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  • 令和2年度|
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  • (1) 補助金の対象とならないなどのもの

農業次世代人材投資資金の交付を受けた者が就農しなかったなどしていて補助の対象とならないもの[農林水産本省](86)―(89)


(4件 不当と認める国庫補助金 8,125,000円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
           
千円
千円
千円
千円
(86)
農林水産本省
一般社団法人全国農業会議所
兵庫県
(事業主体)
農業次世代人材投資
29 36,375
(36,375)
36,375 3,000
(3,000)
3,000
(87)
高知県
(事業主体)
青年就農給付金
28 72,125
(72,125)
72,125 1,500
(1,500)
1,500
(88)

一般社団法人高知県農業会議
(事業主体)
農業次世代人材投資
29 62,875
(62,875)
62,875 1,375
(1,375)
1,375
(89)
熊本県
(事業主体)
青年就農給付金等
28、29 266,500
(266,500)
266,500 2,250
(2,250)
2,250
(86)-(89)の計 437,875
(437,875)
437,875 8,125
(8,125)
8,125

これらの補助事業は、4事業主体が、次世代を担う農業者となることを志向する就農希望者等への資金の交付等を行い、農政新時代に必要な人材力の強化を図るなどするために、就農に向けて研修を受ける者(以下「研修生」という。)に対して、原則として年間1,500,000円の農業次世代人材投資資金(平成28年度は青年就農給付金。以下「資金」という。)を交付する事業に要した経費について、国庫補助金を交付したものである。

農業人材力強化総合支援事業実施要綱(平成24年23経営第3543号農林水産事務次官依命通知。平成28年度は新規就農・経営継承総合支援事業実施要綱)等によれば、資金の交付を受けた研修生は、研修終了後1年以内に就農する必要があり、就農しなかった場合は、資金の全額を返還しなければならないこととされている。ただし、やむを得ない理由により研修終了後1年以内の就農が困難であるとして事業主体に就農遅延届を提出し、事業主体がこれを承認した場合には、就農を遅延することができるが、その遅延期間は研修終了後から1年経過後原則1年以内とされている。また、資金の交付を受けた研修生は、資金の交付期間の1.5倍又は2年間のいずれか長い期間(以下「全額返還対象期間」という。)において毎年7月末及び1月末の期限までにその直前の6か月間の就農状況報告を事業主体に提出しなかった場合又は全額返還対象期間にわたり就農を継続しなかった場合には、資金の全額を返還しなければならないこととされている。

4事業主体のうち、兵庫、高知、熊本各県(以下「3県」という。)は、本件事業を事業費計375,000,000円で実施したとして、一般社団法人全国農業会議所(以下「会議所」という。)から、同額の国庫補助金の交付を受け、近畿、中国四国、九州各農政局(以下「3農政局」という。)に実績報告書をそれぞれ提出していた。また、高知県から29年4月1日に業務の移管を受けて本件事業の事業主体となった一般社団法人高知県農業会議(以下「高知県農業会議」という。)は、本件事業を62,875,000円で実施したとして、会議所から同県を通じて同額の国庫補助金の交付を受け、同県に実績報告書を提出していた。なお、高知県農業会議は、就農状況報告の受理、資金の返還に係る手続等の高知県が実施していた本件事業の事業主体としての業務のほか、同県が28年度以前に資金を交付するなどした者に関して29年度以降に発生する業務について、同県から移管を受けている。

4事業主体等における国庫補助金等の流れを示すと、のとおりである。

図 国庫補助金等の流れ

図 国庫補助金等の流れ_画像

しかし、兵庫県は、研修生2名について、研修終了後1年以内に就農できなかったことから遅延期間を1年間とする就農遅延届の提出を受けて、これを承認していたが、両名が遅延期間を経過しても就農しておらず、就農報告も提出していなかったのに、両名が就農したかを十分に確認しておらず、両名に交付した資金を返還させていなかった。また、高知県農業会議は、研修生1名(同人は28年度は高知県から、29年度は高知県農業会議から、それぞれ資金の交付を受けていた。)について、全額返還対象期間において二度にわたり前記の期限までに就農状況報告を提出しておらず、さらに、期限到来後の督促にも応じずに就農状況報告を提出していなかったのに、同人に交付した資金を返還させていなかった。そして、熊本県は、研修生1名について、全額返還対象期間にわたり就農を継続しておらず、就農状況報告も提出していなかったのに、同人が就農を継続しているかを十分に確認しておらず、同人に交付した資金を返還させていなかった。

したがって、4事業主体が上記の4名に交付した資金計8,125,000円は補助の対象とは認められず、これらに係る国庫補助金相当額計8,125,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、兵庫、熊本両県において研修生の就農状況の確認が十分でなかったこと、高知県農業会議において交付要件等についての理解や確認が十分でなかったこと、高知県において高知県農業会議に対する指導が十分でなかったこと、3農政局において3県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。