(1件 不当と認める国庫補助金 4,931,045円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額 |
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---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(110) |
国土交通本省
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鹿児島県
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空港整備 |
26、27 |
60,848 (60,848) |
48,678 | 6,163 (6,163) |
4,931 |
この補助事業は、鹿児島県が、沖永良部空港において、外部から空港内の立入禁止区域への立入りを防止するために空港の外周に設置されていた空港場周柵が老朽化していたため、これを撤去するなどして、新たに、空港場周柵(高さ1,800mm又は2,500mm、延長計1,558.2ⅿ)を設置するなどの工事を実施したものである(参考図1参照)。
同県は、本件工事の設計を「空港土木施設構造設計要領及び設計例」(平成20年7月国土交通省航空局監修。以下「設計要領」という。)等に基づいて行っている。設計要領によれば、空港場周柵の転倒に対する安定性に関しては、主たる作用が風荷重である状態において、基礎に作用する自重による抵抗モーメントと側圧抵抗モーメント(注1)の和を転倒モーメント(注2)で除して求められる安全率が1.0以上である場合には、求められる性能を満足するとみなすことができるとされている(参考図2参照)。また、空港場周柵が設置される地盤が平たんでなく、法肩又は法面の途中に設置される場合においては、転倒に対する検討について十分注意する必要があるとされている。
同県は、本件工事の設計に当たり、空港場周柵を設置する区間の地盤が全て平たんであるとして、主たる作用が風荷重である状態において、基礎の前面に作用する土圧を基に側圧抵抗モーメントを算出して、転倒に対する安定計算を行っていた。その結果、安全率はいずれも1.0以上であることから、設計計算上安全であるとして、これにより施工していた。
しかし、空港場周柵が設置されている区間の地盤は全てが平たんなものとはなっておらず、一部の区間における空港場周柵は法肩や法面の途中に設置されていて、平たんな場所に設置する場合と比べて、基礎の前面の土量が少なくなることにより基礎の前面に作用する土圧が減少するのに、これを考慮した転倒に対する安定計算を行っていなかった。
そこで、改めて、法肩や法面の途中に設置されている空港場周柵について、現地の状況を踏まえて基礎ごとに前面に作用する土圧の減少を考慮して側圧抵抗モーメントを算出するなどして転倒に対する安定計算を行ったところ、延長計127.0ⅿについては、安全率が0.46から0.98となっていて許容値である1.0を下回っており、設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった(参考図3参照)。
したがって、本件工事で設置した空港場周柵のうち延長127.0ⅿ(工事費相当額計6,163,807円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されておらず、転倒するおそれがある状態になっていて、これに係る国庫補助金相当額計4,931,045円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、空港場周柵を法肩又は法面の途中に設置する場合の設計についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
空港場周柵の概念図
(参考図2)
平たんな場所に設置されている空港場周柵の断面概念図
(参考図3)
法面の途中に設置されている空港場周柵の断面概念図