(1件 不当と認める国庫補助金 10,800,265円)
部局等
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補助事業者等
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間接補助事業者等
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補助事業等
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年度
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事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額
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不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(94) |
農林水産本省
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神奈川県
(事業主体)
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―
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農山漁村地域整備交付金
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27、28
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56,332 (56,332) |
28,166 | 21,600 (21,600) |
10,800 |
この交付金事業は、神奈川県が、伊勢原市上平間地内等大城地区において、老朽化に伴い漏水が発生するなどしている農業用水路の機能を回復するために、既存の農業用水路及び当該農業用水路に並行する県道44号線に設置されている既存のガードレールを撤去して、それぞれの位置に新たにプレキャストコンクリート製のU型水路(内空断面の幅1.0m又は1.1m、高さ0.7m、延長計155.7m。以下「U型水路」という。)及び支柱を土中に埋め込む構造のガードレール(延長計139m。以下「本件ガードレール」という。)を設置するなどしたものである(参考図参照)。
同県は、U型水路の設計について、「土地改良事業計画設計基準 設計「水路工」」(農林水産省農村振興局監修)等に基づき行うこととしている。同基準によれば、水路の設計は、構造物の安全確保を目的として、構造物に作用する荷重を適切に定めて、構造物の形式、設計諸数値等を決定しなければならないこととされている。そして、同県は、U型水路の部材の応力計算に当たり、U型水路に接する道路側の土圧、及び道路を走行する車両の自動車荷重を考慮してU型水路の道路側の側壁の鉄筋に作用する引張応力度(注)を29.65N/mm2と算定し、許容引張応力度(注)157N/mm2を下回ることから応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。
また、同県は、ガードレールの設計について、「車両用防護柵標準仕様・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「防護柵設計標準」という。)等に基づき行うこととしている。防護柵設計標準によれば、車両がガードレールに衝突する際の荷重(以下「衝突荷重」という。)に対する支柱の支持力は、支柱の背面土が反力として抵抗するため、その背面土の質量と密接な関係にあるとされ、このことから支柱1本が関与する背面土の質量(以下「背面土質量」という。)を算出するなどして支柱の支持力を評価することとされている。そして、本件ガードレールの構造等における支柱の支持力については、背面土質量が0.82t以上必要とされている。なお、この背面土質量が確保できない場合は、他の構造を選定することによりガードレールの支柱の支持力を得ることとされている。
しかし、同県は、本件ガードレールについて、構造等に応じた支柱の支持力についての検討を行うことなく施工していた。
そこで、本件ガードレールの支柱の支持力について防護柵設計標準に基づき評価を行ったところ、延長139m全体において、支柱がU型水路の道路側の側壁に近接していたことなどから、背面土質量が、必要とされる0.82tに対して、0.03tから0.07tと大幅に下回っていて、本件ガードレールの支柱は背面土質量による所要の支持力が得られていなかった。
また、上記のとおり、本件ガードレールの支柱が所要の支持力を得られていなかったことから、本件ガードレールに車両が衝突した場合、U型水路のうち本件ガードレールに近接している延長計134mの区間については衝突荷重が作用することになる。そこで、この区間について改めて衝突荷重を考慮して応力計算を行ったところ、U型水路の道路側の側壁の鉄筋に作用する引張応力度は723.40N/mm2となり、許容引張応力度259.05N/mm2(衝突時)を大幅に上回っていて、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件ガードレールの全体、U型水路のうち上記延長134mの区間等(工事費相当額計21,600,531円)は、本件ガードレールの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額計10,800,265円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、防護柵設計標準に基づく設計を行うことに対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
U型水路及び本件ガードレールの概念図