独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「センター」という。)は、新国立競技場整備事業の施行に当たって、東京都の所有する水道施設が同整備事業の支障となることから、平成27年4月8日に、当該施設の移設等の工事(以下「水道移設等工事」という。)に係る計画、費用負担等を定めた協定を東京都との間で締結するなどし、27年度から令和元年度までの間に、水道移設等工事を東京都に依頼して実施している。
協定等によれば、東京都は、水道移設等工事のしゅん工後、水道移設等工事に要した費用(以下「工事費」という。)を精算し、精算額を速やかにセンターに通知すること、水道移設等工事により設置された水道施設は東京都に帰属すること、工事費をセンターが全額負担する(以下、センターが負担する金額を「移設等補償費」という。)ことなどとされている。
そして、センターは、移設等補償費として、東京都から提出された精算に係る通知書(以下「精算額通知書」という。)に示された計3,269,005,801円(平成27、28、30、令和元各年度)を精算額として東京都に支払っていた。
消費税法(昭和63年法律第108号)等によれば、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、国内において事業者が事業として対価を得て行った資産の譲渡等に課すこととされている。
なお、消費税は、生産及び流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する仕組みが採られているが、事業者の課税売上高等によっては、課税仕入れに係る消費税額のうち控除することができない額(以下「控除対象外消費税額等」という。)が生ずることがある。
本院は、合規性等の観点から、移設等補償費の算定が適切に行われているかなどに着眼して、平成27、28、30、令和元各年度に東京都に支払った移設等補償費を対象として、センター本部において、精算額通知書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
センターは、移設等補償費は消費税法上の資産の譲渡等の対価に該当するなどとして、東京都から提出された精算額通知書のとおり、工事費(消費税抜き)に、消費税率8%を乗じて算定した消費税相当額を加算するなどして算定した3,269,005,801円を移設等補償費として東京都に支払っていた。
しかし、前記のとおり水道移設等工事により設置された水道施設は東京都に帰属することから、移設等補償費は消費税法上の資産の譲渡等の対価に該当しない。このため、移設等補償費は消費税の課税対象外となり、東京都は消費税を負担しないことから、センターは、移設等補償費の算定に当たり、工事費(消費税抜き)に消費税相当額を加算すべきではなかった。
一方、東京都水道局(水道事業会計)の消費税の確定申告書によれば、東京都において負担することとなる控除対象外消費税額等が生ずることから、センターは、工事費(消費税抜き)に、水道移設等工事に係る控除対象外消費税額等を加算すべきであった。
したがって、上記によるなどしてセンターが負担すべき適正な移設等補償費を算定すると、計3,029,489,267円となり、前記の移設等補償費支払額3,269,005,801円との差額239,516,534円が過大となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、センターにおいて、移設等補償費の算定に当たり、消費税の取扱いについての理解が十分でなかったことなどによると認められる。