ページトップ
  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (3) 工事の設計及び施工が適切でなかったもの

ダム管理用装置の設計及び施工が適切でなかったもの[新潟県](124)


(1件 不当と認める国庫補助金 13,178,633円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額
不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
         
千円
千円
千円
千円
(124)
新潟県
新潟県
防災・安全交付金(河川)
26、27
180,199
(156,413)
62,564
32,947
(32,947)
13,178

この交付金事業は、新潟県が、佐渡市新穂田野沢地内の久知川ダムにおいて、ダムの放流操作装置、遠方手動操作器(以下、これらを合わせて「放流操作装置等」という。)、テレメータ設備等を更新したり、同市新穂大野地内の大野川ダムにおいて、ダムの表示用端末装置及び操作端末装置(以下、これらを合わせて「表示用端末装置等」といい、放流操作装置等と合わせて「ダム管理用装置」という。)を更新したりするなどの電気通信設備工事を実施したものである。

久知川ダムの放流操作装置等は、洪水調節等を行うことを目的として、久知川ダムの流入量、放流量等を算出したり(以下、流入量、放流量等を合わせて「ダム諸量」という。)、放流設備を監視制御したりするなどのものである。また、大野川ダムの表示用端末装置等は、職員が常駐している大野川ダム管理所において、久知川ダムのダム諸量をディスプレイに表示したり、放流警報設備を監視制御したりすることにより、久知川ダムからの放流量が増大し下流の河川水位の上昇が予見される際に、大野川ダム管理所から住民等に避難を促す警報を発することができるようにするものである。

同県は、電気通信設備工事共通仕様書(国土交通省大臣官房技術調査課電気通信室編集。以下「共通仕様書」という。)等に基づき、本件工事の設計、製作、据付調整等を請負人に行わせることとしていた。共通仕様書によれば、設備の据付けに当たっては、地震時における転倒等の事故を防止できるよう、共通仕様書に規定する耐震据付設計基準(以下「設計基準」という。)を満たした適切な耐震施工を施さなければならないことなどとされている。そして、設備をフリーアクセス床(注)に固定する場合は、設備部分の床パネルを切り取り、コンクリート床に専用架台を設けてボルトで固定することなどとされている(参考図1参照)。また、パソコン等の卓上装置を卓上に設置する場合は、移動又は転倒等を防止するために、卓上装置を卓に耐震用品等で固定し、卓の脚をコンクリート床に固定することとされている。

そして、監督職員は、設備の据付けが行われる前に、請負人から設計基準を満たした設計となっていることを示した強度検討書を提出させて、これを確認した上で、請負人に適切に施工させることになっている。

しかし、同県の監督職員は、請負人がダム管理用装置を久知川ダム管理所及び大野川ダム管理所に据え付けるに当たり、請負人に強度検討書の提出を求めておらず、据付けが設計基準等を満たしているか確認していなかった。そして、請負人は、久知川ダムの放流操作装置等及び大野川ダムの表示用端末装置については、設計に当たり強度検討書を作成することなく、フリーアクセス床の床パネルに取付金具で固定したのみで、設計基準等を満たした適切な耐震施工を行っていなかった(参考図2参照)。また、大野川ダムの操作端末装置については、卓上装置であるのに、卓上に据え置いたのみで耐震用品等で固定していなかったり、卓を床パネル上に据え置いたのみで卓の脚をコンクリート床に固定していなかったりしていて、設計基準等を満たした適切な耐震施工を行っていなかった。

したがって、本件工事で更新したダム管理用装置(工事費相当額32,947,004円)は、設計及び施工が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして損傷し、地震時における所定の機能が維持できないおそれがある状態となっていて、これに係る交付金相当額13,178,633円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、監督及び検査に当たり共通仕様書についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1) 

共通仕様書に基づく施工例の概念図

共通仕様書に基づく施工例の概念図_画像

(参考図2) 

当局が行った施工の概念図

共通仕様書に基づく施工例の概念図_画像