(1件 不当と認める国庫補助金 3,523,009円)
部局等 |
補助事業者等 |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額 |
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千円 |
千円 |
千円 |
千円 |
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(111) | 広島県 |
広島県 |
河川等災害復旧 |
30 |
25,927 (25,289) |
16,867 | 5,281 (5,281) |
3,523 |
この補助事業は、広島県が、平成30年7月に発生した豪雨により被災した一般県道牧油木線の道路路肩部分及び法面を復旧するために、石・ブロック積(張)工、防護柵工等を実施したものである。
このうち、石・ブロック積(張)工は、法面を保護するために、ブロック積擁壁(高さ5.0m、延長計13.7m)を築造するものであり、防護柵工は、車両が道路路肩部分から法面へ転落するのを防止するために、支柱を土中に埋め込む構造のガードレールをブロック積擁壁に近接して延長36.0mにわたって設置するものである(参考図参照)。
同県は、ブロック積擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行うこととしており、同県は、指針に示された擁壁の直高と法面勾配等の関係表等に基づき、ブロック積擁壁の安全性の検討を行ったところ、擁壁の直高等が安全とされる範囲内に収まっていたことなどから、設計上安全であるとし、これにより施工していた。
また、同県は、ガードレールの設計について「防護柵の設置基準・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「設置基準」という。)に基づいて行うこととしており、設置基準によれば、現地の地盤等があらかじめ設計で見込んだ支持力を有するか否かを照査する必要があるとされている。
そして、ガードレールの設計に当たっては、一般的に設置基準と併せて「車両用防護柵標準仕様・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「防護柵設計標準」という。)が用いられている。防護柵設計標準によれば、車両がガードレールに衝突する際の荷重(以下「衝突荷重」という。)に対する支柱の支持力は、支柱の背面土が反力として抵抗するため、その背面土の質量と密接な関係にあるとされ、このことから支柱1本が関与する背面土の質量(以下「背面土質量」という。)を算出するなどして支柱の支持力を評価することとされている。
しかし、同県は、ガードレールの支柱の支持力についての検討を行うことなくガードレールの設計を行い、これにより施工していた。
そこで、実際の施工状況に基づいて、施工されたガードレールの支柱の支持力について、背面土質量により評価するなどして確認したところ、延長36.0mのうち8.0mの区間において、同支柱がブロック積擁壁に近接した位置に設置されていたことから、同支柱の背面土質量は、必要とされる背面土質量0.82tを大幅に下回る0.288tから0.376tとなっていて、同支柱は所要の支持力が得られていなかった。このため、上記延長8.0mの区間のガードレールに車両が衝突した場合、ブロック積擁壁には、設計時に想定していなかった衝突荷重が作用することになることから、衝突荷重を考慮して滑動に対する安定計算を行ったところ、安全率は0.85及び0.87となり、いずれも許容値である1.2を大幅に下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、延長8.0m区間に係るガードレール、ブロック積擁壁等(工事費相当額5,281,925円)は、ガードレールの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額3,523,009円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、ガードレールの支柱の支持力を照査することに対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
ガードレール、ブロック積擁壁等の概念図