(3件 不当と認める国庫補助金 65,833,082円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額 |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(104) | 栃木県 |
栃木県 |
河川等災害復旧 |
27、28 | 122,364 (122,364) |
81,616 | 71,712 (71,712) |
47,832 |
(105) | 広島県 |
広島県 |
同 | 28 | 20,151 (17,328) |
11,558 | 16,051 (16,051) |
10,706 |
(106) | 同 | 同 | 同 | 平成30~令和3 |
299,789 (230,367) |
153,654 | 10,935 (10,935) |
7,294 |
(104)―(106)の計 | 442,304 (370,059) |
246,829 | 98,700 (98,700) |
65,833 |
これらの補助事業は、2県が、那須塩原市金沢地内の一級河川箒川、尾道市西藤町地内の二級河川藤井川及び福山市本郷町地内の二級河川本郷川において、豪雨により被災した護岸等を復旧するために、護岸の築造、根固工の敷設等を実施したものである。このうち、根固工は、護岸の基礎を保護するために、コンクリート製ブロック(以下「根固ブロック」という。)を基礎前面の河床に敷設したものである。
2県は、根固工等の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編。以下「技術基準」という。)等に基づき行っている。
技術基準等によれば、護岸の破壊は、基礎部の洗掘を契機として生ずることが多いとされ、根固工は、その地点の流勢を減じて、更に河床を直接覆うことで急激な洗掘を緩和する目的で設置されるものとされている。そして、根固工は、護岸の基礎前面に洗掘を生じさせない敷設量とすることなどとされており、そのために必要となる根固ブロックの敷設幅(以下「必要敷設幅」という。)は、根固ブロック1列分又は2.0m程度以上の平坦幅(以下「必要平坦幅」という。)に、その前面で河床が低下した場合に、根固ブロック敷設高から低下した河床部分に向けて生ずる斜面の長さ(勾配を30度と見込むため河床が低下した場合の深さの2倍となる。)に相当する幅(以下「斜面長相当幅」という。)を加えた幅を確保することとされている。
しかし、根固ブロックの敷設幅の設計に当たり、栃木県は、前記の豪雨で被災しなかった既設の根固ブロックと同様に敷設することとして、技術基準等によることなく、敷設幅を決定していた。また、広島県は、根固ブロック敷設高を変更していたのに敷設幅を見直していなかったり、根固ブロック敷設高から低下する河床の深さを誤って斜面長相当幅を算出していたりなどしていた。そして、いずれもこれにより施工していた。
このため、本件根固工は、いずれも必要敷設幅を満たしていないことから、河床の洗掘が進行すると護岸に損傷が生ずるおそれがある状況となっていた。
したがって、本件根固工は、設計が適切でなかったため、護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件護岸、根固工等は、工事の目的を達しておらず、これらに係る国庫補助金相当額計65,833,082円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2県において、根固工の必要敷設幅に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
栃木県は、那須塩原市金沢地内の一級河川箒川において、平成27、28両年度に、豪雨により被災した護岸等を復旧するために、根固工(延長155.1m)の敷設等を実施している。
同県は、根固ブロックの敷設幅の設計に当たり、本件工事箇所の上流に敷設されていた既設の根固ブロック(幅1.89mの根固ブロックを3列に敷設するなどしたもの)が上記の豪雨で被災しなかったことから、本件根固ブロックの敷設幅についても、既設の根固ブロックと同様の設計にすれば問題ないと考えて、技術基準等によることなく、延長139.2mにわたり幅1.89mの根固ブロックを3列に敷設するなどして敷設幅を計5.87mとすることとして、これにより施工していた(参考図1参照)。
しかし、技術基準等によれば、必要敷設幅は、河床が低下した場合の深さに基づき算定することとされている。そこで、本件工事箇所における前記の豪雨により河床が低下した深さ2.45mに基づき計算すると、必要平坦幅は1.89m、斜面長相当幅は4.90mとなり、必要敷設幅は6.79mとなることから、同県が設計した根固ブロックの敷設幅は、これに対して0.92m不足していた(参考図2参照)。
したがって、本件根固工のうち延長139.2mは、設計が適切でなかったため、護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていて、本件護岸、根固工等(工事費相当額71,712,719円、国庫補助金相当額47,832,383円)は工事の目的を達していなかった。
(参考図1)
施工直後の根固工の断面概念図
(参考図2)
洗掘により河床が低下した後の根固工の断面概念図