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  • 令和2年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第3節 特定検査対象に関する検査状況

第3 布製マスク配布事業の実施状況等について


検査対象
(1)厚生労働省
(2)文部科学省
布製マスク配布事業の概要
新型コロナウイルス感染症に関する緊急対策として実施した国内の全世帯、介護施設等の利用者及び職員、妊婦並びに学校の児童生徒及び教職員を対象に再利用可能な布製マスクを国が一括して購入し、配布する事業
布製マスク配布事業の予算額
(1)969億円(令和元、2両年度)
(2)75億円(令和2年度)
1044億円(令和元、2両年度)
検査の対象とした布製マスク配布事業に係る契約件数及び支払額
(1)49件497億8684万円(令和元、2両年度)
(2)11件45億6172万円(令和2年度)
60件543億4856万円(令和元、2両年度)

<構成>

1 検査の背景(リンク参照

(1)新型コロナウイルス感染症の発生に伴うマスク等の需給のひっ迫とこれに対する措置(リンク参照

(2)布製マスク配布事業の概要(リンク参照

(3)布製マスク配布事業の予算の概要(リンク参照

(4)布製マスク配布事業の実施体制等の概要(リンク参照

(5)国の契約事務(リンク参照

ア 契約の方式(リンク参照

イ 予定価格の作成(リンク参照

ウ 契約書の作成(リンク参照

エ 検収の実施(リンク参照

(6)物品の売払い、譲与等(リンク参照

(7)布製マスクの不良品問題(リンク参照

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法(リンク参照

(1)検査の観点及び着眼点(リンク参照

(2)検査の対象及び方法(リンク参照

3 検査の状況(リンク参照

(1)契約の締結等の状況(リンク参照

ア 契約の締結状況等(リンク参照

イ 布製マスクの調達における緊急性(リンク参照

ウ 布製マスクの調達枚数の算定方法(リンク参照

エ 布製マスクの調達契約に係る契約相手方の選定の経緯等(リンク参照

オ 契約書の記載事項(リンク参照

(2)布製マスクの調達等の費用(リンク参照

ア 予定価格の作成状況(リンク参照

イ 布製マスク1枚当たりの調達に要した費用(リンク参照

ウ 布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用(リンク参照

(3)布製マスクの品質等をめぐる問題(リンク参照

ア 布製マスクの調達契約に係る仕様(リンク参照

イ 不良品問題(リンク参照

ウ 布製マスクの調達契約に係る国の検収の状況(リンク参照

エ 不良品問題の発生を契機とした検品等業務の実施(リンク参照

オ 検品等業務により判明した良品とならなかった布製マスクの発生状況(リンク参照

カ 不良品問題により生じた追加費用等の発生状況(リンク参照

(4)布製マスクの配布状況等(リンク参照

ア 全戸向け布製マスクの配布状況等(リンク参照

イ 介護施設等向け布製マスクの配布状況等(リンク参照

ウ 妊婦向け布製マスクの配布状況等(リンク参照

エ 学校向け布製マスクの配布状況(リンク参照

オ 一律配布の中止等に伴う在庫の発生等(リンク参照

4 本院の所見(リンク参照

1 検査の背景

(1)新型コロナウイルス感染症の発生に伴うマスク等の需給のひっ迫とこれに対する措置

新型コロナウイルス感染症は、令和元年12月以降、その感染が国際的な広がりを見せており、我が国においても2年1月に感染者が確認され、その後の全国的な感染の拡大に伴いマスク等が品薄状態となっていった。

政府は、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(令和2年2月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)及び「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月新型コロナウイルス感染症対策本部決定)を定めて、これらの基本方針の下、マスク等の品薄状態に対処するために様々な措置を講じており、このうち「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」(令和2年2月新型コロナウイルス感染症対策本部決定。以下「2月対策」という。)に基づく措置として、メーカー等の団体に対してマスクの増産等について要請するとともに、事業者に対してマスク生産設備の導入補助を行うなど、十分な量のマスクを継続的に供給できる環境を整備することとした。

さらに、「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策―第2弾―」(令和2年3月新型コロナウイルス感染症対策本部決定。以下「3月対策」という。)に基づく措置として、再利用可能な布製マスクを国が一括して購入し介護施設等(注1)の利用者及び職員に配布することとするとともに、「「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」について」(令和2年4月閣議決定。以下「4月対策」という。)に基づく措置として、介護施設等の利用者及び職員に加えて妊婦、学校(注2)の児童生徒及び教職員のほか、国内の全世帯を対象に布製マスクを配布することとした(以下、3月対策及び4月対策に基づく布製マスクの配布に係る事業を「布製マスク配布事業」という。)。

(注1)
介護施設等高齢者施設・事業所、障害福祉サービス等施設・事業所、保育所等、放課後児童クラブ、児童養護施設等、幼稚園、認定こども園、認可外保育施設、各種学校幼稚部、保護施設等
(注2)
学校小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、高等専修学校等

(2)布製マスク配布事業の概要

布製マスク配布事業は、国が納入業者から布製マスクを調達し、調達したマスクを、配布等業務を請け負った業者において配布対象である世帯、施設等に配布するという流れで事業が実施されている。

布製マスク配布事業を配布対象別に整理すると、図表1のとおり、厚生労働省所管では、国内の全世帯への布製マスクの配布事業(以下「全戸向け配布事業」という。)、介護施設等の利用者及び職員への布製マスクの配布事業(以下「介護施設等向け配布事業」という。)並びに妊婦への布製マスクの配布事業(以下「妊婦向け配布事業」という。)、文部科学省所管では、学校の児童生徒及び教職員への布製マスクの配布事業(以下「学校向け配布事業」という。)となる。

そして、当初予定していた布製マスクの配布時期及び配布枚数についてみると、全戸向け配布事業では2年4月中旬から5月末までの間に1住所当たり2枚を配布することにし、介護施設等向け配布事業では、3月対策に基づき2年3月末までに1人につき1枚、4月対策に基づき1人につき1月当たり1枚として2年4月から9月までの6か月分の6枚を配布することにしていた。また、妊婦向け配布事業では1人につき1月当たり2枚として2年4月から9月までの6か月分の12枚、学校向け配布事業ではそれぞれ1人につき1回当たり1枚として2年4月中と5月以降の2回分の2枚を配布することにしていた。

布製マスクの配布方法についてみると、全戸向け配布事業では、封入等業務を請け負った業者が布製マスク2枚とお知らせ文が記載された紙冊子を封入した上で、配布等業務を請け負った業者がタウンプラス(注3)と呼ばれる配送方法により、各世帯に直接配布することにしていた。

また、介護施設等向け配布事業では、配布等業務を請け負った業者が原則として介護施設等に配布し、介護施設等が利用者及び職員に配布することとしており、妊婦向け配布事業では、配布等業務を請け負った業者が原則として市町村(特別区を含む。以下同じ。)に配布し、市町村が管内に居住している妊婦に配布することにしていた。

さらに、学校向け配布事業では、配布等業務を請け負った業者が原則として学校に配布し、学校が児童生徒及び教職員に配布することにしていた。

(注3)
タウンプラス日本郵便株式会社が実施している配送サービスで、顧客が指定した地域の配達可能な全ての箇所に荷物を届ける。

図表1 配布対象別の布製マスク配布事業の概要

事業名 所管 配布対象 当初予定していた配布時期 当初予定していた配布枚数 配布方法
全戸向け配布事業 厚生労働省 国内の全世帯 令和2年4月中旬から5月末まで 1住所当たり2枚 各世帯に直接配布
介護施設等向け配布事業 介護施設等の利用者及び職員 2年3月末 1人につき1枚 原則として介護施設等に配布し、介護施設等が利用者及び職員に配布
2年4月から9月まで 1人につき1月当たり1枚
妊婦向け配布事業 妊婦 2年4月から9月まで 1人につき1月当たり2枚 原則として市町村に配布し、市町村が管内に居住している妊婦に配布
学校向け配布事業 文部科学省 学校の児童生徒及び教職員 2年4月中と5月以降の2回 1人につき1回当たり 1枚原則として学校に配布し、学校が児童生徒及び教職員に配布

(3)布製マスク配布事業の予算の概要

布製マスク配布事業に係る国の予算額は、図表2のとおり、厚生労働省所管分で、全戸向け配布事業として466億円(2年度予備費233億円、2年度第1次補正予算233億円)、介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業として503億円(元年度予備費113億円、2年度第1次補正予算390億円)、計969億円(元年度予備費113億円、2年度予備費233億円、2年度第1次補正予算623億円)、文部科学省所管分で、学校向け配布事業として75億円(2年度第1次補正予算同額)となっており、厚生労働、文部科学両省合わせて1044億円(元年度予備費113億円、2年度予備費233億円、2年度第1次補正予算698億円)となっている。

図表2 布製マスク配布事業の予算額

所管
(会計名)
事業名 令和元年度 2年度
当初予算 当初予算 第1次補正
厚生労働省
(一般会計)
全戸向け配布事業 233億円
(予備費)
233億円 466億円
介護施設等向け配布事業 113億円
(予備費)
390億円 503億円
妊婦向け配布事業
小計 113億円 233億円 623億円 969億円
文部科学省
(一般会計)
学校向け配布事業 75億円 75億円
113億円 233億円 698億円 1044億円

(4)布製マスク配布事業の実施体制等の概要

厚生労働省の事務分掌上、マスク等衛生用品の生産、流通等に関する業務は、同省医政局経済課が所掌することになるが、2年1月下旬からマスク不足が深刻化しており、同省のみによる対応が困難であったことから、経済産業省等の各省庁が連携して政府としてマスクの確保に取り組むことになった。

そして、厚生労働省は、当初、医療用マスクや不織布マスクについては医療機関に優先的に配布することにしていたことから、全戸向け、介護施設等向け、妊婦向け各配布事業においては、布製マスクを配布することにしていた。

布製マスクの確保に当たっては、膨大な量のマスクを調達する必要があることなどから、当該業務を遂行するためには、各省の更なる連携が必要であるとして、2年3月に、同省医政局に厚生労働省、経済産業省及び総務省の職員で構成されるマスク等物資対策班(以下「マスク班」という。)が発足し、当該業務を担当することとなった。その後、マスク班には文部科学省等、上記3省以外の省庁の職員も所属することとなり、布製マスク配布事業に係る業務を、厚生労働省職員及び同省職員として併任発令されたこれらの省庁の職員が分担して担当することとなった。また、業務の分担として、調達候補先の選定等は経済産業省が、配布先の調整等は厚生労働、文部科学両省が、それぞれ中心となって行っていた。

(5)国の契約事務

国の物品の購入等に係る契約、給付の完了の確認等の会計事務については、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき行われることとなっており、その概要は次のとおりである。

ア 契約の方式

契約担当官及び支出負担行為担当官(以下「契約担当官等」という。)は、契約を締結する場合においては、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。ただし、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合等においては、随意契約によるものとする。

イ 予定価格の作成

契約担当官等は、その競争入札に付する事項の価格を当該事項に関する仕様書、設計書等によって予定しなければならず、この予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。また、契約担当官等は、随意契約によろうとするときは、あらかじめ上記に準じて予定価格を定めなければならない。

ウ 契約書の作成

契約担当官等は、競争により落札者を決定したとき、又は随意契約の相手方を決定したときは、原則として、契約の目的、契約金額、履行期限及び契約保証金に関する事項のほか、瑕疵担保責任に関する事項等を記載した契約書を作成しなければならない。

なお、2年4月の民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)の施行に伴い、同年4月1日以降に締結する契約書には、瑕疵担保に関する事項に代えて、履行の追完、代金の減額及び契約の解除に関する事項(以下、これらを「契約不適合責任に関する事項」という。)を記載することになった。

エ 検収の実施

契約担当官等は、物件の買入れその他の契約については、自ら又は補助者に命じて、その受ける給付の完了を確認するために必要な検査(以下「検収」という。)をしなければならない(以下、契約担当官等から検収を命ぜられた職員を「検査職員」という。)。検収は、契約担当官等が、自ら又は補助者に命じて、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づいて行うものとする。

検査職員は、給付の完了の確認につき、当該給付の内容及び数量について行わなければならない。ただし、物件の買入れに係る契約であって、買入れに係る単価が20万円に満たないものについては、給付の完了後相当の期間内に当該物件につき破損、変質、性能の低下その他の事故が生じたときは取替え、補修その他必要な措置を講ずる旨の特約があり、当該給付の内容が担保されると認められる場合は、数量以外のものの検収を省略することができる。

(6)物品の売払い、譲与等

物品管理法(昭和31年法律第113号)等によれば、供用及び処分をすることができない物品については、不用の決定の上、売払いなどすることができるとされている。

また、物品の無償貸付及び譲与等に関する法律(昭和22年法律第229号)等によれば、生活必需品、医薬品、衛生材料及びその他の救じゅつ品を災害による被害者その他の者で応急救助を要するものに対し譲渡するときなどは、物品を国以外のものに譲与することができるとされている。

(7)布製マスクの不良品問題

厚生労働省は、妊婦向け配布事業において、2年4月14日から布製マスクの配布を始めたところ、配布事務を行っていた市町村から、配布した布製マスクの中に汚れの付着、髪の毛の混入、変色、異臭等の問題のある布製マスクが含まれているとの報告を受けた。また、厚生労働省は、全戸向け配布事業についても、封入等業務を請け負っている大日本印刷株式会社(以下「大日本印刷」という。)から、糸くず、髪の毛及び虫が混入するなどした布製マスクが含まれているとの報告を受けるなどしたため、厚生労働省は2年4月16日頃に、文部科学省は同年4月20日頃に、それぞれ布製マスクの配布作業を中断した(以下、これらの事態を「不良品問題」という。)。

そして、厚生労働省は、全戸向け配布事業については、特に新型コロナウイルス感染症の感染が拡大している地域に速やかに布製マスクを配布する必要があるとして、中断後間もなく、東京都について2年4月17日に汚れの付着等がないことを確認した布製マスクの配布を開始し、他の道府県については同年5月12日以降に布製マスクの配布を開始した。さらに、厚生労働省は、介護施設等向け配布事業については同年6月30日に、妊婦向け配布事業については同年5月19日に、また、文部科学省は、学校向け配布事業について同年4月22日に、中断していた布製マスクの配布を、それぞれ再開した。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1)検査の観点及び着眼点

布製マスク配布事業は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界的なマスク不足の中で、政府の方針に基づき各省庁が連携して緊急対策として実施した事業であり、短期間に大量の布製マスクを調達するなどしている。布製マスク配布事業の実施の過程では、前記のとおり、不良品問題が発生し、それに伴い当初予定していた配布時期が遅延するなどして、国会で質疑が行われたり、新聞等の報道で大きく取り上げられたりするなどしている。

そこで、本院は、合規性、経済性、効率性等の観点から、契約、検収等の会計事務は会計法令等に従って適正に行われているか、費用の支出の根拠は妥当なものとなっているか、調達された布製マスクの配布状況はどのようになっているかなどに着眼して検査した。

(2)検査の対象及び方法

検査に当たっては、厚生労働、文部科学両省がそれぞれ元、2両年度に布製マスク配布事業として締結した契約49件(支払額497億8684万余円)及び契約11件(同45億6172万余円)を対象として、厚生労働省において、契約書、検査調書等の関係書類により会計実地検査を行うとともに、文部科学省については、上記と同様の書類の提出を受けてその内容を確認するなどして検査した。

さらに、布製マスク配布事業に係る契約の相手方であるマツオカコーポレーション等3株式会社(注4)において、布製マスク配布事業に係る関係資料を確認したり、担当者から当時の状況を聴取したりするなどして会計実地検査を行うとともに、契約の相手方である興和等5株式会社(注5)について、上記と同様の資料の提出を受けてその内容を確認するなどして検査を行った。

(注4)
マツオカコーポレーション等3株式会社株式会社マツオカコーポレーション、株式会社ユースビオ、株式会社シマトレーディング
(注5)
興和等5株式会社興和株式会社、伊藤忠商事株式会社、日本郵便株式会社、大日本印刷株式会社、株式会社宮岡

3 検査の状況

(1)契約の締結等の状況

ア 契約の締結状況等

(ア) 厚生労働省

厚生労働省が布製マスク配布事業として締結した契約を、布製マスクの調達契約とそれ以外の契約に分けて整理すると、次のとおりである。

a 布製マスクの調達契約

図表3のとおり、17社との間で27件の契約が締結されており、これらに係る支払額は399億7849万余円となっていた。

また、上記27件の契約により調達した布製マスクの枚数を確認したところ、合計で2億8741万余枚となっており、配布事業別の内訳では、全戸向け布製マスクとして1億3004万余枚、介護施設等向け及び妊婦向け布製マスクとして1億5736万余枚となっていた。調達先の内訳をみると、全戸向け布製マスクについては興和株式会社(以下「興和」という。)、伊藤忠商事株式会社(以下「伊藤忠商事」という。)及び株式会社マツオカコーポレーション(以下、「マツオカコーポレーション」といい、これら3社を合わせて「興和等3社」という。)から調達しており、介護施設等向け及び妊婦向け布製マスクについては興和等3社を含む17社から調達していた。

そして、上記の27件について、契約の方式を確認したところ、需給がひっ迫するマスクを大量かつ早期に確保するためなどとして、いずれも緊急であることを理由に随意契約としていた。

図表3 厚生労働省が締結した布製マスクの調達契約の状況

契約の相手方 当初契約年月日 契約の方式 注(1)
事業別分類
支払額(円)
興和株式会社 令和2年3月17日 随意契約 介護・妊婦 2,145,000,000
2年4月7日 随意契約 全戸 5,476,900,000
2年5月13日 随意契約 全戸・介護・妊婦 6,455,020,000
伊藤忠商事株式会社 2年3月17日 随意契約 介護・妊婦 261,800,000
2年4月7日 随意契約 全戸 2,853,125,000
2年5月15日 随意契約 全戸・介護・妊婦 2,117,500,000
2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 3,170,380,400
株式会社マツオカコーポレーション 2年3月17日 随意契約 介護・妊婦 198,893,200
2年4月7日 随意契約 全戸 762,244,560
2年5月13日 随意契約 全戸・介護・妊婦 5,418,160,000
株式会社シマトレーディング 2年3月16日 随意契約 介護・妊婦 308,000,000
株式会社ユースビオ 2年3月16日 随意契約 介護・妊婦 211,750,000
2年4月7日 随意契約 介護・妊婦 1,485,000,000
2年4月15日 随意契約 介護・妊婦 1,485,000,000
横井定株式会社 2年3月16日 随意契約 介護・妊婦 1,973,950
2年3月19日 随意契約 介護・妊婦 8,135,171
株式会社RELIEF 2年5月12日 随意契約 介護・妊婦 1,427,800,000
TSO International 株式会社 2年5月13日 随意契約 介護・妊婦 918,456,000
株式会社エクスプラス 2年5月13日 随意契約 介護・妊婦 66,000,000
株式会社ブルマーレ 2年5月13日 随意契約 介護・妊婦 87,450,000
株式会社ワークス 2年5月13日 随意契約 介護・妊婦 755,040,000
株式会社東洋繊維 2年5月13日 随意契約 介護・妊婦 1,202,300,000
野村貿易株式会社 2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 579,150,000
株式会社グラックジャパン 2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 266,926,000
シタテル株式会社 2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 740,225,497
株式会社三愛 2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 65,967,880
帝人フロンティア株式会社 2年6月22日 随意契約 介護・妊婦 1,510,300,000
39,978,497,658
  • 注(1) 「事業別分類」欄の「全戸」、「介護」、「妊婦」は、それぞれ全戸向け配布事業、介護施設等向け配布事業、妊婦向け配布事業として必要な布製マスクを調達したことを示している。
  • 注(2) 株式会社シマトレーディング及び株式会社ユースビオとの令和2年3月16日付けの契約については、2社で布製マスクを調達している。
b 布製マスクの調達契約以外の契約

布製マスクの調達契約以外の契約のうち、契約の中に布製マスク配布事業に係る業務が含まれているものの同業務に係る支払額が特定できない契約を除いた支払額が1契約当たり100万円以上となる契約についてみると、図表4のとおり、布製マスクの配布等業務、コールセンター窓口業務、封入等業務、検品等業務等に係る契約を9社との間で12件締結しており、これらに係る支払額は98億0726万余円となっていた。

そして、この12件について、契約の方式を確認したところ、一般競争入札による佐川急便株式会社(以下「佐川急便」という。)との布製マスクの配布後の保管等業務に係る契約を除く11件については、いずれも緊急であることを理由に随意契約としていた。

図表4 厚生労働省が締結した布製マスクの調達契約以外の契約の状況(支払額が1契約当たり100万円以上となる契約)

契約の相手方 当初契約年月日 契約の方式 契約内容 注(1)
事業別分類
支払額(円)
日本郵便株式会社 令和2年3月17日 随意契約 配布等業務、コールセンター窓口業務 介護・妊婦 622,302,786
2年4月9日 随意契約 配布等業務 全戸 2,558,548,902
2年6月22日 随意契約 配布等業務、保管等業務 介護・妊婦 1,393,930,272
株式会社電通 2年3月19日 随意契約 コールセンター窓口業務 介護 1,565,921
東芝デジタルソリューションズ株式会社 2年4月7日 随意契約 配布状況案内ページ作成業務 全戸 1,447,600
JPツーウェイコンタクト株式会社 2年4月7日 随意契約 コールセンター窓口業務 全戸 131,263,166
2年6月1日 随意契約 コールセンター窓口業務 全戸・介護 327,139,457
大日本印刷株式会社 2年4月7日 随意契約 封入等業務 全戸 3,985,975,604
株式会社ユー・エス・イー 2年4月9日 随意契約 ウェブサイト構築及び運用業務 全戸 5,617,480
アデコ株式会社 2年4月10日 随意契約 人材派遣業務 全戸・介護・妊婦 注(2)9,182,444
株式会社宮岡 2年4月23日 随意契約 検品等業務 全戸・介護・妊婦 691,979,276
佐川急便株式会社 2年10月28日 一般競争契約 保管等業務 全戸・介護・妊婦 注(2)78,311,824
9,807,264,732
  • 注(1) 「事業別分類」欄の「全戸」、「介護」、「妊婦」は、それぞれ全戸向け配布事業、介護施設等向け配布事業、妊婦向け配布事業に係る業務であることを示している。
  • 注(2) アデコ株式会社及び佐川急便株式会社との契約は、布製マスク配布事業以外の業務も業務内容に含まれており、「支払額(円)」欄には、布製マスク配布事業の業務に係る分を計上している。

なお、布製マスクの調達契約とそれ以外の業務等契約を合わせた39件に係る支払額は497億8576万余円となり、さらに支払額が1契約当たり100万円未満の契約10件を合わせた計49件に係る支払額計497億8684万余円が、厚生労働省において布製マスク配布事業として締結した契約に係る支払額となる。

(イ) 文部科学省

文部科学省が学校向け配布事業として締結した契約を、布製マスクの調達契約とそれ以外の契約に分けて整理すると、次のとおりである。

a 布製マスクの調達契約

図表5のとおり、厚生労働省における全戸向け布製マスクの調達と同様に興和等3社との間で5件締結されており、これらに係る支払額は42億8488万余円となっていた。また、この5件の契約により学校向け布製マスクとして調達した布製マスクの枚数を確認したところ、合計で3070万余枚となっていた。

そして、この5件の契約の方式を確認したところ、需給がひっ迫するマスクを大量かつ早期に確保するためなどとして、いずれも緊急であることを理由に随意契約としていた。

図表5 文部科学省が締結した布製マスクの調達契約の状況

契約の相手方 当初契約年月日 契約の方式 支払額(円)
興和株式会社 令和2年4月3日 随意契約 972,400,000
2年6月10日 随意契約 943,800,000
伊藤忠商事株式会社 2年4月3日 随意契約 426,250,000
2年6月10日 随意契約 1,100,000,000
株式会社マツオカコーポレーション 2年4月3日 随意契約 842,435,440
4,284,885,440
b 布製マスクの調達契約以外の契約

布製マスクの調達契約以外の契約のうち、支払額が1契約当たり100万円以上となる契約についてみると、図表6のとおり、布製マスクの配布等業務、コールセンター窓口業務及び検品等業務に係る契約を3社との間で4件締結しており、これらに係る支払額は2億7547万余円となっていた。

そして、この4件の契約について、契約の方式を確認したところ、いずれも緊急であることを理由に随意契約としていた。

図表6 文部科学省が締結した布製マスクの調達契約以外の契約の状況(支払額が1契約当たり100万円以上となる契約)

契約の相手方 当初契約年月日 契約の方式 契約内容 支払額(円)
日本郵便株式会社 令和2年4月10日 随意契約 配布等業務 144,817,193
2年6月12日 随意契約 配布等業務 113,384,488
株式会社宮岡 2年4月24日 随意契約 検品等業務 7,410,590
JPツーウェイコンタクト株式会社 2年6月18日 随意契約 コールセンター窓口業務 9,865,250
275,477,521
  • (注) 株式会社宮岡に対する支払額は、本表の7,410,590円のほか100万円未満の契約2件に係る支払額1,363,784円があり、これらを合わせると計8,774,374円となる。

なお、布製マスクの調達契約とそれ以外の業務等契約を合わせた9件に係る支払額は計45億6036万余円となり、さらに支払額が1契約当たり100万円未満の契約2件を合わせた計11件に係る支払額計45億6172万余円が、文部科学省において布製マスク配布事業として締結した契約に係る支払額となる。

このように、厚生労働、文部科学両省において布製マスク配布事業として締結した契約に係る支払額は、厚生労働省で497億8684万余円、文部科学省で45億6172万余円となり、それぞれを合わせると543億4856万余円となっていた。

なお、前記のとおり、厚生労働、文部科学両省の布製マスク配布事業に係る予算額は両省合わせて1044億円となるが、2年度第1次補正予算が成立する前の2年4月初旬に文部科学省において当初予算から支出した契約が1件あるため、上記の支払額543億4856万余円からこの契約に係る支払額1億4481万余円を差し引くと542億0375万余円となり、厚生労働、文部科学両省の布製マスク配布事業に係る予算額1044億円に対する支払額の割合は51.9%となる。

イ 布製マスクの調達における緊急性

布製マスクの調達契約については、前記のとおり、厚生労働、文部科学両省とも、需給がひっ迫するマスクを大量かつ早期に確保するためなどとして、いずれも緊急であることを理由に随意契約としていた。

そこで、両省が緊急であることの前提としたマスクの需給のひっ迫の状況について、一般社団法人日本衛生材料工業連合会(以下「日衛連」という。)の統計資料により確認したところ、次のような状況となっていた。

両省が布製マスクの調達契約を締結した2年3月から6月にかけて、新型コロナウイルス感染症の全国的な拡大に伴い、マスクの需要は急激に拡大している状況であった。一方、日衛連の会員であるマスク生産業者の家庭用マスクの生産量の推移についてみると、生産量は2年第1四半期(1月から3月まで)で17億1861万余枚、同年第2四半期(4月から6月まで)で16億9344万余枚とほぼ横ばいであり、需要が急激に拡大していた中で生産量が増えておらず、供給が需要に追いついていない状況となっていた。また、在庫量についても、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の元年12月末の在庫が8億6251万余枚あったのに対して、2年3月末の在庫は9620万余枚と急減している状況となっていた(図表7参照)。

このように、上記の統計資料による家庭用マスクの生産量及び在庫量の状況からすると、当時マスクの需給がひっ迫していた状況が見受けられた。

図表7 家庭用マスクの生産量と在庫量の推移(単位:千枚)

期間 平成31年 31年/令和元年 2年
第1四半期
(1月から3月まで)
第2四半期
(4月から6月まで)
第3四半期
(7月から9月まで)
第4四半期
(10月から12月まで)
第1四半期
(1月から3月まで)
第2四半期
(4月から6月まで)
第3四半期
(7月から9月まで)
生産量 1,252,269 506,284 983,459 1,851,925 1,718,614 1,693,440 2,200,550
時点 平成31年
3月末
令和元年
6月末
9月末 12月末 2年
3月末
6月末 9月末
在庫量 682,895 743,156 748,386 862,512 96,202 209,380 457,274
  • 注(1) 一般社団法人日本衛生材料工業連合会の統計資料を基に本院が作成した。
  • 注(2) 生産量は、国内生産のほか、海外生産及び輸入を含む。
  • 注(3) 在庫量は、該当期間の期末日現在の在庫数である。

ウ 布製マスクの調達枚数の算定方法

配布に必要な布製マスクの調達枚数の算定方法についてみたところ、次のとおりであった。

(ア) 全戸向け布製マスク

全戸向け布製マスクについては、前記のとおり、2年4月中旬から5月末までの間に国内の全世帯に対して1住所当たり2枚を配布することとしており、厚生労働省は、1住所には1世帯が居住していることや個人経営の店舗等にも居住者がいることと想定し、総務省統計局の統計資料に基づき、国内の約5850万世帯のほか、約558万事業所にも布製マスクを配布することとして、これら世帯と事業所数を合計した6408万箇所に2を乗じて、配布に必要な枚数を計1億2816万枚と算定していた。

そして、算定した必要配布枚数に予備分を加えて、布製マスクの調達枚数を約1億3000万枚としていた。

(イ) 介護施設等向け布製マスク

介護施設等向け布製マスクについては、前記のとおり、3月対策及び4月対策に基づき布製マスクを配布することとしており、3月対策に必要な布製マスクについて、厚生労働省は、同省の介護施設等を所管する部署から各介護施設等の利用者数及び職員数を基に算定した必要枚数の報告を受けるなどして、1人につき1枚配布することとして、布製マスクの調達枚数を高齢者施設・事業所1567万枚、障害福祉サービス等施設・事業所387万枚、保育施設等176万枚、計2130万枚と算定していた。

また、4月対策に必要な布製マスクについて、厚生労働省は、3月対策と同様に同省の介護施設等を所管する部署から必要枚数の報告を受けるなどして、1人につき1月当たり1枚を配布することにして、1月当たりの必要枚数を高齢者施設・事業所1414万枚、障害福祉サービス等施設・事業所412万枚、保育施設等184万枚、計2010万枚と算定し、2年4月から9月までの6か月分を配布すると予定していたことから、これに6を乗じて布製マスクの調達枚数を計1億2060万枚としていた。

(ウ) 妊婦向け布製マスク

妊婦向け布製マスクについては、前記のとおり、1人につき1月当たり2枚を6か月間配布することにしており、厚生労働省は、年間の妊婦数を、新生児の出生数と同数である(1人の妊婦が新生児1人を出産する)と想定して、元年度の出生数約87万人に2を乗じて、1月当たりの必要枚数を174万枚と算定し、その6か月分として6を乗じて、布製マスクの調達枚数を計1044万枚と算定していた。

(エ) 学校向け布製マスク

学校向け布製マスクについては、前記のとおり、1人につき1回当たり1枚を2年4月中と5月以降の2回配布することにしており、文部科学省は、同省が実施した元年度の学校基本調査で把握した学校の児童生徒数1300万余人、教職員数116万余人の計1417万余人に2を乗じた2834万余枚に予備分を加えて約3000万枚を布製マスクの調達枚数として算定していた。

以上のように、厚生労働省は、配布に必要な布製マスクについて、全戸向け布製マスク1億3000万枚、3月対策に必要な介護施設等向け布製マスク2130万枚、4月対策に必要な布製マスク1億2060万枚及び妊婦向け布製マスク1044万枚を合わせて計2億8234万枚と算定していたが、介護施設等向け配布事業の対象として移動支援を提供する施設・事業所等を新たに追加したことなどから、算定した2億8234万枚より507万余枚多い2億8741万余枚を調達していた。

また、文部科学省は、配布に必要な学校向け布製マスクについて、約3000万枚と算定していたが、配布を受けた学校から、配布枚数の不足を理由とした追加の配布希望があったことなどから、算定した約3000万枚より70万余枚多い3070万余枚を調達していた。

エ 布製マスクの調達契約に係る契約相手方の選定の経緯等

布製マスクの調達契約に係る契約相手方の選定までの過程についてみたところ、経済産業、厚生労働両省において、次のとおり、2年2月頃から調達候補先の募集を幅広く行うなどしていた。

(ア) 経済産業省の呼びかけを契機とした契約相手方の選定

前記のとおり、厚生労働省の事務分掌上、マスク等衛生用品の生産、流通等に関する業務は、同省医政局経済課が所掌することになるが、2年1月下旬からマスク不足が深刻化しており、同省のみによる対応が困難であったことから、経済産業省等の各省庁が連携して政府としてマスクの確保に取り組むことになった。

そして、経済産業省は、2月対策に基づくマスク等の迅速かつ円滑な供給体制確保の一環として、メーカーに対して布製マスクの生産を要請し、国内で販売させるためひもに、2年2月頃から、布製マスクの生地となるガーゼ、耳にかけるゴム紐等の原料を調達可能な商社、縫製工場を多数有するメーカー等の、布製マスクを生産できる可能性のある企業に呼びかけを行っていた。この呼びかけに応じた興和等3社に対して、ガーゼ及びゴム紐の供給可能量や確保可能な縫製工場の数を確認したり、布製マスクのサンプルを提出させたりするなどしていた。なお、2年3月に厚生労働省にマスク班が設置されたため、これらの業務はそれ以降、マスク班が行っていた。

その後、3月対策に基づき、厚生労働省が、2年3月末までに約2000万枚の介護施設等向け布製マスクを調達することになり、同省は、これまでに興和等3社から提出されていた布製マスクのサンプルや布製マスクの供給可能枚数、納期、価格等を確認するなどして、興和等3社から布製マスクの調達が可能であると判断し、興和等3社を契約相手方として選定していた。

厚生労働、文部科学両省は、その後の布製マスク配布事業として必要な布製マスクの調達契約についても、興和等3社の供給可能枚数を踏まえ、興和等3社を契約相手方として選定していた。

(イ) 経済産業局の募集を契機とした契約相手方の選定

経済産業省は、アの企業への呼びかけのほか、2年2月下旬から、各経済産業局を通じて布製マスクの生産及び販売候補先を募集していた。そして、前記のとおり厚生労働省が介護施設等向け布製マスクを調達することとなったため、厚生労働省は、応募のあった企業から、布製マスクのサンプルや納入計画を提出させるなどして布製マスクの供給可能枚数、納期、価格等を確認していた。

なお、厚生労働省は、株式会社ユースビオ(以下「ユースビオ」という。)及び株式会社シマトレーディング(以下「シマトレーディング」という。)について、両社から提出された提携先の現地法人からの資料を含む布製マスクの仕様、製造体制等が記載された資料等により、ベトナム社会主義共和国に所在する縫製会社に布製マスクの縫製を請け負わせることで1月当たり約2000万枚の布製マスクを供給することが可能であること、布製マスクの製造体制や納期が妥当なものであること及び両社の布製マスクの供給可能枚数が、興和等3社を除いた他の企業と比べて多いことを確認したことから、両社を契約相手方として選定していた。

また、2年3月16日に厚生労働省とユースビオ及びシマトレーディングとで締結した調達契約によると、両社で布製マスクを納品することとしていた。そして、その理由について確認したところ、厚生労働省は、当初、シマトレーディング1社との契約を予定していたが、ユースビオから、布製マスクの調達に当たり、原料の調達及び縫製をいずれも外国で実施する予定であるが、業務の実態として、原料調達等業務をユースビオが、縫製が完了した製品の輸入業務をシマトレーディングが、それぞれ担当していることから、契約を2社に分けて行いたい旨の申出があったため、当該申出を検討の上、受諾していたことによるものであった。

(ウ) 業界団体を通じて実施した募集を契機とした契約相手方の選定

厚生労働省は、2年2月頃に、日衛連を通じて会員各社を対象に布製マスク等の調達候補先を募集しており、横井定株式会社に布製マスクの在庫が相当数あったことから同社を契約相手方として選定していた。

また、厚生労働省は、2年4月にも日本繊維産業連盟を通じて布製マスクの調達候補先を募集しており、布製マスクの供給可能枚数、納期、価格等を確認するなどして、株式会社RELIEF等11社(注6)を契約相手方として選定していた。

(注6)
株式会社RELIEF等11社株式会社RELIEF、TSOInternational株式会社、株式会社エクスプラス、株式会社ブルマーレ、株式会社ワークス、株式会社東洋繊維、野村貿易株式会社、株式会社グラックジャパン、シタテル株式会社、株式会社三愛、帝人フロンティア株式会社

このような過程を経て、厚生労働、文部科学両省は契約の相手方を選定し、布製マスクの調達契約計32件(厚生労働省27件、文部科学省5件)を締結していた。

なお、これら32件の契約の契約相手方は純計で17社であり、このうちほとんどの会社は布製マスクを初めて取り扱う者であった。

オ 契約書の記載事項

前記のとおり、国の会計法令等によれば、契約担当官等は、原則として、契約の目的、契約金額等に関する事項のほか、瑕疵担保責任に関する事項(2年3月31日以前に締結する契約)又は契約不適合責任に関する事項(2年4月1日以降に締結する契約)を記載した契約書を作成しなければならないとされている。

そこで、前記の厚生労働、文部科学両省が締結した布製マスクの調達契約計32件について、契約書への瑕疵担保責任に関する事項又は契約不適合責任に関する事項の記載状況について確認したところ、厚生労働省が締結した27件の契約のうち26件及び文部科学省が締結した5件の契約のうち4件については、これらの事項が契約書に記載されており、納入業者に対して瑕疵担保責任等を追及できるものとなっていた。

一方、厚生労働省が2年3月17日に興和と締結した布製マスクの調達契約に係る契約書においては、納入後の布製マスクについて隠れた瑕疵を発見した場合であっても興和に対して瑕疵担保責任を追及しない旨記載されていた。

同様に、文部科学省が2年4月3日に興和と締結した布製マスクの調達契約に係る契約書においては、納入後の布製マスクについて契約の内容に適合しないものであっても興和に対して責任を追及しない旨記載されていた。

そこで、厚生労働、文部科学両省及び興和にその理由を確認したところ、前記契約の締結に当たり、興和から両省に対して、布製マスクの質より量が求められる中、十分な体制を整えることができないまま生産を開始せざるを得ない状況であり、布製マスクの生産地である中華人民共和国での移動の規制や国際輸送手段の激減等の様々なリスクを踏まえると、どのような事態が発生するか見込めなかったことから、前記のような契約内容を希望する旨申出があったとのことであった。

そして、厚生労働、文部科学両省は、当時、興和から短期間に大量の布製マスクを調達することを予定しており、瑕疵担保責任に関する事項又は契約不適合責任に関する事項を付した契約を締結した場合には、短期間での大量調達は困難であることが見込まれ、迅速に布製マスクを調達することを優先するとして、当該申出を了解していた。

なお、厚生労働、文部科学両省によれば、隠れた瑕疵又は契約の内容に適合しないものとしては、引っ張ると本体のガーゼが破れたり、耳にかけるゴム紐がちぎれたりするなどの場合を想定しているが、興和が納入した布製マスクで発生した不良品の中には、これらに該当するものはなく、上記の不良品については興和との協議により全て興和の負担において良品との交換等の対応が執られたとのことであり、隠れた瑕疵に係る瑕疵担保責任等の問題はこれまで生じていないとしている。

(2)布製マスクの調達等の費用

ア 予定価格の作成状況

厚生労働、文部科学両省の予定価格の作成状況についてみたところ、次のとおりであった。

厚生労働省は、布製マスク配布事業として締結した支払額が1契約当たり100万円以上となる契約39件のうち、佐川急便との保管等業務に係る契約以外の38件について、契約相手方からの見積書の額と同額をそのまま予定価格にしていた。

また、文部科学省は、布製マスク配布事業として締結した支払額が1契約当たり100万円以上となる契約9件のうち、布製マスクの調達契約5件及び検品等業務に係る契約1件について、契約相手方からの見積書の額と同額をそのまま予定価格としており、残りの3件については、見積書と積算資料等を比較するなどした上で、安価であった見積書の額を予定価格としていた。

そして、いずれの契約についても、その契約額は予定価格の額と同額となっていた。

契約相手方から提出された見積書の額と同額を予定価格としているものについて、厚生労働、文部科学両省は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界的なマスク不足の中で早急にマスクを調達し配布する必要があったこと、各契約と同規模の大量の調達実績が過去になかったこと、当時十分な生産体制等を構築できる事業者が限られていたことなどから、市場価格を調査するなどして予定価格を算定することが困難であったとしている。

イ 布製マスクの調達における緊急性

厚生労働省は、布製マスクの調達契約について、運送費を別途計上している2件の契約を除き、布製マスク1枚当たりの価格に調達枚数を乗じた額を契約額とする総価契約を締結しており、文部科学省は布製マスク1枚当たりの単価契約を締結している。

厚生労働、文部科学両省が2年3月から6月までの間に締結した布製マスクの調達契約32件のマスク1枚当たりの平均単価を確認したところ、図表8のとおり139.14円となっていた。また、契約時期別に算定すると、3月契約分141.24円、4月契約分142.10円、5月契約分137.62円、6月契約分136.81円となっており、2年4月から6月にかけてマスク1枚当たりの平均単価は逓減していた。その理由の一つとしては、一時高騰していたマスクの輸入のための航空運賃等がこの時期に落ち着き始めたことが考えられる。

図表8 契約時期別の布製マスク1枚当たりの平均単価

契約時期 契約件数(件) 支払額の計(円)
A
調達枚数の計(枚)
B
1枚当たりの平均単価(円/枚)
A/B
令和2年3月 7 3,135,552,321 22,199,362 141.24
4月 8 14,303,355,000 100,650,000 142.10
5月 9 18,447,726,000 134,040,000 137.62
6月 8 8,376,749,777 61,224,848 136.81
32 44,263,383,098 318,114,210 139.14
  • (注) 本表の32件の契約のうち運送費を別途計上しているものが2件あり、「支払額の計」欄には当該運送費を含めている。

ウ 布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用

厚生労働、文部科学両省が締結した布製マスクの調達契約以外の契約により布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用を確認したところ、図表9のとおり、40.36円となっており、事業別にみると、全戸向け配布事業で59.82円、介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業で23.17円、学校向け配布事業で8.96円となっていた。

各事業の業務内容についてみると、前記のとおり、全戸向け配布事業では、封入等業務を請け負った業者が布製マスク2枚とお知らせ文が記載された紙冊子を封入した上で、配布等業務を請け負った業者が各世帯に直接配布することとしていたのに対し、介護施設等向け、妊婦向け、学校向け各配布事業では、封入等業務は実施せず、配布等業務を請け負った業者が、原則としてそれぞれ介護施設等、市町村及び学校に配布し、これらの施設等の職員が利用者、職員、妊婦、児童生徒及び教職員に配布することとしていた。

また、各事業の1住所当たりの布製マスクの配布枚数についてみると、全戸向け配布事業では1住所当たり2枚の布製マスクを配布していたのに対し、介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業では1回につき1住所当たり平均で63.91枚、学校向け配布事業では1回につき1住所当たり平均で388.10枚の布製マスクをそれぞれ配布していた。

このように、全戸向け配布事業と介護施設等向け、妊婦向け、学校向け各配布事業とでは業務内容や1住所当たりの配布先への布製マスクの配布枚数が大きく異なるため、全戸向け配布事業に係る布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用が、それ以外の配布事業に係る布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用より高額になったものと思料される。

また、介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業と学校向け配布事業との布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用の開差については、前記の配布先への1住所当たりの布製マスクの配布枚数の差異のほか、配布先等からの問合せに応じるために開設したコールセンター窓口に係る開設期間及び回線数が、介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業より学校向け配布事業の方が短かったり、少なかったりしていることによると思料される。

図表9 布製マスク1枚当たりの配布等に要した費用

所管 事業名 支払額(円)
A
令和3年3月末時点の配布枚数(枚)
B
1枚当たりの配布等に要した費用(円/枚)
A/B
厚生労働省 全戸向け配布事業 7,304,070,342 122,080,833 59.82
介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業 1,902,225,916 82,078,710 23.17
小計 9,206,296,258 204,159,543 45.09
文部科学省 学校向け配布事業 275,477,521 30,725,753 8.96
9,481,773,779 234,885,296 40.36
  • 注(1) 本表は、厚生労働、文部科学両省が締結した布製マスクの調達契約以外の契約のうち、1契約当たりの支払額が100万円未満のもの及び厚生労働省の保管等業務が含まれるものを除いて作成している。
  • 注(2) 厚生労働省の契約において、全戸向け配布事業並びに介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業のいずれの業務も含まれている契約について、支払額は、各事業の配布枚数で案分して計上している。
  • 注(3) 介護施設等向け配布事業及び妊婦向け配布事業の「令和3年3月末時点の配布枚数」欄には、法務省所管の矯正施設等に管理換をするなどして配布した枚数を含めている。

(3)布製マスクの品質等をめぐる問題

ア 布製マスクの調達契約に係る仕様

(ア) 布製マスクの調達契約に係る仕様の作成状況

布製マスクの調達契約に係る仕様の作成状況についてみたところ、厚生労働省は、調達する布製マスクの仕様書を作成しておらず、納入業者に対して、口頭等で次のことを示しているのみであった。

① 再利用可能な布製マスクで、ガーゼ等の素材でできたものであること
② 顔との隙間を塞ぎ、くしゃみや咳による飛沫を防ぐ構造のものであること
③ ホルムアルデヒドが検出基準である75ppm以下のものであること

そして、厚生労働省は、布製マスクの仕様について、契約前に納入業者に提出させていた布製マスクのサンプルを確認したり、納入業者に品質等をメール等で確認したりするのみで、布製マスクの大きさ、形状及び満たすべき品質基準を書類上明確にしていなかった。厚生労働省が布製マスクの調達契約において仕様書を作成していなかった理由及び品質基準を明確にしていなかった理由について同省に確認したところ、同省は、布製マスクの大きさ、形状等を仕様書により指定することは考えておらず、各社から提出された布製マスクのサンプルを確認することで判断することとし、品質基準については、布製マスクを早急に調達する必要があったことから、最低限、健康に支障が生じ得る基準のみを遵守することを求めたとしている。

また、文部科学省は仕様書を作成していたが、品質基準としてはホルムアルデヒドが検出基準以下であることしか示していなかった。文部科学省が仕様書に品質基準を明確に定めなかった理由について、同省に確認したところ、同省は、当時の世界的なマスク不足の状況から、直ちに納入可能なマスクを調達する必要があり、そのためには、厚生労働省と同じ枠組みで調達するしか方法がなく、布製マスクの仕様についても、厚生労働省が決定したものを文部科学省においても採用したとしている。

一方、マスクの品質基準については、当時、公的規格である日本産業規格(JIS)には定められていなかったが、マスク生産業者の業界団体である全国マスク工業会が制定した「衛生マスクの安全・衛生自主基準」(2010年2月制定)があり、品質基準として、前記③のホルムアルデヒドの検出基準に係る基準のほかに、著しい変色及び異臭がないこと、抗菌加工や防臭、消臭、ウイルス対策処理等の特殊な加工を施した場合は、マスク生産業者の責任において安全性評価を行うことなどを定めている。また、同基準では、製造管理基準(衛生管理)として、使用する原材料を取り扱う設備・器具類は事前・事後において、衛生的な状態を保つこと、着衣は常に清潔にし、マスク、落髪防止のため帽子又は頭巾を着用することなどを定めている。

しかし、厚生労働、文部科学両省は、上記のような業界団体の安全・衛生自主基準が存在するにもかかわらず、納品される布製マスクの多くが既製品ではなく原料から新たに製作されるものであり、また、前記のとおり、ほとんどの納入業者が布製マスクを初めて取り扱うという状況の中で、ホルムアルデヒドの検出基準以外については、仕様の要件とはせず、特段、納入業者に当該安全・衛生自主基準に定められた品質基準や製造管理基準を考慮して布製マスクを製作するよう指示していなかった。

したがって、厚生労働、文部科学両省は、布製マスクについては、人が口、鼻等の体内への開口部に密着して身につけるものであり、衛生上、その品質基準を明確に定めて調達する必要があることから、緊急時であっても、全国マスク工業会が制定している基準を準用するなどして品質基準を明確に定めた仕様書を作成する必要があると認められる。

(イ) 各社の布製マスクの大きさ、形状等

前記のとおり、厚生労働省は、布製マスクの調達に当たり、仕様書を作成しておらず、布製マスクの大きさ、形状等を指定していない。そこで、実際に納入された布製マスクの大きさ、形状等について確認したところ、図表10のとおり、納入業者全17社のうち12社が納入した布製マスクについては、大きさが縦9.5cm×横13.5cm、形状が平型となっており、このほか6社が納入した布製マスクは、それぞれ表面サイズの異なる立体型のものとなっていた。なお、これらの立体型の布製マスクは、いずれも介護施設等向け又は妊婦向け布製マスクとして納品されたものであった。

図表10 納入された布製マスクの大きさ、形状等の状況

大きさ 形状 マスク本体の生地の素材 納入業者名 納入業者数
9.5cm 13.5cm 平型 綿 興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーション、横井定、TSOInternational、ワークス、東洋繊維、野村貿易、グラックジャパン、シタテル、三愛、帝人フロンティア 12
15.0cm 25.0cm 立体型 ポリエステル、綿 ユースビオ 6
14.5cm 24.5cm ポリエステル、綿 シマトレーディング、ユースビオ
14.0cm 20.0cm ポリエステル RELIEF
13.7cm 24.5cm 綿 エクスプラス
8.0cm 16.5cm 綿 ブルマーレ
7.5cm 17.0cm 綿 横井定
  • 注(1) 「大きさ」欄はマスク本体の表面サイズを測定したものであり、立体型の布製マスクには使用時に上下に開くことで縦が大きくなるものがある。
  • 注(2) 「納入業者名」欄に記載の各社の商号中、株式会社という文字は省略している。

さらに、9.5cm×13.5cmの大きさの決定経緯について確認したところ、次のとおりであった。

経済産業省は、3(1)エ(ア)において同省の呼びかけに応じた興和等3社のうち布製マスクの販売実績があるのは興和のみであったことから、興和等3社に対して、興和が製品として取り扱っている布製マスクを参考にサンプルを作成して、提出するよう依頼していた。興和が製品として取り扱っている大人用の布製マスクは9.5cm×13.5cmの大きさのもののみであり、興和は当該大きさのサンプルを提出していた。また、他の2社は、興和の製品を参考にするなどして当該大きさのサンプルを提出していた。

そして、厚生労働省は、3月対策に必要な介護施設等向け布製マスクの調達に当たり、経済産業省が興和等3社から提出させた布製マスクのサンプルの大きさを確認するなどして、9.5cm×13.5cmの大きさが妥当であると判断し、この大きさの布製マスクを調達することにしていた。

その後、厚生労働省は、他の布製マスクの調達においても、引き続き同様の大きさの布製マスクを調達することにしていた。

本院において、日衛連の会員であるマスク生産業者が取り扱っている製品の大きさを確認したところ、立体型の布製マスクには大ぶりのものも見受けられたが、平型の布製マスクは、主に家庭用として販売されており、大人用として、その多くは9.5cm×13.5cmの大きさとなっていた。

イ 不良品問題

(ア) 当初厚生労働省等が不良品問題として把握した事態

厚生労働省の報道発表資料によれば、2年4月17日時点で、妊婦向け配布事業では、市町村に配布した約50万枚のうち、汚れが付着するなどした布製マスクが1,901枚あったとされる一方、介護施設等向け配布事業では問題のある布製マスクはほとんど発生していないとされていた。そして、文部科学省の報道発表資料によれば、同年4月20日時点で、学校向け配布事業として虫が混入した布製マスクが1件あったことが報告されていた。

また、厚生労働省は、全戸向け配布事業について、封入等業務を請け負っている大日本印刷から、封入等業務を行った布製マスク約200万枚のうち、糸くず、髪の毛及び虫が混入したり、カビが発生したりするなどしたものが約200件あったとの報告を受けていた。

(イ) 不良品問題への対応

(ア)のような事態を把握したため、厚生労働、文部科学両省は、前記のとおり、布製マスクの配布作業を一時中断した。

そして、厚生労働省は、配布の一時中断とともに、市町村に配布した妊婦向け布製マスクについて、問題のあった布製マスクの状況を市町村から報告させた上で当該布製マスクを回収し、その後、問題のなかった布製マスクについても、原則として市町村から回収した上で、回収した布製マスクと同数の布製マスクを、後日、配布していた。

一方、納入業者である興和及び伊藤忠商事は、納品した布製マスクに不良品が含まれていたことをそれぞれ独自に公表し、納品先となる配布等業務を請け負っていた日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)や大日本印刷から未配布となっていた布製マスクをそれぞれ自らの負担により回収した上で、後日、回収した枚数と同数の布製マスクを納品していた。

また、厚生労働、文部科学両省は、前記のような対応を進めるとともに、新たに業者と検品等業務に係る契約を締結し、発注した布製マスクの品質を確認することにした。

(ウ) 不良品と疑われるとして厚生労働省に報告された妊婦向け布製マスクの状況

不良品問題に関して、厚生労働省では、2年4月16日から5月15日にかけて市町村に対して問題があった妊婦向け布製マスクの状況を報告させていた。

その報告の内容についてみると、図表11のとおり、1回目として配布した49万余枚のうち、12.5%に当たる6万余枚が髪の毛の混入や汚れの付着等の不良品と疑われるものとして635市町村から報告されていた。

図表11 市町村から不良品と疑われるものとして厚生労働省に報告された妊婦向け布製マスクの状況

報告された態様 報告のあった市町村数 枚数(枚)
髪の毛の混入 256 4,297
汚れの付着 441 12,908
異臭 11 116
部分的、または全体的に変色 282 24,311
虫の混入 27 38
糸のほつれ 90 2,574
その他 328 17,611
635 61,855
  • (注) 「報告のあった市町村数」欄の計は市町村の純計である。

なお、厚生労働省は、市町村から不良品と疑われるものとして報告された態様について、全体的に変色とされているものや汚れの付着とされているものの中には、生地本来の色味であったり、マスクの原料由来のものであったりするものなどが含まれているとし、市町村から報告のあったものの全てが不良品とされるものではないとしている。

ウ 布製マスクの調達契約に係る国の検収の状況

前記のとおり、国の会計法令等によれば、検査職員は、物件の買入れその他の契約について、契約書、仕様書及び設計書その他の関係書類に基づき、給付の内容及び数量について検収を行わなければならないとされている。

しかし、検収に当たり給付の内容である布製マスクの品質等を確認しようとしても、前記のとおり、厚生労働省は、仕様書を作成しておらず、布製マスクの大きさ、形状、品質基準等が書類上明確となっていなかったことから、検査職員が仕様書により品質等を十分に確認できない状況となっていた。文部科学省は、仕様書を作成していたものの、品質基準等が書類上明確となっていなかったことから、検査職員が仕様書により品質等を十分に確認できない状況となっていたことは厚生労働省と同様であった。そして、厚生労働、文部科学両省が締結した布製マスク調達契約の検収に当たり、検査職員は、不良品問題が発生するまで、布製マスクの封入等業務や配布等業務を請け負っていた大日本印刷又は日本郵便から布製マスクの納入数量を報告させることをもって検収を行ったとし、布製マスクの品質等については抽出による確認すら行っていなかった。

エ 不良品問題の発生を契機とした検品等業務の実施

契約に沿った布製マスクを納品することは納入業者の責務であり、そのために必要な納入業者における検品に係る費用は契約金額に含まれていると考えられるが、厚生労働、文部科学両省は、不良品問題が発生したことを契機として、次のとおり、検品等業務を実施していた。

(ア) 厚生労働省

厚生労働省は、布製マスクの品質を高め、より安心して国民に布製マスクを使用してもらえるよう厳しい基準の検品を取り入れるとともに、なるべく早くマスクを配布するための緊急的な対応として、株式会社宮岡(以下「宮岡」という。)との間で検品等業務に係る契約を2年4月23日に締結した。そして、厚生労働省は、宮岡との検品等業務により、発注した布製マスクのうち、①宮岡との契約日以前に同省に納品され、かつ未配布となっているもの、②宮岡との契約日以降に製作されたもの及び③市町村から回収した妊婦向けのものを対象に、納入業者による検品とは別に、目視や計量等により、その品質を確認することにしていた。その後、同年5月下旬以降に新たに納品される布製マスクについては、本来は納入業者において検品を経た後にマスクが納品されるべきであるなどとして、改めて納入業者と協議するなどして、厚生労働省と宮岡との間の契約により実施していた検品等業務を、納入業者と宮岡との間の契約により実施するようにしていた。そして、厚生労働省は、興和及び伊藤忠商事との契約を除く同年5月下旬以降に納品される布製マスクの調達契約について、変更契約等により、宮岡による検品等業務の費用を当初契約額に上乗せするなどして、その費用を負担していた。

(イ) 文部科学省

文部科学省は、布製マスクの品質を高め、児童生徒等の不安を解消するよう厳しい基準の検品を取り入れるためとして、納入業者と協議するなどした上で、宮岡との間で検品等業務に係る契約を2年4月24日に締結し、①宮岡との契約日以前に同省に納品され、かつ未配布となっているもの及び②宛先不明で返送されたものなどを対象に、納入業者による検品とは別に、目視や計量等により布製マスクの品質を確認することにしていた。そして、宮岡との契約日以降に納品される布製マスクについては、納入業者と宮岡又は宮岡と同等の検品ができる事業者との間の契約により検品等業務を実施するようにしていた。

検品等業務の実施が上記のような経過をたどった理由について、厚生労働省は、上記のような厳しい基準の検品に係る費用もマスク単価の構成費といえるものであるから、本来は、検品業者に対して国が支払うのではなく、当該厳しい基準の検品に係る費用も含めて納入業者との契約の中で納入業者が負担すべきものであったが、なるべく早くマスクを配布する必要があったため、まずは国と宮岡との間で検品等業務に係る契約を締結したとしている。また、文部科学省は、厳しい基準の検品に係る費用もマスク単価の構成費として品質基準を上げるために必要なものであり、納入業者と協議した結果、国と宮岡との間で検品等業務に係る契約を締結したとしている。

しかし、当初予定していなかった検品等業務のような事後的に不良品対応を行う必要が極力生ずることのないよう、布製マスクの調達契約の締結に当たり、契約条項の中で、不良品が発生した場合には納入業者の責任と費用負担により補修、交換その他必要な措置を講ずるなど、不良品が発生した場合の措置について定めるなどすべきであった。

したがって、厚生労働、文部科学両省は、今後、緊急時において大量のマスク等の衛生用品を調達する場合、不良品が発生した場合の措置について、契約書等に適切に定める必要があると認められる。

なお、前記のとおり、買入れに係る単価が20万円に満たない物件の買入れに係る契約については、給付の完了後相当の期間内に当該物件につき破損、変質、性能の低下その他の事故が生じたときは取替え、補修その他必要な措置を講ずる旨の特約があり、当該給付の内容が担保されると認められる場合は、数量以外のものの検収を省略することができることから、契約条項の中で、前記のような納入業者の責任と費用負担による補修、交換その他必要な措置について定めるなどしていれば、これにより給付の内容が担保されるため、検収の効率的な実施にも寄与するものとなる。

オ 検品等業務により判明した良品とならなかった布製マスクの発生状況

厚生労働、文部科学両省は、宮岡との契約により実施した検品等業務について、宮岡と協議するなどして、図表12のとおり、除外する必要のある布製マスクの具体例を示すなどして、納入業者から納品される布製マスクの検品基準を定めていた。

宮岡は、当該基準に基づいて布製マスクを確認し、良品とそれ以外のものに判別しており、その結果、厚生労働省との契約において確認した布製マスク7105万余枚のうち1089万余枚(15.3%)、文部科学省との契約において確認した布製マスク83万余枚のうち18万余枚(22.2%)が良品とはならなかった。

図表12 厚生労働、文部科学両省が定めた検品基準

判定基準 具体例
衛生面で懸念の生ずるもの又は機能面に影響のあるものとして、除外する必要のある布製マスク 生成り色のうち、極端に色の濃いもの
異物が混入したもの(マスクと同じ色の糸を除く。)
外見上汚れが明らかなもの
基準の重さより2g以上重いもの
外装袋に穴が開いているもの
封が開いているもの
ゴムが外れているもの
健康上問題がないことから良品とするもの 生成り色のうち、生地本来の色が残ったもの
マスクと同じ色の糸や生地の切れ端が含まれているもの
生地のしわや折れなどが若干ずれているもの
縫い目の長さが若干違うもの
  • (注) 本表は、厚生労働、文部科学両省から徴した検品基準の一部を補足して作成したものである。

そして、厚生労働省は、良品とならなかった同省分1089万余枚のうち、未配布であったため納入業者を特定でき、かつ納入業者が、契約条項に基づく協議により補修、交換等に同意した920万余枚については、納入業者の負担において補修、交換等を行わせていた。

一方、残りの168万余枚については、納入業者との契約条項に基づく協議を行ったものの、前記のとおり、厚生労働省は仕様書を作成しておらず、布製マスクの品質基準等を明確にしていなかったことなどから、納入業者から補修、交換等の同意を得られなかったり、既に配布された後に、市町村から回収したマスクであって、納入業者を識別するような管理をしていなかったことから、当該マスクの納入業者を特定することが困難であったりしたため、納入業者の負担において補修、交換等を行わせることができなかった。

また、文部科学省は、良品とならなかった同省分18万余枚のうち、17万余枚については納入業者に良品と交換させていた一方で、残りの8,223枚については配布したものの宛先不明で返送されるなどしたマスクであり、当該マスクの納入業者を特定することが困難であったため、納入業者の負担において補修、交換等を行わせることができなかった。

なお、納入業者の負担において補修、交換等を行わせることができなかった布製マスクについて、厚生労働省は保管等業務を請け負わせた業者の倉庫に、文部科学省は庁舎内に、それぞれ保管している。

カ 不良品問題により生じた追加費用等の発生状況

布製マスク配布事業に要した費用のうち、不良品問題により生じた追加費用等の発生状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 検品等業務に係る費用

厚生労働、文部科学両省は、前記のとおり、納入業者による検品とは別に、布製マスクの品質を確認するとして、宮岡と検品等業務に係る契約を締結し、これらに係る費用7億0075万余円(厚生労働省6億9197万余円、文部科学省877万余円)を宮岡に支払っていた。

そして、厚生労働省は、興和及び伊藤忠商事との契約を除く2年5月下旬以降に納品される布製マスクの調達契約について、変更契約等により、宮岡による検品等業務の費用を当初契約額に上乗せするなどして、その費用を負担していた。本院においてこれらの費用を、納入業者が宮岡に検品等業務に係る費用として支払った額から算定したところ10億6994万余円となっていた。

(イ) 厚生労働省が契約した大日本印刷との封入等業務に係る追加費用

厚生労働省は、全戸向け配布事業の実施に当たり、封入等業務に係る契約を大日本印刷と締結している。

大日本印刷は、当初、全戸向け布製マスクが2年5月末までに配布されることになっていたことから、布製マスクが同年5月中に全て納品されることを想定して作業期間を設定していた。

その後、不良品問題により、全戸向け布製マスクの納品が遅れ、想定していた作業期間が大幅に延びたことから人件費等が増加するなどして、厚生労働省は、3億3173万余円の追加費用を支払っていた。

(ウ) 文部科学省が契約した日本郵便との配布等業務に係る追加費用

文部科学省は、学校向け配布事業の実施に当たり、配布等業務に係る契約を日本郵便と締結している。

日本郵便は、当初、おおむね2年5月中の配布完了を想定して体制を構築していた。

その後、不良品問題により配布期間が延長されたことから人件費等が増加し、文部科学省は、4526万余円の追加費用を支払っていた。

(4)布製マスクの配布状況等

ア 全戸向け布製マスクの配布状況等

(ア) 全戸向け布製マスクの配布状況

厚生労働省は、全戸向け布製マスクについて、図表13のとおり、2年4月17日から6月20日までの間に、6091万世帯等に対して、1億2183万余枚を配布している。

しかし、当初の予定どおり2年4月から配布できたのは東京都のみであり、他の道府県への配布開始日は、不良品問題の発生により布製マスクの配布を一時中断するなどしたことから同年5月12日以降となっており、最も遅い青森県等34県での配布開始日は同年5月23日となっていた。また、全戸向け布製マスクについては、当初の予定では同年5月末までに配布を完了することとしていたが、不良品問題により配布が遅れることとなり、本院が確認した同年5月31日時点の配布枚数は約4069万枚となっていて、上記の1億2183万余枚に対する割合は33.4%となっていた。

なお、厚生労働省は、布製マスクが配布されなかった世帯からの申出や、コールセンター窓口に寄せられた布製マスクの不備等を理由とした交換の申出に対して24万余枚の布製マスクを追加で配布している。

図表13 全戸向け布製マスクの配布状況

都道府県 配布期間 配布箇所数 配布枚数(枚)   都道府県 配布期間 配布箇所数 配布枚数(枚)
北海道 5月16日~6月19日 2,651,199 5,302,398   滋賀県 5月23日~6月19日 623,486 1,246,972
青森県 5月23日~6月19日 563,572 1,127,144   京都府 5月13日~6月19日 1,319,560 2,639,120
岩手県 5月23日~6月19日 556,358 1,112,716   大阪府 5月12日~6月19日 4,646,505 9,293,010
宮城県 5月23日~6月20日 1,086,063 2,172,126   兵庫県 5月13日~6月19日 2,609,530 5,219,060
秋田県 5月23日~6月19日 437,310 874,620   奈良県 5月23日~6月19日 593,560 1,187,120
山形県 5月23日~6月19日 444,561 889,122   和歌山県 5月23日~6月19日 451,603 903,206
福島県 5月23日~6月19日 826,575 1,653,150   鳥取県 5月23日~6月19日 255,769 511,538
茨城県 5月14日~6月19日 1,262,996 2,525,992   島根県 5月23日~6月20日 284,361 568,722
栃木県 5月23日~6月19日 874,095 1,748,190   岡山県 5月23日~6月20日 874,791 1,749,582
群馬県 5月23日~6月19日 891,212 1,782,424   広島県 5月23日~6月19日 1,353,455 2,706,910
埼玉県 5月14日~6月19日 3,346,609 6,693,218   山口県 5月23日~6月18日 660,183 1,320,366
千葉県 5月14日~6月19日 2,929,652 5,859,304   徳島県 5月23日~6月19日 339,475 678,950
東京都 4月17日~5月30日 7,909,486 15,818,972   香川県 5月23日~6月19日 470,885 941,770
神奈川県 5月14日~6月19日 4,487,238 8,974,476   愛媛県 5月23日~6月19日 650,671 1,301,342
新潟県 5月23日~6月19日 941,204 1,882,408   高知県 5月23日~6月19日 360,387 720,774
富山県 5月23日~6月18日 447,220 894,440   福岡県 5月12日~6月15日 2,564,510 5,129,020
石川県 5月16日~6月18日 520,312 1,040,624   佐賀県 5月23日~6月11日 342,801 685,602
福井県 5月23日~6月18日 323,573 647,146   長崎県 5月23日~6月17日 599,629 1,199,258
山梨県 5月23日~6月19日 386,537 773,074   熊本県 5月23日~6月17日 780,388 1,560,776
長野県 5月23日~6月19日 921,994 1,843,988   大分県 5月23日~6月17日 555,387 1,110,774
岐阜県 5月14日~6月19日 844,410 1,688,820   宮崎県 5月23日~6月15日 509,639 1,019,278
静岡県 5月23日~6月19日 1,624,099 3,248,198   鹿児島県 5月23日~6月18日 810,814 1,621,628
愛知県 5月14日~6月19日 3,475,210 6,950,420   沖縄県 5月23日~6月19日 685,205 1,370,410
三重県 5月23日~6月19日 823,752 1,647,504   60,917,831 121,835,662
  • (注) 「配布箇所数」欄は、布製マスクを配布した世帯及び事業所の数を示している。
(イ) タウンプラスを利用した配布における配布先の選定

全戸向け布製マスクの配布については、前記のとおり、タウンプラスを利用しており、指定した地域の配達可能な全ての箇所が配布対象となることから、空き家等の布製マスクの配布の必要性がない箇所にも布製マスクが配布される可能性がある。

そこで、タウンプラスによる配布に際して、この点をどのように考慮しているかについて、布製マスクの配布等業務を請け負った日本郵便に確認したところ、次のとおりとなっていた。

日本郵便は、可能な限り人が居住していない事業所には布製マスクを配布しないこととするという厚生労働省からの要望を踏まえて検討した結果、図表14のとおり、配布を行わない事業所(以下「配布除外箇所」という。)を設定し、各郵便局に指示することで、当初想定していた約558万事業所のうち約49万事業所を配布除外箇所としていた。また、日本郵便は、日頃から配達の際に空き家と確認できた箇所を日本郵便のシステムに登録しており、登録された箇所には郵便物等を配布しないこととしていた。

図表14 タウンプラスによる布製マスクの配布除外箇所

分類 主な配布除外箇所の例
① 公共団体等 中央省庁、都道府県庁、区役所、市役所、町村役場、出張所、警察署、消防署、税務署、裁判所(簡易裁判所を含む。)、自衛隊、海上保安庁
② 学校等 小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校、自動車教習所
③ 公共機関等 鉄道駅、バスターミナル、空港、博物館、体育館、屋内外競技場、プール、図書館、劇場
④ 医療機関等 総合病院(個人医院は除く。)
⑤ 大型商業施設 百貨店、ショッピングモール、駅附属施設内の商業施設
⑥ 金融機関 銀行、信用金庫、信用組合、証券会社
⑦ その他 新聞社(本社、支社)、放送局(テレビ局、ラジオ局)、郵便局

これらのことから、タウンプラスによる配布については、可能な限り人が居住していない箇所に布製マスクを配布しないという厚生労働省の要望に一定程度沿った取扱いがなされていたと認められる。

イ 介護施設等向け布製マスクの配布状況等

(ア) 介護施設等向け布製マスクの配布状況

厚生労働省は、介護施設等向け布製マスクについて、図表15のとおり、介護施設等の利用者及び職員に対して、3月対策に基づき1人につき1枚を2年3月26日から5月31日までの間に2013万余枚を配布し、その後、4月対策に基づき配布することとした6か月分のうち2か月分として、1人につき2枚を同年6月30日から9月30日までの間に4049万余枚を配布している(配布枚数の計6062万余枚)。

図表15 介護施設等向け布製マスクの配布状況

都道府県 1回目
(配布期間
3/26~5/31)
2回目
(配布期間
6/30~9/30)
配布枚数
計(枚)
  都道府県 1回目
(配布期間
3/26~5/31)
2回目
(配布期間
6/30~9/30)
配布枚数
計(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
  注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
北海道 25,124 998,495 25,713 1,993,310 2,991,805   滋賀県 5,623 216,485 5,796 427,200 643,685
青森県 6,598 248,560 6,713 488,590 737,150   京都府 10,098 441,060 10,311 875,025 1,316,085
岩手県 5,868 226,655 5,948 452,695 679,350   大阪府 42,461 1,551,080 44,481 3,113,200 4,664,280
宮城県 9,032 347,530 9,180 684,345 1,031,875   兵庫県 23,372 937,505 23,885 1,850,365 2,787,870
秋田県 4,626 197,625 4,701 390,320 587,945   奈良県 6,720 242,740 6,835 476,915 719,655
山形県 4,705 193,845 4,891 387,375 581,220   和歌山県 5,784 201,960 5,823 393,735 595,695
福島県 7,613 302,840 7,744 599,820 902,660   注(2)
鳥取県
1 104,200 2,883 224,040 328,240
茨城県 10,425 370,235 10,842 791,710 1,161,945
栃木県 6,292 234,135 6,455 463,530 697,665   島根県 3,926 154,675 4,110 309,325 464,000
群馬県 8,259 320,615 8,413 630,025 950,640   岡山県 8,931 352,550 9,109 694,855 1,047,405
埼玉県 21,169 869,135 23,909 1,825,220 2,694,355   広島県 11,670 480,780 13,182 1,028,660 1,509,440
千葉県 21,050 836,100 21,445 1,646,600 2,482,700   山口県 6,310 251,955 6,803 516,840 768,795
東京都 43,202 1,758,790 44,104 3,480,220 5,239,010   徳島県 4,299 159,470 4,335 320,230 479,700
神奈川県 30,744 1,324,455 32,146 2,655,570 3,980,025   香川県 4,235 164,690 5,114 362,265 526,955
新潟県 8,603 397,880 8,696 786,970 1,184,850   愛媛県 6,901 278,240 6,973 546,370 824,610
富山県 4,556 183,555 4,750 365,505 549,060   高知県 3,328 133,810 3,841 293,525 427,335
石川県 4,471 178,630 4,563 351,515 530,145   福岡県 22,404 863,925 23,578 1,745,880 2,609,805
福井県 3,593 138,790 3,640 272,845 411,635   佐賀県 4,185 155,595 4,307 308,965 464,560
山梨県 3,881 130,555 3,923 253,350 383,905   長崎県 6,637 247,380 8,341 563,760 811,140
長野県 9,088 369,180 9,556 749,550 1,118,730   熊本県 9,094 343,655 9,437 693,085 1,036,740
岐阜県 8,210 321,760 8,327 633,080 954,840   大分県 5,692 219,585 6,974 491,815 711,400
静岡県 13,206 549,395 13,407 1,087,585 1,636,980   宮崎県 5,674 198,960 5,853 390,215 589,175
愛知県 26,496 1,079,297 26,895 2,085,380 3,164,677   鹿児島県 8,373 310,895 10,518 706,945 1,017,840
三重県 7,811 301,310 7,998 597,975 899,285   沖縄県 7,718 243,090 7,863 484,355 727,445
  508,058 20,133,652 534,311 40,490,655 60,624,307
  • 注(1) 「配布箇所数」欄は、布製マスクを配布した介護施設等の数を示している。
  • 注(2) 鳥取県は1回目の配布の際、県を通じて介護施設等に配布することとしたことから「配布箇所数」欄は1となっている。
(イ) 一律配布の中止

厚生労働省は、当初の予定では4月対策に基づき配布することとしていた6か月分の布製マスクのうち4か月分の約8000万枚の布製マスクについて、2年7月頃に実施した関係団体等へのヒアリングの際に市場でのマスクの流通がおおむね回復してきているとの回答があったことや、経済産業省の統計データで確認した小売店舗でのマスクの販売枚数の推計値を踏まえて、マスクの需給状況が好転してきたと判断して、同年7月末に一律配布を取りやめて、同年8月5日以降は配布を希望する介護施設等にのみ配布するよう方針を変更した。

そして、厚生労働省は、一律配布を中止した2年8月から3年3月までに、配布希望の申出があった介護施設等に対して1049万余枚の布製マスクを配布しており、一律配布した6062万余枚と合わせて介護施設等向け配布事業として計7112万余枚の布製マスクを配布している。

なお、2年8月5日以降、配布を希望する介護施設等が少なかったことなどから、配布予定であった布製マスクのうち相当数が、配布等業務を請け負った日本郵便の各拠点等に留め置かれることになった。

ウ 妊婦向け布製マスクの配布状況等

(ア) 妊婦向け布製マスクの配布状況

厚生労働省は、妊婦向け布製マスクについて、図表16のとおり、各市町村に対して2年4月14日から4月30日までの間に1回目の布製マスクの配布として49万余枚を配布している。

(イ) 配布方法の変更

厚生労働省は、1回目の配布に当たっては、国が想定した妊婦数に応じた枚数の布製マスクを市町村に配布していたが、2回目から4回目までの布製マスクの配布に当たっては、市町村から布製マスクの必要枚数を報告させた上で、市町村が希望する布製マスクの枚数を原則配布するように変更していた。

そして、厚生労働省は、配布方法を変更した2回目から4回目までの配布において、必要枚数の報告があった市町村に対して590万余枚の布製マスクを配布しており、1回目に配布した49万余枚と合わせて妊婦向け配布事業として計639万余枚の布製マスクを配布している。

なお、2年7月22日から開始した4回目の配布において、配布を希望する妊婦が少なかったことなどから、配布予定だった布製マスクのうち相当数が、配布等業務を請け負った日本郵便の各拠点等に留め置かれることになった。

図表16 妊婦向け布製マスクの配布状況

都道府県 1回目
(配布期間
4/14~4/30)
2回目
(配布期間
5/19~5/31)
3回目
(配布期間
6/29~7/8)
4回目
(配布期間
7/22~8/21)
配布枚数
計(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
注(1)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
北海道 173 17,880 175 47,080 142 43,740 143 47,630 156,330
青森県 40 4,140 39 15,410 33 11,240 33 23,490 54,280
岩手県 33 3,970 33 14,980 23 13,870 29 20,200 53,020
宮城県 35 8,500 35 37,860 31 35,080 33 51,410 132,850
秋田県 25 2,660 25 6,360 20 5,950 24 9,970 24,940
山形県注(2) 0 0 35 14,340 31 9,710 31 17,360 41,410
福島県 59 6,740 57 21,140 51 21,940 52 64,310 114,130
茨城県 23 5,550 43 42,470 36 31,660 39 50,570 130,250
栃木県 25 7,300 25 25,180 22 18,940 23 53,350 104,770
群馬県 26 6,920 35 29,480 33 29,610 32 45,150 111,160
埼玉県 43 26,720 63 82,630 59 92,450 55 182,660 384,460
千葉県 46 25,860 54 107,990 46 94,560 45 113,970 342,380
東京都 62 61,540 59 202,270 41 163,930 53 322,370 750,110
神奈川県 33 37,670 33 93,740 24 55,740 28 99,390 286,540
新潟県 30 7,550 30 27,380 26 33,750 26 38,640 107,320
富山県 15 3,600 15 14,730 14 10,850 15 15,770 44,950
石川県 19 4,420 18 15,510 18 23,130 17 56,680 99,740
福井県 17 3,080 17 12,120 16 11,640 13 11,780 38,620
山梨県 27 3,030 26 8,380 20 9,500 20 14,910 35,820
長野県 77 7,690 73 36,350 63 39,220 57 27,650 110,910
岐阜県 42 7,310 42 23,140 36 22,910 36 23,090 76,450
静岡県 35 13,520 34 54,920 34 43,380 31 57,730 169,550
愛知県 54 33,480 53 135,030 44 161,860 44 133,210 463,580
三重県 29 6,580 28 20,090 26 17,830 27 65,540 110,040
滋賀県 19 6,060 19 21,250 13 19,820 18 44,890 92,020
京都府 26 9,770 25 46,010 24 54,020 20 30,600 140,400
大阪府 43 35,850 43 129,400 40 131,950 37 219,290 516,490
兵庫県 41 21,590 41 62,920 37 52,940 36 148,070 285,520
奈良県 39 4,900 33 14,560 30 12,950 32 36,760 69,170
和歌山県 30 3,290 29 11,500 24 15,460 24 17,020 47,270
鳥取県 19 2,260 19 6,640 17 6,930 18 12,120 27,950
島根県 19 2,550 18 7,180 12 4,990 16 14,370 29,090
岡山県 27 7,810 27 21,220 18 16,570 23 25,320 70,920
広島県 23 11,460 23 61,080 22 46,930 20 72,600 192,070
山口県 19 4,730 19 17,030 18 12,110 17 22,710 56,580
徳島県 24 2,640 24 9,990 23 7,780 20 14,390 34,800
香川県 17 3,710 17 14,120 13 17,230 15 29,210 64,270
愛媛県 20 4,790 20 13,870 16 9,280 16 27,390 55,330
高知県 34 2,510 32 6,520 20 4,550 21 16,810 30,390
福岡県 60 22,140 59 64,980 52 61,920 55 84,490 233,530
佐賀県 20 3,360 19 14,330 15 12,150 13 8,190 38,030
長崎県 21 5,360 21 24,150 18 25,890 20 22,790 78,190
熊本県 45 7,690 45 23,850 39 19,160 40 38,780 89,480
大分県 18 4,340 18 10,450 17 12,040 17 45,090 71,920
宮崎県 26 4,410 26 15,590 18 12,370 23 29,460 61,830
鹿児島県 43 6,820 43 22,100 31 20,880 38 24,220 74,020
沖縄県 41 8,320 37 32,320 28 21,220 30 31,220 93,080
1,642 492,070 1,704 1,739,640 1,434 1,601,630 1,475 2,562,620 6,395,960
  • 注(1) 「配布箇所数」欄は、布製マスクを配布した都道府県管内の市町村数を示している。
  • 注(2) 山形県は、予定していた1回目の配布前に不良品問題が発生し、配布が中断されたことから、「配布箇所数」及び「配布枚数」欄が0となっている。
  • 注(3) 4回目の配布枚数については、当初は4か月分に相当する約696万枚を予定していたが、配布を希望する妊婦が少なかったことなどから、4回目の配布枚数は2,562,620枚となっている。

エ 学校向け布製マスクの配布状況

文部科学省は、学校向け布製マスクについて、図表17のとおり、各学校の児童生徒及び教職員を対象として1人当たり2枚の布製マスクを2回に分け、1回目として2年4月11日から6月15日までの間に計1542万余枚、2回目として同年6月17日から9月9日までの間に計1529万余枚、合計3072万余枚を配布している。

なお、文部科学省は当初1回目の配布を2年4月中、2回目の配布を同年5月以降に行うこととしていたが、それぞれの配布について、配布枚数に不足があると報告があった学校に対して追加配布等を行ったことから、1回目の配布が完了したのは同年6月15日、2回目の配布が完了したのは同年9月9日となっていた。

また、文部科学省は、日本郵便の配布等業務による布製マスクの配布とは別に、追加の配布を希望する学校に対して、同省から個別に439枚の布製マスクを配布している。

図表17 学校向け布製マスクの配布状況

都道府県 1回目
(配布期間
4/11~6/15)
2回目
(配布期間
6/17~9/9)
配布枚数
計(枚)
  都道府県 1回目
(配布期間
4/11~6/15)
2回目
(配布期間
6/17~9/9)
配布枚数
計(枚)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
  配布
箇所数
配布枚数
(枚)
配布
箇所数
配布枚数
(枚)
北海道 2,260 625,040 2,004 615,550 1,240,590   滋賀県 445 201,116 419 194,565 395,681
青森県 575 150,875 546 145,785 296,660   京都府 878 312,820 744 311,815 624,635
岩手県 595 152,580 568 147,520 300,100   大阪府 2,297 1,047,223 2,033 1,048,175 2,095,398
宮城県 886 287,360 748 282,600 569,960   兵庫県 1,581 669,048 1,485 667,455 1,336,503
秋田県 423 109,185 387 105,165 214,350   奈良県 441 169,937 397 170,160 340,097
山形県 454 134,190 443 130,490 264,680   和歌山県 475 119,071 443 119,800 238,871
福島県 870 232,685 808 229,925 462,610   鳥取県 278 75,320 230 74,625 149,945
茨城県 951 369,370 897 376,570 745,940   島根県 428 91,495 373 92,450 183,945
栃木県 711 246,405 626 240,205 486,610   岡山県 745 246,455 688 245,500 491,955
群馬県 660 244,010 612 238,735 482,745   広島県 1,106 363,055 943 356,250 719,305
埼玉県 1,829 844,574 1,595 833,250 1,677,824   山口県 580 169,265 530 166,920 336,185
千葉県 1,630 725,630 1,472 725,395 1,451,025   徳島県 346 89,425 314 90,345 179,770
東京都 3,340 1,453,660 3,018 1,460,790 2,914,450   香川県 351 129,800 292 123,975 253,775
神奈川県 2,012 1,029,350 1,756 1,021,060 2,050,410   愛媛県 545 168,980 514 171,405 340,385
新潟県 909 270,495 856 266,785 537,280   高知県 386 86,620 377 88,185 174,805
富山県 364 125,665 339 126,130 251,795   福岡県 1,558 633,695 1,401 643,085 1,276,780
石川県 401 143,560 368 141,665 285,225   佐賀県 355 113,540 340 115,000 228,540
福井県 343 102,680 326 100,700 203,380   長崎県 658 177,395 621 172,740 350,135
山梨県 338 103,670 320 101,345 205,015   熊本県 715 230,140 645 233,715 463,855
長野県 758 263,635 731 263,725 527,360   大分県 525 149,240 473 149,375 298,615
岐阜県 738 280,185 685 264,545 544,730   宮崎県 503 146,690 457 145,940 292,630
静岡県 1,137 456,560 1,024 449,335 905,895   鹿児島県 893 230,010 850 229,355 459,365
愛知県 1,897 978,020 1,752 939,985 1,918,005   沖縄県 672 248,085 561 249,910 497,995
三重県 688 229,525 627 229,980 459,505   41,530 15,427,334 37,638 15,297,980 30,725,314
  • 注(1) 「配布箇所数」欄は、布製マスクを配布した学校の数を示している。
  • 注(2) 宛先不明で返送された布製マスクを別の学校に配布したことなどから、文部科学省が調達した学校向け布製マスク3070万余枚よりも配布枚数の計が2万余枚多くなっている。

オ 一律配布の中止等に伴う在庫の発生等

(ア) 一律配布の中止等に伴う在庫の発生

介護施設等向け及び妊婦向け布製マスクについては、前記のとおり、一律配布の中止や配布方法の変更に伴い、配布予定だった布製マスクのうち相当数が、配布等業務を請け負った日本郵便の各拠点等に留め置かれることになった。このため、厚生労働省は、2年7月末に日本郵便との配布等業務に係る契約を変更し、契約内容に布製マスクの保管等に係る業務を追加して、同年8月以降、配布予定であった布製マスクを保管させることにした。その後、厚生労働省は、布製マスクの保管費用を低減させるために、同年10月に一般競争入札により佐川急便と保管等業務に係る契約を締結し、同年11月以降、日本郵便の倉庫から佐川急便の倉庫に、順次布製マスクを移送しており、介護施設等向け及び妊婦向け布製マスクとしての配布のほか、法務省所管の矯正施設等に456万余枚を管理換をするなどしていたものの、3年3月末現在で7866万余枚を在庫として保管していた。

また、全戸向け布製マスクについても、前記のように、配布除外箇所を設定したり、空き家と確認できた箇所には配布しないこととしていたりしていたため、一部の布製マスクが日本郵便の各拠点等に留め置かれていた。厚生労働省は、これらの布製マスクについても、上記の佐川急便との保管等業務に係る契約締結後、日本郵便の各拠点等から佐川急便の倉庫に順次移送しており、3年3月末現在で405万余枚を在庫として保管していた。

このように、厚生労働省は、3年3月末現在で、介護施設等向け及び妊婦向け布製マスク7866万余枚、全戸向け布製マスク405万余枚、計8272万余枚(厚生労働省が調達した布製マスク2億8741万余枚に占める割合28.7%)の布製マスクを在庫として保管しており、前記の布製マスク1枚当たりの平均単価139.14円により在庫として保管している布製マスク8272万余枚の調達に要した費用を試算すると115億0978万余円となっていた。

(イ) 在庫の保管等に要する費用

一律配布の中止等の後、前記のとおり、厚生労働省は、日本郵便との配布等業務に係る契約を変更し、契約内容に布製マスクの保管等に係る業務を追加して、2年8月以降、配布予定であった布製マスク等を保管することにし、同年8月から3年1月までの間の保管等業務に係る費用として、計5億2265万余円を支払っていた。

そして、厚生労働省は、布製マスクの保管費用を低減させるために、前記のとおり、2年10月に一般競争入札により佐川急便と保管等業務に係る契約を締結し、同年11月以降、日本郵便の倉庫から佐川急便の倉庫に、順次布製マスクを移送して保管しており、同年11月から3年3月までの間の保管に係る費用として、計7831万余円を支払っていた。

これらにより、厚生労働省が、2年8月から3年3月までの間の保管等業務に係る費用として日本郵便及び佐川急便に対して支払った額は、図表18のとおり、6億0096万余円となっていた。

図表18 布製マスクの保管等業務に係る費用(令和2年8月~3年3月)

保管年月 日本郵便への支払額(円) 佐川急便への支払額(円) 計(円)
令和2年8月 93,601,303 93,601,303
9月 95,417,236 95,417,236
10月 93,133,960 93,133,960
11月 92,939,248 5,496,832 98,436,080
12月 87,507,112 7,601,807 95,108,919
3年1月 60,057,791 26,377,564 86,435,355
2月 19,327,247 19,327,247
3月 19,508,374 19,508,374
522,656,650 78,311,824 600,968,474
  • (注) 日本郵便の倉庫から佐川急便の倉庫への移送に係る費用は日本郵便への支払額に含まれている。

また、文部科学省においては、前記のとおり、布製マスクを庁舎内に保管しているため、保管費用の支払は生じていない。

このように、布製マスク配布事業で調達した布製マスクについて、一律配布の中止等に伴い、当初予期しなかった大量の布製マスクの在庫が発生したことから、厚生労働省は、業者に請け負わせて布製マスクを保管しており、その保管等に多額の費用を要する状態が継続している。

なお、布製マスク配布事業で調達した布製マスクは、国の物品として物品管理法等に基づき管理されている。そして、前記のとおり、物品管理法等によれば、供用及び処分をすることができない物品については、不用の決定の上、売払いなどすることができるとされており、また、物品の無償貸付及び譲与等に関する法律等によれば、生活必需品、医薬品、衛生材料及びその他の救じゅつ品を災害による被害者その他の者で応急救助を要するものに対して譲渡するときなどは、物品を国以外のものに譲与することができるとされている。

したがって、厚生労働省は、今後、布製マスクの品質保持のための保管状況に留意しながら、在庫の活用方法を幅広く検討するなどして、その有効活用を図って保管等に要する費用の節減に努めつつ、在庫の解消が見込めない場合には、売払い、譲与等も考慮に入れた対応を検討することが必要である。

4 本院の所見

布製マスク配布事業は、新型コロナウイルス感染症の発生に伴いマスクの需給がひっ迫する中、政府の方針として、マスクを早期に確保し配布対象である世帯、施設等に速やかに配布するために実施されたものであり、厚生労働、文部科学両省によれば、その実施に当たっては緊急に対処することが求められたとしている。

そして、今後とも、大規模な感染症が発生するなどした際には、布製マスク配布事業と同様に、マスク等の衛生用品を大量かつ緊急に調達する必要が生ずることも考えられる。

したがって、厚生労働、文部科学両省は、本院の検査で明らかになった状況を踏まえて、今後、事業を実施する場合には、次の点に留意するとともに、厚生労働省は布製マスクの在庫について、次のとおり検討することが重要である。

ア マスク等の衛生用品の今後の調達について

(ア) 厚生労働、文部科学両省は、マスク等の衛生用品については、衛生上、その品質基準を明確に定めて調達する必要があることから、緊急時であっても、公的規格、業界団体の安全・衛生自主基準を準用するなどして品質基準等を明確に定めた仕様書を作成すること

(イ) 厚生労働、文部科学両省は、当初予定していなかった検品等業務のような事後的に不良品対応を行う必要が極力生ずることのないよう、緊急時において大量のマスク等の衛生用品を調達する場合には、契約の締結に当たり、契約条項の中で、不良品が発生した場合には納入業者の責任と費用負担により補修、交換その他必要な措置を講ずるなど、不良品が発生した場合の措置について定めるなどすること

イ 布製マスクの在庫について、厚生労働省は、その保管等に多額の費用を要する状態が継続していることを踏まえて、布製マスクの品質保持のための保管状況に留意しながら、在庫の活用方法を幅広く検討するなどして、その有効活用を図って保管等に要する費用の節減に努めつつ、在庫の解消が見込めない場合には、売払い、譲与等も考慮に入れた対応を検討すること

本院としては、今後とも厚生労働、文部科学両省におけるマスク等の衛生用品の調達や厚生労働省における布製マスクの在庫の状況について、引き続き注視していくこととする。