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自立支援給付の訓練等給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[福井県](84)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
福井県
国の負担の根拠
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
実施主体
市2、町3、計5実施主体
事業者
指定就労継続支援A型事業者1
過大に支払われた訓練等給付費に係る障害福祉サービスの種類
就労継続支援A型
過大に支払われた訓練等給付費の件数
138件(平成29、30両年度)
過大に支払われた訓練等給付費の額
1,320,054円(平成29、30両年度)
不当と認める国の負担額
660,027円(平成29、30両年度)

1 自立支援給付の概要

(1)自立支援給付

自立支援給付は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。以下「法」という。)に基づき、障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うものである。

(2)障害福祉サービス

自立支援給付のうち、障害福祉サービスに係る給付費の支給には、訓練等給付費及び介護給付費(以下、これらを合わせて「訓練等給付費等」という。)がある。訓練等給付費の支給の対象には就労移行支援、就労継続支援A型(注1)等がある。

そして、障害者及び障害児が障害福祉サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

  • ① 障害者又は障害児の保護者は、居住地等の市町村から訓練等給付費等を支給する旨の決定を受ける。
  • ② 支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者(以下、これらを合わせて「支給決定障害者等」という。)は、支給決定の有効期間内に都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市の市長(以下「都道府県知事等」という。)の指定を受けた指定障害福祉サービス事業者等(以下「事業者」という。)の事業所において、障害福祉サービスを受ける。

また、都道府県知事等は、自立支援給付に関して必要があると認めるときは、事業者に対する指導等を行うことができることとなっている。

(注1)
就労継続支援A型  通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である障害者に対して行われる雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援

(3)障害福祉サービスに要した費用の額の算定

事業者が障害福祉サービスを提供して請求することができる費用の額は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害福祉サービスの種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算の単位数を合算し、これに単価(10円から11.60円)を乗じて算定することとなっている。

そして、就労継続支援A型に要する費用の額は、算定基準等に基づき、就労継続支援A型に係る指定障害福祉サービスを提供する事業所(以下「指定就労継続支援A型事業所」という。)において、所定の要件を満たしたサービス管理責任者を配置していない場合には、配置しなくなった月の翌々月から配置することになった月まで、サービス管理責任者欠如減算として、基本報酬の単位数に、当該減算が適用される月から5月未満の月については100分の70を、5月以上の月については100分の50(平成29年度以前は100分の70)をそれぞれ乗じて得た単位数等を基に算定することとなっている。

また、適正な指定障害福祉サービスの提供を確保するために、サービス管理責任者による指揮の下、利用者の意向、適性、障害の特性その他の事情を踏まえた就労継続支援A型計画を作成することなどの要件(以下「計画作成要件」という。)を満たしていない場合には、計画作成要件を満たしていない月から計画作成要件を満たすことになった月の前月まで、就労継続支援A型計画未作成減算として、基本報酬の単位数に、当該減算が適用される月から3月未満の月については100分の70を、3月以上の月については100分の50(29年度以前は100分の95)をそれぞれ乗じて得た単位数を基に算定することとなっている。

そして、サービス管理責任者欠如減算及び就労継続支援A型計画未作成減算の各事由に該当した場合には、減算となる単位数が大きい方についてのみ減算を適用する(29年度以前は基本報酬の単位数にそれぞれの減算割合を乗ずる)こととなっている。

(4)訓練等給付費等

市町村は、法に基づき、支給決定障害者等が事業者から障害福祉サービスの提供を受けたときは、これに係る訓練等給付費等を事業者に支払うこととなっており、訓練等給付費等は、障害福祉サービスに要した費用の額から当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。

訓練等給付費等の支払手続については、①事業者は、訓練等給付費等を記載した介護給付費・訓練等給付費等請求書等(以下「請求書等」という。)を、市町村から訓練等給付費等の審査及び支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会に送付し、②同連合会は、事業者から送付された請求書等の一次審査を行い、訓練等給付費等を市町村に請求して、③請求を受けた市町村は、金額等を算定基準等に照らして二次審査を行った上で、同連合会を通じて事業者に訓練等給付費等を支払うことなどになっている(注2)

(注2) 平成30年4月の法改正以前は、国民健康保険団体連合会が、市町村から訓練等給付費等に係る支払に関する事務の委託を受け、事業者から送付された請求書等の点検を行い、訓練等給付費等を市町村に請求して、請求を受けた市町村は、金額等を算定基準等に照らして審査した上で、同連合会を通じて事業者に訓練等給付費等を支払うことになっていた。

そして、国は、障害福祉サービスに要した費用について市町村が支弁した訓練等給付費等の100分の50を負担している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、訓練等給付費の算定が適正に行われているかに着眼して、4県及び6市(1政令指定都市、5中核市)において、指定就労継続支援A型事業所等を設置する65事業者に対する訓練等給付費の支払について、会計実地検査を行うとともに、19都道府県及び43市(13政令指定都市、30中核市)については、指定就労継続支援A型事業所等を設置する449事業者(注3)に対する訓練等給付費の支払について、訓練等給付費の請求に係る関係書類等の提出を受けるなどして検査を行った。そして、訓練等給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(注3) 449事業者のうち5事業者は、65事業者のうち5事業者と重複している。

検査したところ、福井県に所在する1事業者は、就労継続支援A型に係る訓練等給付費の算定に当たり、29年10月から30年6月までの期間についてはサービス管理責任者を配置していなかったため、サービス管理責任者欠如減算を適用していたが(サービス管理責任者を配置しなくなった月の翌月までの29年10月及び11月を除く。)、サービス管理責任者を配置した月である30年7月についてもサービス管理責任者欠如減算として基本報酬の単位数に100分の70を乗ずる必要があるのに、当該減算を適用することなく算定していた。また、サービス管理責任者を配置していなかった29年10月から30年6月までの期間のうち、29年10月から30年3月までの期間については、上記のとおり適用していたサービス管理責任者欠如減算に加えて就労継続支援A型計画未作成減算を適用しなければならないのに、サービス管理責任者欠如減算のみを適用して、就労継続支援A型計画未作成減算を適用せずに基本報酬の単位数に100分の95を乗ずることなく算定するなどしていた。

このため、29、30両年度に、上記の1事業者に対して5市町が行った訓練等給付費の支払が計138件、計1,320,054円過大となっていて、これに対する国の負担額計660,027円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市町において訓練等給付費の算定について審査が十分でなかったこと、福井県において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。