ページトップ
  • 令和2年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • (第1 内閣府(内閣府本府)、第6 厚生労働省)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

放課後児童健全育成事業に係る子ども・子育て支援交付金について、内閣府において過大に交付されていた交付額の返還手続を行わせるよう適宜の処置を要求し、利用する児童が少数である土曜日等について、厚生労働省において開所の要件を周知徹底するとともに、内閣府において開所の要件を満たしているか市町村が根拠資料を用いて確認するようにしたり、開所の要件を理解等した上で実績報告書を作成しているか都道府県が必要な審査を行うようにしたりするための方策を講ずるよう是正改善の処置を求めたもの


所管、会計名及び科目
内閣府及び厚生労働省所管
年金特別会計(子ども・子育て支援勘定)
(項)地域子ども・子育て支援及仕事・子育て両立支援事業費
部局等
内閣府本府(支援交付金の所掌部局)
厚生労働本省(放課後児童健全育成事業の所掌部局)
交付の根拠
子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)
実施主体
47市町村
交付対象事業
放課後児童健全育成事業
交付対象事業の概要
小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により、昼間家庭にいない者に、授業の終了後に小学校の余裕教室等を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業
検査対象とした実施主体数及び交付金の交付額
47市町村40億7847万余円(平成30、令和元両年度)
交付金が過大に交付されていた実施主体数及び交付金の交付額
18市町村10億9164万余円(平成30、令和元両年度)
上記のうち過大に交付されていた交付金の交付額
1億0060万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

放課後児童健全育成事業に係る子ども・子育て支援交付金の算定等の状況について

(令和3年10月19日付け 内閣総理大臣
厚生労働大臣
宛て

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 放課後児童健全育成事業の概要等

(1)放課後児童健全育成事業の概要

放課後児童健全育成事業は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)及び厚生労働省が定めた「「放課後児童健全育成事業」の実施について」(平成27年雇児発0521第8号。以下「実施要綱」という。)に基づき、近年における女性の就業割合の高まりや核家族化の進行など、児童と家庭を取り巻く環境の変化を踏まえ、小学校に就学している児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいない者に、放課後や週末等に安心して生活できる居場所を確保するとともに、次代を担う児童の健全な育成を支援することを目的とするものである。そして、放課後児童健全育成事業には、実施要綱に複数の事業の種類が定められていて、事業の種類には本件事業と同じ名称である放課後児童健全育成事業(以下「健全育成事業」という。)、放課後児童支援員等処遇改善等事業等がある。

実施要綱等によれば、健全育成事業は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が実施主体とされており、小学校の余裕教室等を利用して児童に適切な遊び及び生活の場を与えて発達段階に応じた主体的な遊びや生活が可能となるよう、児童の健全な育成を図るものとされている。そして、市町村等は、健全育成事業を行う場所を設置し、自ら運営したり、法人等に委託等したりなどして健全育成事業を実施している。

(2)健全育成事業の開所の要件

実施要綱等によれば、健全育成事業における支援の提供が同時に1人又は複数の利用者に対して一体的に行われるものを一の支援の単位(以下、この単位を「支援単位」といい、一又は複数の支援単位で構成して健全育成事業を運営しているものを「放課後児童クラブ」という。)とし、一の支援単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下とすることとされている。

そして、実施要綱等によれば、健全育成事業を行う場所ごとに、一定の研修を修了した放課後児童支援員(以下「支援員」という。)を置かなければならないこととされていて、開所している時間帯を通じて、支援員の数は一の支援単位ごとに2人以上とすることなど(以下「支援員等の配置要件」という。)とされている。

また、開所する日数は、小学校の授業の休業日(以下「長期休暇等」という。)その他の状況等を考慮し、一の支援単位当たり原則として年間250日以上開所することなどとされており、利用する児童が少数である土曜日等に複数の支援単位が一の支援単位として合同で健全育成事業を実施する場合、その日を複数の支援単位それぞれの開所日として取り扱うためには、支援単位ごとに支援員を2人以上とすることなどとされている。そして、開所する時間数については、長期休暇等に行う健全育成事業は1日8時間以上、長期休暇等以外の日に行う健全育成事業は1日3時間以上を原則として、小学校の授業の終了の時刻その他の状況等を考慮して定めることなどとされている(以下、実施要綱等に基づく、健全育成事業の実施に必要な支援員等の配置要件、及び開所する時間数を合わせて「開所の要件」という。)。

(3)子ども・子育て支援交付金の概要

子ども・子育て支援交付金(以下「支援交付金」という。)は、子ども・子育て支援の着実な推進を図ることを目的として、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に基づき国が市町村に対して交付するものである。そして、内閣府が定めた「子ども・子育て支援交付金の交付について」(平成28年府子本第474号内閣総理大臣通知。以下「交付要綱」という。)等によれば、実施要綱に定める放課後児童健全育成事業等(以下「交付金事業」という。)が支援交付金の対象とされている。

(4)支援交付金の交付額の算定等

支援交付金の交付額は、交付要綱に基づき、交付金事業の区分ごとに、次のとおり算定した額の合計額を交付額とすることなどとなっている。

支援交付金の交付額の算定

そして、健全育成事業に係る基準額は、支援単位を構成する児童の数により算定される一の支援単位当たりの年額、年間開所日数により算定される開所日数加算額、一定の開所時間を超える時間の年間平均時間数により算定される長時間開所加算額等で構成されており、これらを合算して算定することとなっている。

また、前記のとおり、実施要綱等において、一の支援単位当たり原則として年間250日以上開所することなどとされていることを踏まえて、健全育成事業に係る一の支援単位当たりの年額等は、年間開所日数250日以上と年間開所日数200日から249日までとで算定方法が異なっている。すなわち、年間開所日数200日から249日までの場合は、一の支援単位当たりの年額の単価が、ごく一部を除き、年間開所日数250日以上の場合よりも低額となっていたり、長期休暇等に係る長時間開所加算額がなかったりなどとなっている。

(5)支援交付金の申請手続、実績報告、審査等

交付要綱によれば、市町村長は、国庫交付金交付申請額を記載した子ども・子育て支援交付金交付申請書(以下「交付申請書」という。)に、子ども・子育て支援交付金所要額調書等の関係書類を添えて、都道府県知事に提出することとされている。都道府県知事は、市町村から交付申請書の提出があった場合には、必要な審査を行い、適正と認めたときはこれを取りまとめの上、内閣総理大臣に提出して、内閣総理大臣の交付決定があったときは、市町村に対して交付決定額等の決定内容等を通知することとされている。

そして、支援交付金の事業実績の報告について、市町村長は、子ども・子育て支援交付金精算書(以下「精算書」という。)及び子ども・子育て支援交付金精算額調書(以下「精算額調書」という。)を添えた子ども・子育て支援交付金事業実績報告書(以下「実績報告書」という。)を都道府県知事に提出することとされている。都道府県知事は、市町村から実績報告書の提出があった場合には、必要な審査を行い、適正と認めたときはこれを取りまとめの上、内閣総理大臣に提出して、内閣総理大臣の確定通知があったときは、市町村に対して支援交付金の交付額の確定の通知を行うこととされている。

また、精算書には、交付金事業の区分ごとの基本額、交付決定額、国庫補助金受入済額、差引過不足額等を記入することとされていて、その内訳となる精算額調書には、交付金事業の区分ごとの基準額を算出する過程で必要となる人数、日数、時間数等を記入することとされている。このうち、健全育成事業の精算額調書には、支援単位ごとに、年間開所日数、長時間開所加算対象時間数(以下「加算対象時間数」という。)、児童の数等を記入することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

健全育成事業を実施する市町村は、交付要綱等に基づき、放課後児童クラブからの運営状況の報告等を基に、放課後児童健全育成事業に係る支援交付金(以下「交付金」という。)の交付額を算定することになるが、放課後児童クラブは、市町村が自ら運営するもののほか法人等に委託等するものがあり、規模等も多様なものとなっている。このため、市町村は、交付金の交付額の算定に当たり、多様な放課後児童クラブの運営状況を的確に把握して、開所の要件を満たしているかなどを確認する必要がある。一方、本院は、健全育成事業において開所の要件を満たしていない土曜日を年間開所日数に含めていたなどの事態について、平成30年度決算検査報告及び令和元年度決算検査報告に不当事項として掲記している。

そこで、本院は、合規性等の観点から、放課後児童健全育成事業の実施状況について、市町村において、交付金の算定過程における確認を適切に行っているか、都道府県において、市町村から提出のあった実績報告書の審査を適切に行っているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、12都府県(注)で放課後児童健全育成事業を実施している市町村のうち、複数の支援単位で構成される放課後児童クラブの設置状況等を考慮して、平成30、令和元両年度に交付金が交付された47市町村(平成30、令和元両年度の放課後児童健全育成事業の基本額計118億0095万余円、交付金の交付額計40億7847万余円)を選定した。そして、当該47市町村を対象として、3県に所在する16市町村において平成30年度288支援単位、令和元年度302支援単位に係る開所状況や支援員等の配置状況等に関する資料、実績報告書を確認するとともに、内閣府において交付金の算定方法、交付要綱等の周知方法等について、厚生労働省において放課後児童健全育成事業の要件、実施要綱等の周知方法等についてそれぞれ確認するなどして会計実地検査を行った。また、9都府県に所在する31市町村から平成30年度747支援単位、令和元年度804支援単位に係る調書の提出を受けて放課後児童健全育成事業の実施状況等を分析するなどの方法により検査した。

(注)
12都道府県東京都、京都府、群馬、千葉、石川、岐阜、兵庫、奈良、島根、香川、宮崎、沖縄各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)開所の要件を満たしていなかったことなどにより交付金が過大に交付されていた事態

47市町村のうち、18市町村(放課後児童健全育成事業の基本額計31億7237万余円、交付金の交付額計10億9164万余円)において、放課後児童クラブを利用する児童が少数である土曜日等について開所の要件を満たしていなかったことなどにより、実績報告書の精算額調書に年間開所日数として計上した開所日、加算対象時間数として計上した開所時間等が適正なものとなっておらず、交付要綱等に基づく交付金の算定が適正に行われていなかった事態が見受けられた。これにより、交付金計1億0060万円が過大に交付されていた(表参照)。

表 過大に交付されていた交付金の交付額(平成30、令和元両年度の計)(単位:千円)

都府県名 実施主体 放課後児童健全育成事業の基本額 交付金の交付額 過大に交付されていた交付金の交付額
群馬県 沼田市 262,022 96,127 10,614
吾妻郡嬬恋村 14,781 4,745 2,811
千葉県 君津市 121,384 43,230 7,745
南房総市 63,115 21,615 1,703
東京都 あきる野市 120,864 43,490 1,941
石川県 金沢市 1,221,802 408,582 25,350
羽咋市 54,536 18,961 322
羽咋郡志賀町 63,179 21,058 4,422
京都府 城陽市 219,490 75,759 6,523
長岡京市 225,141 77,922 6,671
兵庫県 洲本市 107,334 35,044 14,067
芦屋市 221,984 80,032 2,148
奈良県 大和高田市 63,020 21,848 2,140
葛城市 94,516 33,197 5,814
宇陀市 85,621 28,310 2,857
生駒郡三郷町 51,077 17,025 1
宮崎県 児湯郡高鍋町 97,595 35,068 2,391
沖縄県 国頭郡今帰仁村 84,906 29,632 3,080
9都府県 18市町村 3,172,376 1,091,645 100,600
  • (注) あきる野、大和高田両市は令和元年度、生駒郡三郷町は平成30年度について、交付金が過大に交付されていた。

上記について、事例を示すと次のとおりである。

事例

石川県金沢市は、平成30、令和元両年度に、平成30年度98支援単位、令和元年度99支援単位において、健全育成事業等を実施したとして、放課後児童健全育成事業に係る基本額を計12億2180万余円として石川県に実績報告書を提出して、これにより交付金計4億0858万余円の交付を受けていた。

そして、同市は、利用する児童が少数である土曜日に、複数の支援単位が一の支援単位として合同で健全育成事業を実施しており、実施要綱等によれば、その日を複数の支援単位それぞれの開所日として取り扱うためには、支援単位ごとに支援員等の配置要件を満たさなければならないこととされている。

しかし、当該複数の支援単位ごとに支援員等の出勤簿で実際の支援員等の配置状況をみると、一部の支援単位に支援員等が2人以上配置されておらず支援員等の配置要件を満たしていない日があったのに、この日を年間開所日数に含めるなどしていた。このため、当該支援単位に係る土曜日の日数平成30年度計1,227日、令和元年度計1,216日が過大に計上されていた。

また、健全育成事業の実施に必要な人数の支援員等を配置していない上記支援単位のうち、平成30年度16支援単位、令和元年度12支援単位は、過大に計上されていた土曜日を除くと年間開所日数が250日を下回るため、加算対象時間数に基づく長期休暇等に係る長時間開所加算額の対象とはならなかった。

したがって、平成30、令和元両年度の適正な放課後児童健全育成事業に係る基本額を算定すると計11億4575万余円となることから、前記の基本額12億2180万余円との差額7604万余円が過大となっており、これに係る交付金2535万円が過大に交付されていた。

(2)利用する児童が少数である土曜日等について開所の要件を満たしていなかった原因

(1)において、利用する児童が少数である土曜日等について開所の要件を満たしていない事態が大部分を占めていたことから、前記の18市町村におけるその原因をみたところ、次のとおり、13市町村において、利用する児童が少数である土曜日等における開所の要件の理解が十分でないことによるものであった。

① 開所日に配置する支援員等の勤務時間割を事前に作成して体制を整えてさえいれば、開所予定日には実際に開所しなくても開所の要件を満たしており、開所日や開所時間として取り扱うことができると誤解していたこと

② 複数の支援単位で構成される放課後児童クラブにおいて、複数の支援単位を合同するなどして支援員等を2人配置していれば、全ての支援単位において開所日や開所時間として取り扱うことができると誤解していたこと

③ 一の支援単位ごとに支援員等を1人配置するなどしていれば開所の要件を満たしており、開所日や開所時間として取り扱うことができると誤解していたこと

一方、残りの5市町においては、開所の要件を理解していたものの、放課後児童クラブから報告を受けた開所日及び開所時間について、交付金の対象となる開所の要件を満たしているかの確認を十分に行うことなく、開所の要件を満たさない開所日及び開所時間を交付金の算定に用いていた。

(3)厚生労働省における実施要綱等の周知の状況等

前記のとおり、開所の要件の理解が十分でなかった市町村が相当数あることから、厚生労働省において実施要綱等をどのように周知しているかを確認したところ、厚生労働省は、実施要綱について、都道府県にメールで送付し、管内市町村に対して周知を依頼するとともに、同省のウェブサイトに掲載するなどして周知していた。また、実施要綱の内容について、利用する児童が少数である土曜日等に開所の要件を満たす場合等を具体的に示した「放課後児童健全育成事業に係るQ&A」等(以下「Q&A」という。)を作成しており、必要に応じて新たな質問及び回答を追加する場合は、その都度、当該追加部分のみを新たに取りまとめて整理し、同省のウェブサイトに掲載して周知していた。

一方、利用する児童が少数である土曜日等における開所の要件の理解が十分でなかった前記13市町村のQ&Aの確認状況をみたところ、Q&Aの内容を確認していなかったのが4市町、Q&Aの内容を確認したとしていたのが9市村となっていた。当該9市村については、Q&Aの内容を確認したとしていたにもかかわらず、開所の要件の理解が十分でなかったことになる。

前記のとおり、健全育成事業に係る一の支援単位当たりの年額等が年間開所日数250日以上と年間開所日数200日から249日までとで算定方法が異なっていることから、利用する児童が少数である土曜日等を含んだ年間開所日数が250日程度であると交付額に影響する場合がある。したがって、当初のQ&Aのほか、追加の都度に取りまとめて整理した部分の各所に分散して掲載されている開所の要件に関連する項目の説明を理解しやすいように集約して示すなどの方法により、開所の要件を周知徹底する必要がある。

(4)市町村における開所日等の確認方法及び都府県における実績報告書の審査方法等

前記のとおり、放課後児童クラブから報告を受けた開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかの確認を十分に行っていなかったとしている市町村があることから、前記の18市町村における実績報告書の精算額調書に計上した開所日及び開所時間の確認方法についてみたところ、13市村は、利用する児童が少数である土曜日等について、開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかを支援員等の出勤状況等の分かる根拠資料を用いて確認していなかった。また、内閣府は、この確認の方法等について、具体的に示していなかった。

また、前記のとおり、都道府県は、実績報告書の審査を行うこととなっていて、内閣府は、開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかを都道府県が行う審査の内容の一つとしていたが、都道府県に具体的な審査の内容を示したものはなかった。そして、12都府県は、実績報告書の様式の不備や記載漏れがないかなどの形式面の審査は行っていたが、実績報告書の精算額調書に年間開所日数として計上された開所日、加算対象時間数として計上された開所時間が開所の要件を満たしているかの審査は行っていなかった。

一方、実績報告書の審査を行う際に、都府県が全ての開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかの根拠資料である支援員等の出勤状況等を市町村に提出させて審査を行うのは難しいと思料されることから、市町村が開所の要件を理解等した上で実績報告書を作成しているかを確認するなどして効率的・効果的に審査を行う必要がある。

(是正及び是正改善を必要とする事態)

実績報告書の精算額調書に年間開所日数として計上した開所日、加算対象時間数として計上した開所時間等が適正なものとなっていなかったことなどにより交付金が過大に交付されていたり、実績報告書の精算額調書の審査が十分でなかったりしている事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、市町村において、健全育成事業の実施に当たり開所の要件の理解が十分でないこと、開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかの確認が十分でないこと、都道府県において、実績報告書の審査が十分でないことにもよるが、内閣府及び厚生労働省において、次のことなどによると認められる。

ア 厚生労働省において、市町村に対して、開所の要件の周知徹底が十分でないこと

イ 内閣府において、開所の要件を満たしているかについて、市町村が十分に確認するようにしたり、都道府県が実績報告書の審査を十分に行うようにしたりするための方策を執っていないこと

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

前記のとおり、放課後児童クラブは、市町村が自ら運営するもののほか法人等に委託等するものがあり、規模等も多様なものとなっていることから、健全育成事業を実施する市町村は、交付金の交付額の算定に当たり、多様な放課後児童クラブの運営状況を把握して、開所の要件を満たしているかなどを適切に確認する必要がある。そして、健全育成事業の拡大が引き続き見込まれ、今後も多くの市町村で一の支援単位に支援員等を2人以上とした健全育成事業が実施されることが想定される。

ついては、内閣府及び厚生労働省において、交付金の算定等が適切に行われるよう、次のとおり、是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

ア 内閣府において、交付金が過大に交付されていた18市町村に対して、過大に交付された交付金について返還手続を行わせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求するもの)

イ 厚生労働省において、市町村に対して、Q&Aにある開所の要件の説明を理解しやすいように集約して示すなどの方法により、利用する児童が少数である土曜日等に健全育成事業を実施する場合の開所の要件を周知徹底すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)

ウ 内閣府において、利用する児童が少数である土曜日等を含んだ年間開所日数が250日程度であったり、利用する児童が少数である土曜日等に合同で健全育成事業を実施した複数の支援単位で年間開所日数等が同じであったりするなどの交付額に影響しやすい場合に、開所日及び開所時間が開所の要件を満たしているかについて市町村が根拠資料を用いて確認するようにしたり、市町村が開所の要件を理解等した上で実績報告書を作成しているかについて都道府県が必要な審査を行うようにしたりするための方策を講ずること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)