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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (4) 補助の目的を達していなかったもの

熊本地震被災施設整備等対策に係る農業・食品産業強化対策整備交付金事業で整備した米の保管等を行う共同倉庫に、被災した既存の倉庫の機能が集約されておらず、流通コストが事業実施前を大きく上回るなどしていて補助の目的を達していないもの[九州農政局](99)


(1件 不当と認める国庫補助金 525,445,000円)

 
部局等
補助事業者等
間接補助事業者等
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(99)
九州農政局
熊本県
熊本県経済農業協同組合連合会
(事業主体)
農業・食品産業強化対策整備交付金
28、29
1,134,961
(1,134,961)
525,445 1,134,961
(1,134,961)
525,445

この交付金事業は、熊本県経済農業協同組合連合会(以下「経済連」という。)が、平成28年熊本地震の影響により共同利用施設等が被災した地域において農業生産基盤の回復等を図るために、品質向上物流合理化施設(以下「共同倉庫」という。)を整備したものである。

強い農業づくり交付金実施要綱(平成17年16生産第8260号農林水産事務次官依命通知)及び平成28年熊本地震被災施設整備等対策実施要領(平成28年28食産第878号食料産業局長、28生産第395号生産局長及び28政統第282号政策統括官通知)によれば、交付金事業の対象は、平成28年熊本地震により被災した集出荷貯蔵施設等の補修・修繕・再取得等とされ、これに係る費用について支援することとされている。また、交付金事業は、産地競争力強化等の政策目的に向け設定される被災前に比べて農畜産物の単位面積当たりの流通コストを1%以上低減することなどの成果目標の達成に資するものとして行うこととされている。そして、成果目標は、事業主体が作成し都道府県等に提出する事業実施計画において定めることとされている。

事業主体である経済連が策定し熊本県が承認した事業実施計画等によれば、被災した既存の米の保管等を行う倉庫計15か所(以下「既存倉庫」という。)を個別に修理等するのではなく、共同倉庫1棟を新設して米の保管等を行う倉庫の機能を集約すること、及び共同倉庫にフレキシブルコンテナ(以下「フレコン」という。)による効率的な保管が可能な保管機械施設等を導入することにより、物流の合理化を図り流通コストを低減することを目的としていた。また、成果目標については、受益面積10a当たりの流通コスト(以下「10a当たりの流通コスト」という。)を平成27年度の2,543円から1.1%低減させて、目標年度である30年度に2,514円にするとしていた。

しかし、共同倉庫における入出庫量についてみたところ、事業実施計画の年間処理量22,080tに対し、30年度は9,358t(計画処理数量に対し42.3%)、令和元年度は14,466t(同65.5%)、2年度は12,744t(同57.7%)と低調な利用が続いていた。そこで、既存倉庫について、現地を確認するなどしたところ、既存倉庫のうち7か所の倉庫(以下「7倉庫」という。)で保管等を行っている米については、紙袋による包装形態で流通しているため、フレコンを利用した保管等が進展しておらず、フレコンの利用が前提とされた共同倉庫に持ち込むことができていなかった。このため、7倉庫は共同倉庫の供用開始以降も引き続き米の倉庫として使用されていて、米の保管等を行う倉庫の機能が集約されていなかった。

また、元年9月に経済連が同県に提出した実施状況報告によると、平成30年度の10a当たりの流通コストは1,874円となっていて、成果目標の2,514円を達成したとしていたが、これは共同倉庫に係る光熱費、荷役料等の経費のみを基に算出されたものであり、7倉庫に係る光熱費、荷役料等の経費は考慮されていなかった。そして、7倉庫に係る経費を含めて30年度の10a当たりの流通コストを算出すると3,161円となり、成果目標の2,514円のみならず、事業実施前の27年度の10a当たりの流通コスト2,543円をも大きく上回っており、集約することにより物流を合理化して流通コストを低減するという目的は達成されていなかった。

したがって、米の保管等を行う倉庫の機能を集約するために共同倉庫を新設したにもかかわらず、共同倉庫に計画どおり米の保管等の機能が集約されておらず、物流の合理化により低減するとしていた流通コストは事業実施前を大きく上回るなど、本件交付金事業により整備された共同倉庫(事業費1,134,961,200円)は、補助の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額525,445,000円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、経済連において、事業実施計画の実行に関する検討を十分に行っていなかったこと並びに事業実施計画の目的に沿って事業を実施すること及び実施状況報告を適正に行うことの認識が欠けていたこと、同県において、経済連から提出された実施状況報告等に対する審査が十分でなかったこと、九州農政局において、同県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。