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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(2) 障害児通所支援事業について、過大に算定されていた障害児通所給付費の返還手続を行わせるよう適宜の処置を要求するとともに、障害児通所給付費の算定に当たり、事業者に対して、定員超過利用減算の適用の要件等について周知したり、定員超過利用減算が必要な定員超過をしているかを確認できるような様式等を示した上で、当該様式等により定員超過利用減算の要否を確認するよう周知したりすることにより、障害児通所給付費の算定が適正に行われるよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)障害保健福祉費
部局等
厚生労働本省、6道県、2市
国の負担の根拠
児童福祉法(昭和22年法律第164号)
実施主体
市22、町18、村1、計41実施主体
障害児通所支援の概要
障害児に対して、児童発達支援センター等の施設において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練等の便宜を提供したり、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児に対して、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センター等の施設において、生活能力向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を提供したりなどするもの
減算が必要な定員超過利用となっているのに定員超過利用減算を適用せずに障害児通所給付費を過大に算定していた事業者数及び障害児通所給付費
8事業者1億1589万余円(平成26年度~令和元年度)
上記に係る国の負担額
5794万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

障害児通所支援事業所の定員超過利用における障害児通所給付費の算定について

(令和3年10月18日付け厚生労働大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 障害児通所給付費の概要

(1)障害児通所支援の概要

障害児通所支援は、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)に基づき、障害児に対して児童発達支援(注1)、放課後等デイサービス(注2)等を行うものであり、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、これに要する費用について障害児通所給付費を支給している。

そして、障害児の保護者が障害児通所支援を受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

  • ① 障害児の保護者は、居住地等の市町村から障害児通所給付費を支給する旨の通所給付決定を受ける。
  • ② 通所給付決定を受けた障害児の保護者(以下「通所給付決定保護者」という。)は、当該通所給付決定の有効期間内に都道府県又は政令指定都市等(以下「都道府県等」という。)の長(以下「都道府県知事等」という。)の指定を受けた指定障害児通所支援事業者等(以下「事業者」という。)の事業所において、障害児通所支援を受ける。

また、都道府県知事等は、法等に基づき、必要があると認めるときは事業者に対する指導等を行うことができることとなっている。そして、貴省は、「指定障害児通所支援事業者等の指導監査について」(平成26年厚生労働省通知。障発0328第4号)において、当該指導の方針として、事業者に対し、障害児通所給付費に係る費用の請求に関する事項について周知徹底させることなどを都道府県等へ示している。

(注1)
児童発達支援  障害児に対して、児童発達支援センター等の施設において、日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供する支援
(注2)
放課後等デイサービス  学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)に就学している障害児に対して、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センター等の施設において、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の便宜を提供する支援

(2)障害児通所給付費の概要

事業者が障害児通所支援を提供して請求することができる費用の額は、「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成24年厚生労働省告示第122号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害児通所支援の種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算等の単位数を合算し、これに単価(10円から11.52円)を乗じて算定することとなっている。

そして、算定基準等によれば、前記の児童発達支援及び放課後等デイサービスに係る障害児通所給付費の算定に当たっては、事業所が過度に障害児を受け入れることを未然に防止して、適正な障害児通所支援の提供を確保するために、利用定員を上回る障害児に利用させている場合であって、定員超過利用の程度が一定の範囲を超える場合に定員超過利用減算を適用することとされている。具体的には、次の場合等に定員超過利用減算として、所定の単位数に100分の70を乗じて得た単位数を基に算定することとなっている。

  • ① 利用定員が11人以下の事業所において、直近の過去3月間の障害児の延べ数が、利用定員に3を加えて得た数に開所日数を乗じて得た数を超える場合
  • ② 利用定員が12人以上の事業所において、直近の過去3月間の障害児の延べ数が、利用定員に開所日数を乗じて得た数に100分の125を乗じて得た数を超える場合

市町村は、法に基づき、当該市町村に居住するなどの通所給付決定保護者が事業所から障害児通所支援の提供を受けたときは、毎月、通所給付決定保護者ごとに障害児通所給付費を審査した上で事業者に支払うこととなっている。障害児通所給付費は、障害児通所支援に要した費用の額から当該通所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。

そして、国は、障害児通所支援に要した費用について市町村が支弁した障害児通所給付費の2分の1を負担している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

前記のとおり、障害児通所給付費の算定に当たっては、定員超過利用の程度が一定の範囲を超える場合に定員超過利用減算を適用することとなっている。

そこで、本院は、合規性等の観点から、障害児通所給付費の算定に当たり、定員超過利用減算は適切に適用されているか、定員超過利用減算の要否を確認できるような方策は講じられているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、21都道府県及び26市(注3)において都道府県知事等の指定を受けて児童発達支援又は放課後等デイサービスを実施していた6,913事業所のうち、利用定員と比較して利用者が多いなどの条件により348事業者の474事業所を抽出した。このうち199事業者の265事業所については、13都道県及び15市において、当該事業所に係る平成26年度から令和元年度までの間の定員超過利用の状況等について事業者から提出された調書等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、158事業者(注4)の217事業所(注5)については、9都府県及び13市(注6)から当該事業所に係る上記調書等の提出を受けて、その内容を確認するなどの方法により検査した。そして、定員超過利用減算の適用について疑義が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(注3)
21都道府県及び26市   東京都、北海道、京都府、茨城、群馬、千葉、石川、福井、山梨、岐阜、静岡、兵庫、奈良、和歌山、島根、香川、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄各県、前橋、高崎、千葉、船橋、柏、八王子、金沢、福井、甲府、岐阜、静岡、浜松、京都、神戸、姫路、尼崎、明石、西宮、奈良、和歌山、松江、高松、佐世保、宮崎、鹿児島、那覇各市
(注4)
158事業者のうち9事業者は、199事業者のうち9事業者と重複している。
(注5)
217事業所のうち8事業所は、265事業所のうち8事業所と重複している。
(注6)
9都府県及び13市のうち1都2市は、会計実地検査を行った13都道県及び15市のうち1都2市と重複している。
検査の結果

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)定員超過利用の程度が一定の範囲を超えていたのに定員超過利用減算を適用していなかった事態

前記348事業者の474事業所のうち271事業者の369事業所において、直近の過去3月間の障害児の延べ数が利用定員に開所日数を乗じて得た数を超えていて、定員超過利用となっている月が生じていた。そして、このうち、11事業者の14事業所において、当該月の中で直近の過去3月間の定員超過利用の程度が一定の範囲を超えていて、定員超過利用減算を適用する必要がある月が見受けられた。

しかし、上記11事業者の14事業所のうち、6道県及び2市(注7)の8事業者の11事業所において、障害児通所給付費の算定に当たり、定員超過利用減算を適用しておらず、所定の単位数に100分の70を乗ずることなく算定していたため、平成26年度から令和元年度までの間に、上記の8事業者に対して41市町村が行った障害児通所給付費の支払が計1億1589万余円過大となっていて、これに対する国の負担額計5794万余円は負担の必要がなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例

京都市に所在する事業者Aは、児童発達支援及び放課後等デイサービスの提供を行った事業所a(利用定員10人)において、平成26年4月から30年12月までの間の各月において、直近の過去3月間の障害児の延べ数が、利用定員に3を加えて得た数に開所日数を乗じて得た数を超えていて、定員超過利用の程度が一定の範囲を超えていた。

しかし、事業者Aは、障害児通所給付費の算定に当たり、定員超過利用減算を適用しておらず、所定の単位数に100分の70を乗じて得た単位数を基にすることなく算定するなどしていた。

このため、上記の事態に係る26年4月から30年12月までの間の請求に対して3市が支払った障害児通所給付費が計3822万余円過大となっていて、これに対する国の負担額1911万余円は負担の必要がなかった。

(注7)
6道県及び2市   北海道、千葉、石川、奈良、鹿児島、沖縄各県、浜松、京都両市

(2)定員超過利用減算を適用していなかった理由

(1)の事態が見受けられたことから、前記8事業者の11事業所が定員超過利用減算を適用していなかった理由について6道県及び2市を通じて確認した。その結果、①直近の過去3月間ではなく直近の過去1月間の利用者数等により計算すればよいとするなど定員超過利用減算の制度の理解が十分でなかったことから、減算が必要な定員超過利用にはなっていないと誤って判断してしまったためとした事業所が9事業所、②定員超過利用減算の制度については理解していたものの、定員超過利用の状況の確認が十分でなかったことから、減算が必要な定員超過利用にはなっていないと誤って判断してしまったためとした事業所が1事業所、③定員超過利用減算の制度自体を認識していなかったためとした事業所が1事業所となっていた。

(3)定員超過利用減算の適用誤りを防止するための確認の方法の周知状況

前記のとおり、直近の過去3月間の利用実績による定員超過利用減算の適用が必要になるかについては、各月の利用定員、障害児の延べ数及び開所日数の三つの情報に基づき計算して確認する必要がある。そして、これらのうち障害児の延べ数及び開所日数については、通常は事業者でなければ把握していない情報であることから、障害児通所給付費の算定に当たっては、事業者が定員超過利用減算の要否について容易に確認ができるようにする必要がある。

そこで、(2)の理由のとおり、事業者において定員超過利用減算の制度についての理解が十分でなかったり、定員超過利用の状況の確認が十分でなかったりなどしていたことから、これらにより生ずる定員超過利用減算の適用誤りを防止することができるよう、貴省において、都道府県等を通じるなどして、事業者に対して、定員超過利用減算が必要な定員超過をしているかを確認できるような様式等を使用した容易かつ効果的な確認の方法(以下「確認様式等」という。)を示しているかをみたところ、このような確認様式等を示していなかった。

是正及び是正改善を必要とする事態

障害児通所給付費の算定に当たり、定員超過利用の程度が一定の範囲を超えているのに定員超過利用減算が適用されておらず、障害児通所給付費が過大に支給されている事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

発生原因

このような事態が生じているのは、事業者において算定基準等に基づく定員超過利用減算の適用についての認識が欠けていたり、制度についての理解が十分でなかったり、定員超過利用の状況の確認が十分でなかったりしたことなどにもよるが、貴省において、次のことなどによると認められる。

ア 事業者に対して、定員超過利用の程度が一定の範囲を超えた場合には定員超過利用減算を適用する必要があることや適用の具体的な要件について十分な周知をしていないこと

イ 事業者に対して、定員超過利用減算の制度についての理解が十分でなかったり、定員超過利用の状況の確認が十分でなかったりなどすることにより生ずる定員超過利用減算の適用誤りを防止することができるよう、確認様式等を示して、当該確認様式等により確認するように周知していないこと

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

貴省は、障害児通所給付費の算定に当たって、事業所が過度に障害児を受け入れることを未然に防止して、適正な障害児通所支援の提供を確保するために、引き続き定員超過利用の程度が一定の範囲を超える場合に定員超過利用減算を適用する仕組みを継続することとしている。

ついては、貴省において、障害児通所給付費の算定が適正に行われるよう、次のとおり、是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

ア 8事業者の11事業所のうち返還手続が未済の事業所に対して、6道県及び2市を通じるなどして、過大に算定されていた障害児通所給付費の返還手続を行わせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)

イ 事業者に対して、都道府県等を通じるなどして、定員超過利用減算の適用の要件等について周知徹底すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)

ウ 事業者に対して、都道府県等を通じるなどして、確認様式等を示した上で、定員を超過して利用者を受け入れている事業者は、毎月の請求に当たって、当該確認様式等により定員超過利用減算の要否を確認するように周知すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)