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(1) 強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)の実施に当たり、過去事業において成果目標を達成していない場合にその要因等を報告するなどの仕組みを導入するよう改善の処置を要求し、及び成果目標を達成していても出荷量等の実績値が目標値を下回っている場合は当該目標値に達するまで実績値の状況を確実に把握した上で改善に向けた指導等を行うことについて、改めて周知徹底するよう是正改善の処置を求めたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)農林水産本省
(項)農業・食品産業強化対策費
部局等
農林水産本省、5農政局
補助の根拠
予算補助
補助事業者
12道県
間接補助事業者
(事業主体)
42事業実施主体
補助事業等
強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)
補助事業等の概要
産地農業において中心的な役割を果たしている農業者団体等による産地の基幹施設の導入を支援するなどのもの
都道府県が地方農政局等と成果目標の妥当性について協議する際、過去事業における成果目標の達成状況等を報告することとしていないなどの事業数及び事業費
15事業58億3174万余円(平成26年度~令和元年度)
上記に係る交付金交付額
26億9672万円(背景金額)
出荷量等の実績値が目標値を下回っているのに、その後の出荷量等の実績値の状況の把握をしておらず、それを踏まえた改善指導を行っていない事業数及び事業費
37事業75億8300万余円(平成26年度~30年度)
上記に係る交付金交付額
33億6098万円

【改善の処置を求め及び是正改善の処置を求めたものの全文】

強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)の実施について

(令和3年10月27日付け農林水産大臣宛て

標記について、下記のとおり、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求し、及び同法第34条の規定により是正改善の処置を求める。

1 強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)の概要等

(1)強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)の概要

貴省は、食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)に基づき策定された食料・農業・農村基本計画に基づき、消費者・実需者ニーズを踏まえた国産農畜産物の安定的供給体制の構築を図るため、産地としての持続性を確保し、収益力を向上するための取組の推進等に取り組むこととしている。

貴省は、「強い農業・担い手づくり総合支援交付金実施要綱」(平成31年30生産第2218号農林水産事務次官依命通知。以下「要綱」という。)等に基づき、産地の基幹施設の整備等を支援することとし、平成17年度から30年度までは強い農業づくり交付金事業を、令和元年度以降は強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業を実施している。そして、これらの事業により施設等を整備する事業を実施する事業実施主体に交付金を交付する都道府県に対して、強い農業・担い手づくり総合支援交付金等を交付している。強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業は、強い農業づくり交付金事業及び経営体育成支援事業実施要綱(平成23年22経営第7296号農林水産事務次官依命通知)等に基づき実施していた経営体育成支援事業を統合するなどした事業であり、産地農業において中心的な役割を果たしている農業者団体等による産地の基幹施設の導入を支援する産地基幹施設等支援タイプ、広域に展開する農業法人等の経営の高度化に必要な農業用機械・施設の導入を支援する先進的農業経営確立支援タイプ、農業者の経営基盤の確立や更なる発展に向けた農業用機械・施設の導入を支援する地域担い手育成支援タイプなど複数の種類がある。

そして、これらのうち産地基幹施設等支援タイプに係る事業(食料産業局(3年7月以降は大臣官房新事業・食品産業部)所掌の事業及び被災対策事業を除き、統合前の強い農業づくり交付金事業における同種事業を含む。以下「整備事業」という。)における平成26年度から令和元年度までの交付金交付額は計1149億3387万余円となっている。

(2)成果目標の設定

要綱等によれば、整備事業の実施に当たり、事業実施主体は、成果目標の目標年度(以下「目標年度」という。)における成果目標を設定するなどして、その成果目標や成果目標の妥当性等を記載した事業実施計画を都道府県に提出することとされており、提出を受けた都道府県は、採択要件に適合しているかなど、その内容について必要な審査及び指導を行うこととされている。また、採択要件については、各事業において成果目標の基準を満たしていることなどとされている。そして、都道府県は上記の事業実施計画を踏まえて都道府県事業実施計画を作成して地方農政局等に提出し、その成果目標の妥当性について、地方農政局等と協議を行い、地方農政局等は、その内容を確認することとされている。

また、要綱によれば、産地基幹施設等支援タイプにおける成果目標の内容及び達成すべき成果目標の基準は「強い農業・担い手づくり総合支援交付金のうち産地基幹施設等支援タイプの配分基準について」(平成31年30食産第5394号等農林水産省食料産業局長等通知)等において、整備事業の対象施設(注1)ごとに、単位面積当たりの販売額の増加、収量の増加、全出荷量に占める上位規格品等の割合の増加等の増減率を所定の割合以上とすることなどが示されており、事業実施主体は、これらの中から二つ以内の成果目標を設定することとなっている。

(注1)
整備事業の対象施設産地競争力の強化を目的とする取組に係る対象施設は、農産物処理加工施設、集出荷貯蔵施設等の共同利用施設等がある。

(3)成果目標の達成状況の評価

要綱によれば、整備事業においては、目標年度を原則として事業実施年度の翌々年度とすることとされている。また、事業実施主体は、事業実施計画の目標年度の翌年度において、事業実施計画に定められた目標年度の成果目標の達成状況について、自ら評価を行い、評価報告を作成して、その結果を都道府県に報告することとされている。

そして、都道府県は、上記の報告を受けた場合には、その内容を点検評価し、事業実施計画に定められた目標年度の成果目標の全部又は一部が達成されていないときその他必要と判断したときは、当該事業実施主体に対して改善計画を提出させるなど、適切な改善措置を講ずるとともに、当該成果目標が達成されるまでの間、改善状況の報告をさせること、また、上記の点検評価の結果について目標年度の翌年度に地方農政局等に報告することなどとされている。

地方農政局等は、都道府県による報告を受けた場合、遅滞なく関係部局で構成する検討会を開催して成果目標の達成度等の評価を行うこととされ、その評価結果を踏まえて必要に応じて都道府県を指導することなどとされている。なお、強い農業づくり交付金(産地競争力の強化)における評価のガイドライン(平成27年生産局総務課生産推進室等作成)によれば、地方農政局等は、都道府県平均達成率(注2)が90%未満の場合、都道府県に対して改善措置を提出させることとされている。

本院は、平成27年10月に貴省に対して、農業・食品産業強化対策整備交付金事業(強い農業づくり交付金事業を含んだ事業)における成果目標の達成状況の評価等に関して、出荷量等の実績が計画を下回っていても、その割合等の数値が目標値に達していることから成果目標を達成したと評価するなど、成果目標の実質的な評価が行われていないなどしている事態について、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。その後、貴省は、本院の要求に対して、「強い農業づくり交付金における成果目標の妥当性審査及び評価報告書の点検評価のための手引(平成28年農林水産省生産局総務課生産推進室等作成。以下「手引」という。)を作成するなどの処置を講じた。そして、手引により、都道府県は、点検評価を実施する際に、成果目標を達成したとしている場合においても、成果目標の目標値の算出根拠となる出荷量等の実績値が目標値を下回るなどの状況になっている場合は、出荷量等の実績値が目標値に達するまでの間、状況の把握を行うとともに、事業実施主体に対して、改善に向けた指導等を行うこととされた。

貴省によると、点検評価の際は、販売額の増加、収量の増加、全出荷量に占める上位規格品の割合の増加等の成果目標が所定の割合以上となっているかだけでなく、その根拠となる数字についても実績値を把握して実質的な評価が行われるよう、実績値が目標値に達するまでの間、状況の把握等を行うことになっているとしている。そして、上記の改善に向けた指導等の方法については、出荷量等の実績値を含む総合的な状況を把握した上で、都道府県において通常の業務(普及指導等)を通じて事業実施主体に対して指導等を行うことになっているとしている。

(注2)
都道府県平均達成率評価する事業のそれぞれの成果目標の達成率を合計し、成果目標数で除して算出したもの

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、有効性等の観点から、強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業のうち、交付金額が多額であり、設定する成果目標の内容が多岐にわたっており、事業実施主体の数値を基にするなどして成果目標を設定することとなっている整備事業について、事業実施計画における成果目標等は適切に設定されているか、出荷量等の実績値が目標値を下回っている場合の対応は適切に行われているかなどに着眼して、26年度から令和元年度までの間に23道県(注3)で実施された417事業(成果目標件数831件、事業費計1298億3502万余円、交付金交付額計580億7111万余円)を対象として検査を実施した。

検査に当たっては、貴省本省及び11道県(注4)において、事業実施計画の事業内容、成果目標の達成状況に関する根拠資料を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、上記の23道県から整備事業が実施される地域における過去の整備事業の成果目標の達成状況等に関する調書、事業実施計画、評価報告書の提出を受けて、その内容を分析するなどして検査した。

(注3)
23道県北海道、岩手、山形、福島、茨城、群馬、千葉、新潟、富山、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀、兵庫、鳥取、島根、徳島、佐賀、長崎、熊本、宮崎各県
(注4)
11道県北海道、茨城、群馬、長野、岐阜、三重、滋賀、兵庫、鳥取、長崎、熊本各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)都道府県が地方農政局等と成果目標の妥当性について協議する際、過去事業における成果目標の達成状況等を報告することとしていないなどの事態

要綱等において、過去に整備事業を行った事業実施主体が再度整備事業を行うことについて、特段制限は設けられていない。

そして、都道府県が地方農政局等と成果目標の妥当性について協議する際、事業実施主体が過去に実施した整備事業における成果目標の達成状況等について留意することとされていない。この理由について、貴省は、整備事業においては事業実施主体が同じであっても受益者(注5)は必ずしも一致しない取組が大部分を占めており、整備事業の新たな受益者が不利益を被ることがないよう、過去に実施した整備事業における成果目標の達成状況について考慮するような規定を設けていないことによるとしている。

しかし、新たな整備事業(以下「新事業」という。)と同一の事業実施主体が過去に同一の品目及び地域を対象として実施した整備事業(以下「過去事業」という。)については、新事業と過去事業の受益者が相当数重複する場合もあると考えられ、過去事業において成果目標を達成していない場合に、その要因等を把握することなく新事業を実施すると、新事業の成果目標についても同様に達成されないなどするおそれがあると考えられる。

そこで、23道県において、整備事業を実施する年度以前の10か年度の間に、過去事業を実施しているかどうか確認したところ、平成26年度から令和元年度までの間に実施された12道県における33事業(事業費計112億5322万余円、交付金交付額計49億9663万余円)において過去事業が実施されており、これらの中には現に受益者が相当数(7割程度以上)重複しているものが一定程度見受けられた。そして、上記の33事業について、次のような事態が見受けられた。

(注5)
受益者整備事業で整備された施設を利用する農業者

ア 過去事業における成果目標の達成状況や過去事業において成果目標を達成していない状況となった要因等を報告することとしていないなどの事態

過去事業における成果目標の達成状況(注6)等について、過去事業の評価報告書等により確認したところ、表1のとおり、新事業の実施時点において過去事業における成果目標が達成されていない事業が、6道県における計14事業(事業費計45億7450万余円、交付金交付額計21億1475万余円)あった。このうち、新事業の目標年度が元年度までとなっている9事業についてみたところ、5道県における7事業については、新事業において元年度までに新事業の成果目標が達成されていなかった。

表1 新事業の実施時点において過去事業における成果目標が達成されていない事業

(単位:事業、千円)
道県名 新事業の実施時点において、過去事業における成果目標が達成されていない事業
目標年度が令和元年度までの新事業のうち、新事業の成果目標が元年度までに達成されていないもの
事業数 実施年度 事業費 交付金
交付額
過去事業の
実施年度
事業数 事業費 交付金
交付額
北海道 1 平成29年度 472,802 236,401 平成26年度 1 472,802 236,401
山形県 1 令和元年度 164,230 71,250 平成27年度 0 0 0
静岡県 1 平成26年度 202,068 93,550 平成21年度 1 202,068 93,550
1 平成27年度 79,920 26,812 平成21年度 0 0 0
三重県 1 平成27年度 1,056,142 488,955 平成19年度 1 1,056,142 488,955
熊本県 1 平成29年度 49,032 22,700 平成25年度 1 49,032 22,700
1 平成29年度 980,218 453,805 平成23年度 1 980,218 453,805
1 平成29年度 306,277 141,795 平成23年度 1 306,277 141,795
1 平成29年度 53,514 23,374 平成25年度 0 0 0
1 令和元年度 122,293 55,588 平成25年度 0 0 0
1 令和元年度 293,920 133,600 平成23年度 0 0 0
宮崎県 1 平成30年度 159,568 73,874 平成26年度 1 159,568 73,874
1 令和元年度 550,365 254,798 平成23年度 0 0 0
1 令和元年度 84,150 38,250 平成23年度 0 0 0
6道県 14 4,574,502 2,114,752 7 3,226,109 1,511,080

このように、新事業を実施する時点において過去事業における成果目標が達成されていない場合、新事業においても同様に成果目標が達成されないなどするおそれがあることから、6道県は、成果目標の妥当性についての地方農政局等との協議において、過去事業における成果目標の達成状況や過去事業において成果目標を達成していない状況となった要因等について、天候や市場の変化等の外的要因等により達成されていない場合も含めて報告する必要があったと考えられる。

しかし、6道県は、要綱等に規定されていないことから、過去事業における成果目標の達成状況等を報告することとしていなかったり、協議時の状況を確認することができず報告したかどうか不明であるとしていたりしていた。

(注6)
成果目標の達成状況地方農政局等は、都道府県平均達成率が90%未満の場合、都道府県に対して改善措置を提出させることとなっていることから、達成状況の分析に当たっては、成果目標の達成率が90%以上のものを成果目標が達成されたものとした。(2)の事態についても同様である。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

事例1

A事業実施主体は、熊本県玉名市において、平成29年度に整備事業によりトマトを対象とした集出荷貯蔵施設(選果施設)の整備を980,218,800円で実施し、交付金453,805,000円の交付を受けていた。一方、A事業実施主体は23年度にも29年度の整備事業と同一の品目及び地域を対象とした整備事業により、集出荷貯蔵施設(選果施設)を整備しており、この事業における成果目標のうち、秀品の割合を増加させる成果目標は目標年度である25年度において達成していない状況となっていて、29年度の整備事業の実施時においても達成していない状況となっていた。しかし、熊本県は、事業開始前に29年度の整備事業の成果目標の妥当性について九州農政局と協議するに当たって、要綱等に規定されていないことから、23年度の整備事業の成果目標の達成状況等を協議事項に含めていなかった。また、同局は、要綱等に規定されていないことから、これを考慮するよう指示をしていなかった。そして、29年度の整備事業及び23年度の整備事業共に令和元年度までにおいてそれぞれの成果目標を達成していない状況となっていた。

イ 過去事業において設定した成果目標を下回る成果目標を設定していた場合に、その旨やその理由等を報告することとしていないなどの事態

過去事業において設定した成果目標を下回る成果目標を新事業において設定することは、それが過去事業着手後の天候や市場の変化等の外的要因の影響等を考慮したことによるものではない場合、成果目標が合理的な理由もなく低くなっているおそれがある。

そこで、過去事業の成果目標について事業実施計画等により確認したところ、表2のとおり、過去事業において設定した成果目標を下回る成果目標を設定している新事業が4県における計4事業(事業費計15億5913万余円、交付金交付額計7億1484万余円)あった。

表2 新事業の成果目標が過去事業において設定した成果目標を下回っていた事業

県名 事業数 実施年度 事業費(千円) 交付金交付額(千円) 過去事業の実施年度
山形県 1 令和元年度 164,230 71,250 平成23年度
長野県 1 令和元年度 1,257,242 581,970 平成23年度
熊本県 1 平成29年度 53,514 23,374 平成25年度
宮崎県 1 令和元年度 84,150 38,250 平成23年度
4県 4 1,559,136 714,844

しかし、4県は、成果目標の妥当性についての地方農政局等との協議において、過去事業における成果目標を下回っていることやその理由等について報告する必要があったと考えられるが、4県は、要綱等に規定されていないことから、それらを報告することとしていなかったり、協議時の状況を確認することができず報告したかどうか不明であるとしていたりしていた。

ア及びイの事態には事業が重複しているものがあることから、その重複を控除すると、これらの事態に係る整備事業は7道県における計15事業(事業費計58億3174万余円、交付金交付額計26億9672万余円)となる。

(2)出荷量等の実績値が目標値を下回っているのに、その後の出荷量等の実績値の状況の把握をしておらず、それを踏まえた改善指導を行っていない事態

整備事業は、前記のとおり、二つ以内の成果目標を設定することなどとなっているが、平成26年度から30年度までの間に実施された23道県において、目標年度が令和元年度までとなっている事業(成果目標の件数677件)のうち、元年度までに目標達成と評価した件数は、402件(当該成果目標に係る事業数(以下「事業数」という。)計254事業、事業費計808億2411万余円、交付金交付額計361億1303万余円)となっていた。そして、評価報告書等において確認したところ、このうち18道県における131件は出荷量等の実績値が目標値を下回っていた。

前記のとおり、平成27年10月の本院の指摘を受けて貴省が作成した手引において、都道府県は、評価報告書の点検評価を実施する際に、成果目標を達成したとしている場合においても、出荷量等の実績値が目標値を下回るなどの状況になっている場合は、出荷量等の実績値が目標値に達するまでの間、状況の把握を行うとともに、事業実施主体に対して改善に向けた指導等を行うこととされている。

しかし、18道県に出荷量等の実績値の把握の状況を確認したところ、表3のとおり、131件のうち、10県における52件(事業数計37事業、事業費計75億8300万余円、交付金交付額計33億6098万余円)については、10県は、評価報告書等の提出を受けた後、出荷量等の実績値を把握しておらず、それを踏まえた改善指導を行っていなかった。

なお、8県における31件については、令和2年度までにおいても目標値を下回っている状況となっていた。

表3 出荷量等の実績値が目標値を下回っているのに、その後の出荷量等の実績値の状況の把握をしておらず、それを踏まえた改善指導を行っていない事態

県名 出荷量等の実績値が目標値を下回っているのに、その後の出荷量等の実績値の状況の把握をしておらず、それを踏まえた改善指導を行っていなかった件数等
左のうち、令和2年度までにおいて出荷量等の実績値が目標値を下回っている件数等
成果目標
件数
事業数 事業費
(千円)
交付金交付額
(千円)
成果目標
件数
事業数 事業費
(千円)
交付金交付額
(千円)
山形県 2 1 635,137 255,150 0 0 0 0
茨城県 2 2 956,363 412,636 0 0 0 0
長野県 13 9 2,408,483 1,030,858 6 5 1,683,785 741,062
岐阜県 3 3 388,906 180,049 3 3 388,906 180,049
静岡県 3 2 154,278 61,237 3 2 154,278 61,237
滋賀県 3 2 130,879 56,670 3 2 130,879 56,670
兵庫県 5 3 334,746 154,747 5 3 334,746 154,747
佐賀県 1 1 109,219 50,564 1 1 109,219 50,564
熊本県 18 13 2,419,218 1,137,882 8 5 637,812 295,283
宮崎県 2 1 45,773 21,191 2 1 45,773 21,191
10県 52 37 7,583,006 3,360,984 31 22 3,485,401 1,560,803

上記について、事例を示すと次のとおりである。

事例2

B事業実施主体は、岐阜県安八郡神戸町において、平成26年度に、整備事業により集出荷貯蔵施設(建屋、予冷施設)の整備を280,061,280円で実施して、交付金129,658,000円の交付を受けていた。B事業実施主体は、成果目標として、果樹の全出荷量に占めるブランド品の割合を事業実施計画策定時(25年度)の66%から目標年度(28年度)に75%に増加させるなどとし、目標年度における全出荷量及びブランド品の出荷量についてはそれぞれ101,281kg、75,961kgと設定していた。そして、目標年度の28年度において、全出荷量に占めるブランド品の割合は87%となっており成果目標を達成したとしていた。

しかし、出荷割合については成果目標を達成していたものの、全出荷量及びブランド品の出荷量はそれぞれ44,280kg、38,630kgとなっており、目標年度における出荷量の目標値(101,281kg、75,961kg)を下回る状況となっていて、岐阜県は、出荷量等の実績値が目標値に達するまでの間、B事業実施主体に対して出荷量等の実績値の状況を把握した上で、改善に向けた指導等を行う必要があったのに、これを行っていなかった。なお、令和2年度までにおいても出荷量が目標値を達成していない状況となっていた。

(改善及び是正改善を必要とする事態)

強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業(産地基幹施設等支援タイプ)において、都道府県が地方農政局等と成果目標の妥当性について協議する際、過去事業における成果目標の達成状況や過去事業において成果目標を達成していない状況となった要因等を報告することとしていなかったり、過去事業において設定した成果目標を下回る成果目標を設定している場合に、その旨やその理由等を報告することとしていなかったりなどしている事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。また、出荷量等の実績値が目標値を下回っているのに、県において、その後の出荷量等の実績値の状況の把握や改善に向けた指導等を行っていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。

ア 貴省において、地方農政局等と都道府県との成果目標の妥当性の協議に当たり、都道府県が地方農政局等に対して、過去事業における成果目標の達成状況や過去事業において成果目標を達成していない状況となった要因等について報告したり、過去事業において設定した成果目標より低い成果目標を設定している場合にその旨やその理由等について報告したりすることを定めていないこと

イ 県において、手引の規定に基づき、整備事業の評価報告書の点検評価等に当たり出荷量等の実績値が目標値を下回っている場合にその後の出荷量等の実績値の状況の把握を行った上で改善に向けた指導等を行う必要があることについて認識が欠けていること

3 本院が要求する改善の処置及び求める是正改善の処置

貴省は、今後も消費者・実需者ニーズを踏まえた国産農畜産物の安定的供給体制の構築を図り、産地としての持続性を確保し、収益力を向上する取組の推進等に取り組むために強い農業・担い手づくり総合支援交付金事業を実施することとしている。

ついては、貴省において、整備事業の成果目標の妥当性の協議及び出荷量等の実績値の状況の把握が適切に行われるよう、次のとおり改善の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

ア 地方農政局等と都道府県における成果目標の妥当性の協議において、都道府県が地方農政局等に対して、過去事業における成果目標の達成状況や成果目標を達成していない場合の要因等を報告するとともに、新事業の成果目標が過去事業において設定した成果目標を下回る場合にその旨やその理由等を報告するなどの仕組みを導入すること(会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)

イ 都道府県に対して、成果目標を達成していても出荷量等の実績値が目標値を下回っている場合は当該目標値に達するまで出荷量等の実績値の状況を確実に把握した上で改善に向けた指導等を行うことについて、改めて周知徹底すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)