業主が、独立行政法人勤労者退職金共済機構(平成15年9月30日以前は勤労者退職金共済機構。以下「機構」という。)と中小企業退職金共済契約(以下「共済契約」という。)を締結して(以下、共済契約を締結した事業主を「共済契約者」という。)、その雇用する従業員を被共済者(以下、従業員が共済契約に基づく被共済者となることを「共済加入」という。)として、被共済者ごとに掛金月額を定めて機構に納付するものである。そして、被共済者が退職した場合には、当該被共済者又はその遺族の請求に基づき、機構が退職金を支給することとなっている。なお、現に共済契約の被共済者である者については、その者を被共済者とする新たな共済契約を締結することができないこととなっている。

また、機構は、契約業務部事務取扱要領(平成12年4月改訂)等に基づき、事業主から提出された退職金共済契約申込書や被共済者等から提出された退職金請求書等の記載内容等について審査することとなっている。

さらに、機構は、共済契約の申込みを促進するために、昭和61年8月から生命保険会社等に中小企業者に対する共済契約の申込みを勧奨するなどの契約取次業務(以下「契約取次業務」という。)を行わせている。

(注)
特定業種従業員の相当数が、通常、当該業種に属する多数の事業の間を移動してこれらの事業の事業主に雇用される業種をいい、厚生労働大臣により建設業、清酒製造業及び林業の3業種が指定されている。

そして、厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省。以下同じ。)は、機構が中小企業者による共済契約の新たな申込みを促進するなどのために共済法等に基づき実施する、共済契約者の掛金に係る負担を軽減する措置(以下「掛金負担軽減措置」という。)に対する助成等を行うための労働者福祉対策事業費補助金(中小企業退職金共済掛金助成費及び基幹的業務に係る事務費)(以下「国庫補助金」という。)を機構に交付している。国庫補助金の額は、掛金負担軽減措置が行われた期間における掛金月額を補助対象経費として、この額に2分の1を乗ずることなどにより算定することとなっている。

本院が、機構において会計実地検査を行うとともに、厚生労働本省から関係書類の提出を受けるなどして検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助金交付額
摘要
        千円 千円  
(82)
厚生労働本省
独立行政法人勤労者退職金共済機構
12~22、24
82,603,374 6,794 適正を欠く掛金負担軽減措置が行われていたもの

機構は、26年12月に、日本生命保険相互会社(以下「会社」という。)の従業員Aが契約取次業務に関与した共済契約について不正が判明したとして、調査の結果を公表した。さらに、機構は、令和2年7月に、従業員Aによる不正に関連して、更なる不正が判明したとして追加調査の結果を公表した。

しかし、機構は、会社が契約取次業務を行った共済契約の一部について、掛金負担軽減措置により減額した掛金の額を含む掛金の総額に相当する額が退職金として支払われるようになる掛金納付月数(24か月)に達してから間もない時期に、退職金の請求が集中しているなどの特異な兆候が見受けられているにもかかわらず、上記の2回にわたる調査の際に適切な調査を実施していなかった。このため、本院は、機構に対して、これらの共済契約及びこれらの共済契約の契約取次業務に関与した会社の従業員Bが関与するなどした他の共済契約について調査を行うよう求めて、その結果について報告を受けて、報告内容の確認を行った。

その結果、共済契約者が事業を営んでいないにもかかわらず、事業を営んでいるとして共済契約を締結していたり、共済契約者が雇用していない者を雇用しているとして共済加入させていたり、共済契約者が既に被共済者である者を重ねて共済加入させていたり、被共済者が退職していないにもかかわらず、退職したとして機構に退職金を請求していたりしていた事態が見受けられた。このため、これらの事態に係る掛金負担軽減措置(57共済契約者、共済契約57件、掛金負担軽減措置により減額した掛金の額計6,794,400円)については、いずれも共済法に反して共済契約の締結、共済加入又は退職金の請求が行われていたものであり、適正を欠いていると認められる。

したがって、平成12年度から22年度までの各年度及び24年度に機構に対して交付された国庫補助金826億0337万余円のうち、上記の掛金負担軽減措置に対する助成として交付された国庫補助金6,794,400円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、契約取次業務に関与した会社の従業員B、共済契約者及び被共済者において、共済法に基づく適正な共済契約の締結、共済加入及び退職金の請求に関する認識が欠けていたことなどにもよるが、機構において、共済契約の締結、共済加入及び退職金の請求についての審査が十分でなかったこと、厚生労働本省において、機構に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。