中国地方整備局(以下「整備局」という。)は、令和元、2両年度に、官公庁施設の建設等に関する法律(昭和26年法律第181号)の規定に基づき法務省からの委任を受けて、島根県松江市において、松江法務合同庁舎の庁舎(鉄筋コンクリート造4階建て)、舗装等の取壊し等の工事を工事費193,589,000円で実施している。
本件工事は、庁舎、舗装等の取壊しを行うとともに、庁舎等の取壊しに伴って生じたコンクリートブロック、アスベストを含有する石こうボード等(以下、これらを合わせて「コンクリートブロック等」という。)並びに舗装の取壊しに伴って生じた砕石及びアスファルト(以下、これらを合わせて「砕石等」という。)の運搬、処分等(以下、運搬、処分等を合わせて「処理」という。)を行うなどするものである。
整備局は、本件工事の設計を設計コンサルタントに委託して、積算数量算出書等の成果品の提出を受けており、この成果品に基づくなどして、本件工事の予定価格の算定に係る設計数量を算出するなどしている。
また、本件工事の契約書によれば、受注者は、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が一致しないなどの事実を発見したときは、その旨を直ちに監督職員に通知して、その確認を請求しなければならないこととされている。また、発注者は、当該事実が確認された場合において必要があると認められるときは、設計図書の変更等を行わなければならず、設計図書の変更等が行われた場合において必要があると認められるときは、契約額の変更等を行わなければならないこととされている。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の算定に係る設計数量が適切なものとなっているか、契約額の変更が工事の実態を踏まえて適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、整備局において、設計図書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア 整備局は、庁舎のうち一部の居室の取壊しに伴って生じたコンクリートブロック等の処理に係る設計数量について、前記の成果品を基に404.5m3と算出していた。しかし、この設計数量は、前記の設計コンサルタントが、算出に用いた表計算ソフトに、箇所数として1を入力すべきであるのに、誤って88と入力するなどして算出していたものであった。このため、コンクリートブロック等の処理に係る設計数量が適正な設計数量である5.4m3に対して399.1m3過大となっていた。また、庁舎のうち一部の居室の天井ボードの取壊し等に係る設計数量についても、同様の誤りにより1,708.0m2過大となっていた。
イ 整備局は、建設当時に作成された図面の舗装厚450mmを基に、舗装の取壊し及び取壊しに伴って生じた砕石等の処理に係る設計数量を393.0m3及び393.7m3と算出していた。そして、整備局は、工事期間中に、請負人から実際の工事現場の舗装厚が300mmである旨の通知を受けて、これを了とする旨回答し、請負人はこれにより施工していた。しかし、上記のとおり、実際の工事現場の舗装厚が設計図書等に示されたものより薄くなっていたことから、施工数量はその割合に応じて減少することとなるのに、整備局は、必要な設計図書の変更を行った上で契約額を減額する契約変更を行っていなかった。このため、舗装の取壊し及び取壊しに伴って生じた砕石等の処理に係る設計数量が舗装厚を300mmとして算出した適正な設計数量である262.0m3及び262.7m3に対して、それぞれ131.0m3過大となっていた。
ア及びイのほか、舗装の取壊し後の埋戻しを全て取りやめることにしていたのに、変更契約においては、誤って、上記埋戻しのうち一部のみを取りやめることとして設計数量を算出していたため、埋戻しに係る設計数量が393.0m3過大となっていた。
したがって、適正な設計数量に基づくなどして、本件工事費を修正計算すると、181,591,405円となることから、本件契約額193,589,000円はこれに比べて11,997,595円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、整備局において、本件工事の予定価格の算定に当たり委託した業務の成果品における設計数量の確認が十分でなかったこと、設計図書等に示された施工条件と実際の工事現場が一致しない本件工事において、必要な設計図書の変更を行った上で施工数量の減少に応じて契約額を減額する契約変更を行う必要があることについての認識が欠けていたことなどによると認められる。