(2件 不当と認める国庫補助金 5,365,887円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 |
年度 |
事業費
国庫補助対象事業費
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左に対する国庫補助金等交付額 |
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
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不当と認める国庫補助金等相当額 |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(122) | 長野県 |
長野県 |
防災・安全交付金(道路) |
28 | 36,860 (36,860) |
18,430 | 7,672 (7,672) |
3,836 |
(123) | 同 | 同 | 同 | 28 | 69,746 (69,746) |
38,360 | 2,781 (2,781) |
1,529 |
(122)(123)の計 | 106,606 (106,606) |
56,790 | 10,453 (10,453) |
5,365 |
これらの交付金事業は、長野県が、北信建設事務所飯山事務所(以下「飯山事務所」という。)において、一般国道292号有尾トンネル内から発信された事故等の発生情報を飯山事務所が受信するための受信制御機を更新したり、大町建設事務所において、停電の場合でも一般県道槍ヶ岳線七倉トンネルの遠隔監視を行うための無停電電源装置を更新したりするなどの電気通信設備工事を実施したものである。
同県は、電気通信設備工事共通仕様書(国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室編集。以下「共通仕様書」という。)等に基づき、本件両工事の設計、施工等を請負人に行わせることとしていた。共通仕様書によれば、設備の据付けに当たっては、地震時における転倒等の事故を防止できるよう、共通仕様書に規定する耐震据付設計基準(以下「設計基準」という。)を満たした適切な耐震施工を施さなければならないことなどとされており、設備の据付けに使用するアンカーボルトの選定に当たっては、設備に作用する水平力及び鉛直力に応じた適切なものを選定しなければならないこととされている。また、設備をフリーアクセス床(注)に固定する場合は、設備部分の床パネルを切り取り、コンクリート床に専用架台を設けてボルトで固定することなどとされている。
そして、監督職員は、設備の据付けが行われる前に、請負人から設計基準を満たした設計となっていることを示した強度検討書を提出させて、これを確認した上で、請負人に適切に施工させることになっている。
しかし、受信制御機の更新において、強度検討書の作成及び確認が行われておらず、適切なアンカーボルトが使用されていなかったり、無停電電源装置の更新において、強度検討書の作成及び確認が行われておらず、フリーアクセス床の床パネルに取付ボルトで固定されているのみであったりしていて、設計基準等を満たした適切な耐震施工が行われていない事態が見受けられた。
したがって、受信制御機及び無停電電源装置は、設計及び施工が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、地震時における所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていて、これらに係る交付金相当額計5,365,887円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、監督及び検査に当たり共通仕様書についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
長野県は、平成28年度に、飯山事務所において、一般国道292号有尾トンネルの遠隔監視を行うための受信制御機を更新するなどの電気通信設備工事を事業費36,860,400円(交付対象事業費同額、交付金交付額18,430,200円)で実施していた。
同県は、共通仕様書等に基づき、本件工事の設計、施工等を請負人に行わせることとしていた。また、同県は、更新前の受信制御機をコンクリート床に据え付けるのに利用していた架台(以下「既設架台」という。)をそのまま利用して据え付けさせていた。
しかし、同県の監督職員は、請負人が既設架台に受信制御機を据え付けるに当たり、請負人に強度検討書の提出を求めておらず、既設架台を利用した受信制御機の据付けが設計基準等を満たしているか確認していなかった。また、請負人は、強度検討書を作成することなく、受信制御機を固定していた。
そこで、既設架台とコンクリート床との固定状況を確認したところ、あと施工アンカーボルト(注1)(径10mmのもの計4本)により固定されていた(参考図参照)。そして、同アンカーボルトに地震時に作用する引抜力(注2)を計算したところ、6.07kN/本となり、許容引抜力(注2)0.75kN/本を大幅に上回っていて、計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、受信制御機(工事費相当額7,672,300円、交付金相当額3,836,150円)は、設計及び施工が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていた。
(参考図)
あと施工アンカーボルトによる既設架台とコンクリート床との固定状況の概念図