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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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電源立地地域対策交付金により整備した消火栓配管の設計が適切でなかったもの[近畿経済産業局](101)


所管、会計名及び科目
内閣府、文部科学省、経済産業省及び環境省所管
エネルギー対策特別会計(電源開発促進勘定)
(項)電源立地対策費
部局等
近畿経済産業局
交付の根拠
予算補助

(事業主体)
福井県大飯郡高浜町
交付金事業
電源立地地域対策交付金事業
交付金事業の概要
発電用施設の設置等の円滑化に資することを目的として発電用施設が所在する市町村等に対して交付するもの
交付対象事業費
7,074,000円(令和元年度)
上記に対する交付金交付額
6,000,000円
不当と認める交付対象事業費
4,141,470円
不当と認める交付金相当額
3,512,697円

1 補助金等の概要

経済産業省所管の補助事業等は、地方公共団体、会社等が事業主体となって実施するもので、同省は、この事業に要する経費について、直接又は間接に事業主体に対して補助金等を交付している。

同省は、電源立地地域対策交付金交付規則(平成28年文部科学省・経済産業省告示第2号)等に基づき、公共用施設の整備、地域住民の生活利便性向上や産業振興に資する事業等を推進することにより、発電用施設の設置及び運転の円滑化に資することを目的として、発電用施設が所在する市町村、これに隣接する市町村又はこれらの市町村をその区域内に含む都道府県等に対して、電源立地地域対策交付金(以下「交付金」という。)を交付している。

福井県大飯郡高浜町は、令和元年度に、高浜町立和田小学校において、災害時における消火栓の機能を確保することを目的として、老朽化した消火栓配管を改修する工事を工事費7,074,000円(全額交付金交付対象。これに対する交付金6,000,000円)で実施している。

同町は、本件工事の設計に当たり、建築基準法(昭和25年法律第201号)、「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修。以下「標準仕様書」という。)等に基づいて設計図書を作成していた。

建築基準法等に基づく告示「建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1388号。以下「告示」という。)によれば、建築物に設ける配管設備は、地震等に対して安全上支障のない構造とすること、管の伸縮その他の変形により当該管に損傷が生ずるおそれがある場合において、伸縮継手等を設けるなど有効な損傷防止のための措置を講ずることなどとされている。

そして、告示で定める地震等に対して安全上支障のない配管設備の構造として、標準仕様つ書等において、横走り配管については、その呼び径に応じて、吊り金物による吊り及び形鋼振れ止め支持を行うこととなっている。また、建築物が構造的に切り離された接合部分における配管については、フレキシブルジョイント(注)等による変位吸収措置を管軸方向及び管軸直角方向の2方向に対して行うことなどとなっている。

また、本件工事の契約書によれば、設計図書の表示が明確でないときなどには、請負人は同町が定めた監督職員に直ちにその旨を通知し、その確認を請求しなければならないこと、監督職員は契約の履行について請負人に指示し、協議し、又は承諾を与えるなどすることとされている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、消火栓配管の設計が適切に行われているかなどに着眼して、設計図書、現地の状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

同町は、本件工事の設計に当たり、消火栓配管(総延長134.45ⅿ)のうち横走り配管(延長計110.55ⅿ)の形鋼振れ止め支持については、建築物の壁面に固定する三角ブラケットを用いることとしていたが、これを用いることができない場合の支持方法を設計図書に明示していなかった。そして、上記横走り配管のうち2か所の配管(延長計18.3ⅿ)については、壁面から離れた所に位置するなどしていて三角ブラケットを用いることができないため、本件工事の請負人は、吊り金物による吊りだけを行うこととして、監督職員に確認を請求した。この請求に対して、監督職員は、建築物の軒等に固定する門型ブラケットを用いるなどの代替的な形鋼振れ止め支持の方法を指示するなどせずに、請求どおり承諾を与えたため、請負人はこれにより施工していた。そのため、上記2か所の配管については、形鋼振れ止め支持が行われていなかった(参考図1参照)。

また、同町は、建築物が構造的に切り離された接合部分3か所の消火栓配管についてフレキシブルジョイントによる変位吸収措置を管軸方向及び管軸直角方向の2方向に対して行う必要があったのに、誤って、1方向にだけ行うこととする設計図面等を作成していた。そして、本件工事はこれに基づき施工されていた(参考図2参照)。

このため、本件消火栓配管のうち計5か所の配管については、標準仕様書等で定められた要件を満たしておらず、告示で定められた地震等に対して安全上支障のない構造となっていなかった。

したがって、上記5か所の消火栓配管の設計が適切でなかったため、本件消火栓配管の一部(上記の5か所を含む配管延長計102.25ⅿ、工事費相当額4,141,470円)は、地震等の災害時に消火栓配管が損傷して、消火栓に消防用水を供給できなくなるおそれがある状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額計3,512,697円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において、消火栓配管の設計に関する告示、標準仕様書等についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
フレキシブルジョイント配管の変位、伸縮、振動等を吸収できる可撓性のある管継手

(参考図1)

①当局が設計を承諾した横走り配管の概念図

当局が設計を承諾した横走り配管の概念図1

②標準仕様書等に基づく横走り配管の概念図

当局が設計を承諾した横走り配管の概念図2

(参考図2)

①当局が設計したフレキシブルジョイントの概念図

当局が設計したフレキシブルジョイントの概念図1

②標準仕様書等に基づくフレキシブルジョイントの概念図

当局が設計したフレキシブルジョイントの概念図2