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  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3) 特別借受宿舎の買取りについて、各特別借受宿舎の将来の支払利息額の多寡を十分に考慮した上で買い取る特別借受宿舎を選定することを周知することにより、将来の支払利息額をより節減できる適切なものとするよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省  (項)防衛力基盤強化推進費(令和元年度は、(項)防衛力基盤整備費)
(組織)防衛装備庁 (項)防衛力基盤整備費
部局等
内部部局
特別借受宿舎の概要
国家公務員共済組合連合会の資金をもって建設された住宅を国が借り受けて、国家公務員宿舎法に定める宿舎として運営するもの
特別借受宿舎の買取価格
131億8753万余円(令和元、2両年度)
上記の買取りにより防衛省が節減したとしていた将来の支払利息額(1)
164億7425万余円
買取対象とする特別借受宿舎を見直すことにより節減できた将来の支払利息額(2)
169億9201万余円
より節減できた将来の支払利息額((1)と(2)との差額)
5億1775万円

1 特別借受宿舎に係る買取りなどの概要

(1)特別借受宿舎の概要

防衛省は、「防衛省における自衛隊の施設の取得等に関する訓令」(平成19年防衛省訓令第66号)及び「特別借受宿舎の取扱いについて(通達)」(平成19年防人厚第8130号。以下「取扱要領」という。)等に基づいて、国設宿舎の建設のみでは宿舎の不足状態を解消できない状況を緩和するために、国家公務員共済組合連合会(以下「連合会」という。)の資金をもって建設された住宅を借り受け、国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号)の定める宿舎として運営している(以下、当該借り受けた宿舎を「特別借受宿舎」という。)。そして、防衛省が借り受けるために連合会が建設した特別借受宿舎の件数は、この制度が開始された昭和39年度から、最後に建設があった平成14年度までに計714件(計24,042戸)となっている。

(2)特別借受宿舎の賃借料及び買取りの概要

取扱要領によれば、特別借受宿舎の賃借料は、連合会が特別借受宿舎の建設に要した額(以下「元本」という。)を原則として年利6.5%(固定金利)、期間60年で半年賦元利均等償還するものとして計算した金額等を基準とすることとされている。また、連合会との間で締結する貸借契約を更新することができる期間(原則として60年。以下「契約更新可能期間」という。)が満了したときは連合会が特別借受宿舎を防衛省に寄付することとされている。そして、10防衛局等(注1)は、毎年度、連合会との間で、貸借契約を締結して上記の計算方法による賃借料を支払っており、令和元、2両年度における賃借料は計125億5510万余円(元年度65億2262万余円、2年度60億3247万余円)となっている。また、取扱要領によれば、防衛省は契約更新可能期間の満了前であっても、連合会と協議して特別借受宿舎の全部又は一部を買い取ることができることとされている。

そして、防衛省では、平成9年度から毎年度、賃借料の負担総額の軽減を図るために、契約更新可能期間の満了前に特別借受宿舎を選定して買い取ることで、買取時点から契約更新可能期間の満了までに支払うこととなっている賃借料のうち利息相当額(以下「将来の支払利息額」という。)を節減することにしており、買取価格については、関係書類が保存されている25年度から令和2年度までの各年度において、買取対象とする特別借受宿舎の元本の未償還残高(以下「未償還残高」という。)と同額となっている。

(3)特別借受宿舎の買取実績

前記のとおり昭和39年度から平成14年度までに建設された特別借受宿舎の件数は714件(24,042戸)となっていて、このうち25年度から令和2年度までに防衛省が買い取った件数は計187件(計5,435戸)、買取価格は計427億9518万余円となっている。そして、元年度当初に存在する特別借受宿舎の件数は364件(11,874戸)となっていて、このうち同年度中に26件(745戸)を未償還残高と同額の計65億1148万余円で買い取っている。また、2年度当初に存在する特別借受宿舎の件数は338件(11,129戸)となっていて、このうち同年度中に18件(497戸)を未償還残高と同額の計66億7604万余円で買い取っている。

(4)行政事業レビューの評価結果への対応

防衛省は、平成26年6月に「行政事業レビューの実施等について」(平成25年4月閣議決定)に基づき実施された行政事業レビューの公開プロセスにおいて賃借料の負担総額の軽減に努めるよう意見を受けている。そして、防衛省は、この評価結果も踏まえて、特別借受宿舎の買取りの促進を図ることにより賃借料の負担総額の軽減に努めることとしている。

(5)特別借受宿舎の買取案の作成等

陸上、海上、航空各自衛隊(以下「各自衛隊」という。)及び防衛装備庁は、それぞれ自らが使用している特別借受宿舎のうち翌年度に買い取る特別借受宿舎を建設年度等を基に選定して買取案を作成し、防衛省内部部局(以下「内部部局」という。)の宿舎の事務を担当する部署はその内容が適切なものとなっているかについての確認を行っている。

2 検査の結果

検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、経済性等の観点から、特別借受宿舎の買取りについて、賃借料の負担総額の軽減を図るために、将来の支払利息額をより節減できる適切な買取りを行っているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、令和元年度当初に存在していた特別借受宿舎364件(11,874戸)及び2年度当初に存在していた特別借受宿舎338件(11,129戸)、防衛省が元年度に買い取った特別借受宿舎26件(745戸、買取価格65億1148万余円)及び2年度に買い取った特別借受宿舎18件(497戸、買取価格66億7604万余円)を対象として、内部部局等において、貸借契約書、連合会との買取りに係る協定書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査の結果

防衛省は、各自衛隊等が作成した買取案を基に、元、2両年度に特別借受宿舎計44件(計1,242戸)を買い取っていた。そして、この買取りにより、買取りを行わなかった場合と比較して、将来の支払利息額計164億7425万余円(注2)(元年度買取り分79億5391万余円、2年度買取り分85億2033万余円)を節減したとしていた。

しかし、防衛省が行ったこの44件の買取りについて、各特別借受宿舎の将来の支払利息額、実際の買取価格(計131億8753万余円)等を考慮した上で、将来の支払利息額を十分節減できる適切なものとなっているかについて確認したところ、防衛省は、建設年度が新しい特別借受宿舎などから買い取ることとしており、各特別借受宿舎の将来の支払利息額の多寡を十分に考慮したものとなっていなかった。そこで、本院において、将来の支払利息額の多寡を考慮して、実際の買取価格の範囲内で買い取る特別借受宿舎の組合せを見直した上で、将来の支払利息額の節減額を試算したところ、164億7425万余円を上回る計169億9201万余円(注2)(元年度83億9953万余円、2年度85億9247万余円)が節減できると認められた。

このように、防衛省において、特別借受宿舎の買取りに当たり、各特別借受宿舎の将来の支払利息額の多寡を十分に考慮した買い取る特別借受宿舎の組合せを十分に検討していなかったことにより、買取りに伴う将来の支払利息額の節減が十分に図られていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

節減できた将来の支払利息額

特別借受宿舎の買取りに当たり、将来の支払利息額の多寡を考慮して買い取る特別借受宿舎を選定すれば、防衛省が節減したとしていた将来の支払利息額より計5億1775万余円(元年度4億4561万余円、2年度7214万余円)を節減できたと認められた。

発生原因

このような事態が生じていたのは、内部部局において、特別借受宿舎の買取りに際して、賃借料の負担総額の軽減を図るために、将来の支払利息額をより節減できる適切な特別借受宿舎の選定をすることの理解が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、内部部局は、今後将来の支払利息額をより節減できる適切な買取りが図られるよう、3年8月に、関係部署内会議により、各特別借受宿舎の将来の支払利息額の多寡を十分に考慮することを周知するとともに、既に元年度に特別借受宿舎の買取りを完了した防衛装備庁を除く各自衛隊に対して通知を発して、今後の特別借受宿舎の買取りに係る買取案の作成に当たっては、各特別借受宿舎の将来の支払利息額の多寡を十分に考慮するよう周知する措置を講じた。